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庚申講という古い信仰と猿の不思議な縁

   「三尸の図。向かって右から上尸、中尸、下尸」(Wikipediaより)

 古くから日本人は十干十二支の組み合わせに対応させて、それぞれの日に名をつけてきた。そのひとつが、60日に一度めぐってくる「庚申(かのえさる)」の日である。

 この日に眠ると、この「三尸(さんし)」(上記の図、参照)が人間の体から抜け出し天帝にその宿主の罪悪を告げ、その人間の寿命を縮めると言い伝えられてきたからである。
 ここにいう「三尸(さんし)」とは、中国の民間信仰である道教が伝えてきたとされる人間の体内にいると考えられていた虫のことだ。

 で、日本では、この日に「庚申(こうしん)講」と称して村人が集まり、祭祀を行ない、夜を徹しておしゃべりにふける習俗が生まれた。
 それは平安時代に貴族の間で始まり、民間では江戸時代に以降に、地域ごとに庚申講という名の集まりをつくり、会場を決めて集団で「庚申待」をする風習がひろまった。

 ところで、庚申信仰の祭神は猿田彦、青面金剛、帝釈天などさまざまである。
 なかで青面金剛の掛け軸には「見ざる、聞かざる、言わざる」の三猿像が描かれる。
 また、帝釈天といえば「フーテンの寅さん」で有名な柴又の帝釈天のご開帳は庚申の日に行なわれる。

 ここでも、日本人と猿とは、妙に不思議な縁で結ばれてきたといえそうである。

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