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禍話リライト:あみだくじ

とある小学生A君が、急性の虫垂炎に罹り、入院することになった。手術自体何の問題もなく、回復を待つだけとなったが、入院生活中にA君が不思議に思ったことがひとつあった。

入院棟の担当看護師さんは3人と思われたが、どうも4人いる。夜だけ来る看護師さんがいるようだった。そんなシフトがあるのか?小学生のA君には皆目見当もつかなかった。他の看護師さんに尋ねても、3人しかいないと言われた。大人の秘密かもしれない、と小学生のA君は納得することにした。

夜だけやってくる看護師さんはショートカットの快活な感じの人で、寝ているときにA君の病室に来てかなり大きい紙をガサガサと広げた。A君はだいたいその音で目が覚めた。紙にはあみだくじが描かれていて、看護師さんが元気いっぱいに「あみだくじ!!あみだくじ!!」と楽しそうに言った。楽しそうに言ってはいるが、目は笑っていない。そのあみだくじは、下までたどり着いても特に何もなかった。あみだくじを終えると、「はいありがとうございました〜」と撤収して行った。
毎夜行われる意味不明のあみだくじに最初こそ退屈な入院生活では楽しみな気持ちもあったが、明日退院することになった最後の夜には、「またあみだくじ来んのかな、正直面倒くさいな」と思っていた。
ところがその夜はA君の病室には来なかった。代わりに廊下を挟んで向かい側の4人部屋から「あみだくじ!!あみだくじ!!」と声が聞こえてきた。4人部屋のうち3人が、看護師さんと一緒になって「あみだくじ!!あみだくじ!!」と言っている。しかもあみだくじがどうやら当たったようで、例の看護師さんと3人の患者が「ワーッ」と盛り上がっていた。

翌日A君が退院するとき、あみだくじに当たった人は亡くなっていた。


※この話はツイキャス「禍話」より、「あみだくじ」という話を文章にしたものです。

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