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推薦漫画:昭和奇譚編

おすすめしたい漫画をたまにはまとめていこうと思いまして、ちらほらあるので、まずは昭和の大御所作品を少しご紹介してみます。敬称略

萩尾望都「半神」

ユージーとユーシーは、腰の辺りで身体が繋がった結合双生児である。妹のユーシーは知的障害があって話すこともできないが美しい容姿を持ち、周りからは天使のようだと可愛がられた。一方姉のユージーは高い知能を持って運動機能も問題がないものの、妹の身体に栄養のほとんどを吸われて醜く痩せ細り、髪もろくに生えない。ユージーにとって妹は決して離れることができない疫病神であり、自身のコンプレックスの象徴であった。やがて双子は13歳になり、成長した二人の身体は限界を迎えていた。医師より「このままでは二人とも長く生きていられないが、切り離す手術をすれば、君だけは助けることができる」と告げられる。

短編集の表題作にもなっている作品。生まれてからずっと、天使のような妹への称賛を離れられない隣で浴びせられ続け、それでも妹の面倒を見てきたユージーの、次第に痩せ衰え、かつてのユージーのような姿になっていく妹を見つめる複雑な感情は、是非とも読んでほしいです。

つげ義春「おばけ煙突」

東京のはずれの不思議な4本の煙突が舞台。見る位置によって煙突が4本が3本、3本が2本、1本に見える。中でも4番目に立てられた煙突はたたっているという噂がしきりで、それまでに掃除に上がった職人9人が転落死を遂げていた。

「ねじ式」「リアリズムの宿」などでお馴染みのつげ義春作品で、短編集に収録された1篇なのですが、じとじと降り続く雨と、仕事が無く貧困にあえぐ職人たちのやるせなさが相まって暗然とする情景がとても印象深い、特に好きな1篇です。

ジョージ秋山「銭ゲバ」

蒲郡風太郎は幼少の頃から左目に醜い傷が有った。父親は最低のろくでなし、母親は気だては良いが病弱、それゆえ家庭は極貧。心の支えとなっていたのは、母親と風太郎に優しく接する近所の青年であったが、治療費が払えない母は病死。自暴自棄になった風太郎は盗みに走り、それを咎めた青年を手にかけてしまう。それを機に、風太郎は生まれ故郷を飛び出し、成長して大企業の社長一家に取り入って、金銭の為なら殺人すら厭わない銭ゲバと化す。

人は簡単に死ぬし、人はしぶとい。
風太郎はことあるごとにお金が無くて母親が死んだと思い続け、お金があればなんでも思い通りになると言い放つ。さもしい姿に嫌悪すら感じる描写に引き込まれます。殺人までして何もかも手に入れたように思おうとするも、風太郎が下した結末は…。

業田良家「自虐の詩」

『週刊宝石』のショートコミック枠に掲載。シリーズ初期は、怒るとすぐにちゃぶ台をひっくり返したり、金をせびるばかりのイサオとそれに従う幸江といった構図のギャグが中心だったが、中期以降幸江の子供時代の回想が増えてくるとしだいにストーリー4コマとなっていき、幸江の小学生編・中学生編を経て最終回に突入していくドラマチックな展開。

4コマのギャグ漫画で、前半は不幸なユキエとヒモのイサオのやりとりでだいたいユキエがかわいそうな目に合ったりするけど、イサオのことが本当に好きで一緒にいるのがわかる。ちょっと中だるみするけどそこ乗り越えて読んでほしい!後半のたたみかけがすごくて、最後まで一気に持っていかれました。

手塚治虫「嚢」

予期せぬ雨に見舞われたある日、主人公の青年は“綾野リカ”と名乗る女性と出会う。雨宿りするために入った喫茶店で、話し込むうちに意気投合した2人は何度か会い次第に交際が深まり、とうとう結婚を決意した主人公は結婚の許可をもらうためにリカの家を訪ねる。応対した母親は「うちには“マリ”という娘はいるが、“リカ”などという娘はいない」と怪訝そうに答え、会わせてもらったマリは同一人物としか思えないほどリカにそっくりだったが、性格はまるで異なっていた。

「ふくろ」と読みます。ブラックジャックが好きだったらこの短編は是非読んでみてください。人体のふしぎ。手塚先生の作品は実際に起こりうる現象に寄り添う「もしこれがこうなっていたら?」っていうところのファンタジーがすごく面白いなと思います。これは特にラストが好き。

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こう並べてみるとけっこう暗めでした。大丈夫かな。
傾向として終わり方とか、後半の追い上げとかにウワーッ!となる作品が好きかもしれないです。まあ、だいたいそうか。昔の漫画ってちょっと変わった表現があったりするのも見どころです。(銭ゲバの「ズバーン」とか)絵も独特なので読みづらいかもしれませんがちょっとでも興味あったら是非。

今度は最近の漫画のこととかも書きますね。ではまた。

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