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「藤生-通津-由宇」のような駅名は想界にもあるはず

※めちゃくちゃややこしい話を書きます

「藤生-通津-由宇」とは

冒頭の画像を見て欲しい。これは山口県岩国市にある「通津(つづ)駅」の駅名標である。両隣の駅名にも注目して欲しい。
この区間は「藤生(Fujū) - 通津(Tsuzu) - 由宇(Yū)」と、母音が「u」1種類のみを含む駅名が3つ連続している。このように、含まれる母音の種類が1種類の駅名が3つ連続する場所は日本で唯一である。

想像地図世界にも似たような場所はあるか

ならば、想像地図世界にも似たような場所があるだろうか。現想対称性についてこれまで幾度となく議論を重ねてきたが、素直に解釈するなら想界にも似たような場所があると考えた方がよさそうである。

そう。想界にも「市岸(Ichigishi) - 引海(Hikimi) - 道木(Michiki)」と、母音が「i」1種類のみを含む駅名が3つ連続している。

市岸-引海-道木付近の地図
西南本線の市岸-引海-道木付近の地図

だが、話はそこまで単純ではない。想界は地球外の異世界であり、日本語が通じない世界である。想界の地名が日本語で表記されているのは、日本語版の地図では現地語である更紗語を日本語に訳しているからと解釈されている

「市岸-引海-道木」という3連続の駅名は、現地語である更紗語の駅名を日本語に意訳したものだ。母音が「i」1種類のみを含む駅名になるのは「日本語でのみ起こること」である。更紗語では「含まれる母音の種類が1種類の駅名が3つ連続」にならない。
この文章を執筆した時点では「市」および「引く」が未造語だが、「道」は swa , 「木」は kaxu で、「道木」は swakaxu なのだから、この時点で既に「含まれる母音の種類が1種類」を満たさないことが分かる。

ならば条件を満たす場所はどこか?

逆に考えてみよう。まず、前提条件として、現想対称性により、更紗語版において含まれる母音の種類が1種類の駅名が3つ連続する場所が城栄にも存在するものとする
そして、ありとあらゆる場所で、3つ並んだ駅名について、「母音の種類が1種類の駅名が3つ連続」になり得る場所を消去法で探すのである。

例えば、「雫井(しずくい)-村尾(むらお)-尾平(おひら)」はどうだろうか。この場合、「雫」と「村」はこの文章を執筆した時点で未造語だが、「尾」は we , 「井」は  i だから、「雫」と「村」がどんな語形であったとしても、この3連続駅名には少なくとも2種類以上の母音を含むから、条件を満たさない。そのようにして、条件を満たすことが可能な駅の組合せを探すわけである。

しかし、無軌道に探し出すのは無茶な話である。もう1つ前提を置くことにする。

日本語で「i」1種類のみを含む駅名が3つ連続している「市岸-引海-道木」は、城栄国内において斎賀県に所在する。そこで、更紗語で1種類のみを含む駅名が3つ連続している場所も斎賀県にあるという前提を置いてみるのである。ただし、もし消去法の結果によって斎賀県のどこを探してもそんな場所はない、という帰結にもし至るのであれば、この前提は外して他の県を探すことにしよう。

結論。斎賀県内で消去法の結果をくぐり抜け、可能性がある場所は、
新迫(あらさこ)-真金(まかな)-二倉(ふたくら)
ただこの1組だけが、消去法によって消えることなく残った。

この文章を執筆した時点では、「新」「迫」「金」「倉」の4単語は未造語である。造語済の「真」「二」は、それぞれ pi と myi なので、母音は i で揃っている。もし、未造語の「新」「迫」「金」「倉」の4単語に含まれる母音もいずれも i だけ、ということになるなら、確かにこの3連続駅名は、更紗語で「i」1種類のみを含む駅名が3つ連続しているということになる。

落ち着いて考えるべきこと1 被覆形

忘れてはいけない大事なことがある。
「真金」の日本語名の読みが「まかね」ではなく「まかな」になっていることである。

日本語の単語には、「金」や「船」のように、単独または語末で用いる場合と、複合語の語頭で用いる場合で語形が異なる単語がある。単独では「ふね(fune)」、語末でも「曳舟(ひきふね)」の如く「fune」、そして複合語の語頭では「船橋(ふなばし)」の如く「funa」となり、母音交替が起こる。「fune」のような形態は露出形、「funa」のような形態は被覆形と呼ばれる。「大船(おおふな)」の如く語末に被覆形が現れるのは、例外的状況である。
「金」も、「大金(おおがね)」「金山(かなやま)」のような例を考えてみると分かるが、露出形と被覆形がある。それでは「真金」の場合はというと、語末なのに被覆形という「大船的」な例外的状況になっている。

このような被覆形・露出形の語形変化は更紗語にも存在すると想定されている。ところが、日本語の単語と更紗語の単語で、露出形・被覆形の語形変化の有無が完全に1対1に対応するわけではない。例えば、日本語の「田」は、どんな場合でも「た」(もしくは「だ」)であり、連濁することはあっても、母音はaのまま変わらない。しかし、更紗語で「田」を意味する語は、単独または語末で用いる場合は nwo、複合語の語頭で用いる場合は nwa となる。更紗語で山田は kyinwo だが、田山は nwapi となる。

それゆえ、「『金』は日本語で被覆形と露出形の語形変化があるから、更紗語でも同じに違いない」と考えるのは早計である。
しかし、語末なのに被覆形という「大船的」な例外的状況を説明するには、更紗語においても「金」を意味する語には被覆形・露出形があると考えた方が矛盾が少ない。
もちろん、被覆形の場合に語末が -i となるような語形でなければならない。確かに更紗語には、被覆形が -i, 露出形が -u となるパターンがある。(例えば、「奥」は被覆形kemyi/露出形kemyuである)

※想界の地名は全てが意訳というわけではなく、音訳という可能性もありうるから、更紗語でマカナと発音する地名を転写する為にこの表記を使ったという可能性を考えても良いのかもしれないが、そうなるとmakanaは母音aを含むことになってしまい、前提が成り立たなくなるので、ここでは真金が音訳という可能性は棄却した。

落ち着いて考えるべきこと2 母音連続

現実の駅名の「藤生」は、fuji + u → fujiu → fujū のように母音が連続した箇所が融合した箇所がある。この母音融合によって、結果的に母音が u の1種類だけになっている。日本語では、 -i で終わる形態素の直後に、 u- で始まる形態素が接続する場合、その部分は融合して yū となる。

もし更紗語でも、同様にして母音融合によって i が生じるような箇所があるなら、駅名を構成する形態素に分解した場合は i 以外の母音が入っている可能性は確かに否定できない。
更紗語では、 -u で終わる形態素の直後に、 i- で始まる形態素が接続する場合、その部分は融合して wī となる。従って、「新」と「真」は、最終音節において u を含む可能性がある。ただし、「新」の最終音節に u が入っている場合、「迫」は語頭が i であるという条件を満たしている必要があるし、それは「真」と「金」の関係においても当てはまる。

結論1

確かに「新迫(あらさこ)-真金(まかな)-二倉(ふたくら)」は更紗語で「i」1種類のみを含む駅名が3つ連続している、という設定にできそうである。
そのためには、

  • 「迫」「金」「倉」を意味する単語は、すべて含まれる母音がいずれも i のみである。

  • 「新」を意味する単語は、含まれる母音が i のみであるか、もしくは、「迫の語頭がi」という条件が満たされている場合に限って、「語末の母音がuでそれ以外の母音がi」となることが許される。

  • 「金」は、露出形と被覆形の語形変化を持ち、被覆形は XiXi, 露出形は XiXuである(Xは任意の子音)。真金においては前者が現れている。

上記の条件を満たすように「新」「迫」「金」「倉」を造語すれば良いことになる。こんな感じで、また更紗語の単語は言オリ的に造語されることとなった。

現想対称性から、もう1つ考えておきたいこと

話が前後するが、「市岸-引海-道木」という3連続駅名は、日本語名においては、母音が「i」1種類のみを含む駅名になるという話だった。ならば、現想対称性から考えると、こういうことも成り立つことになる。

日本にあるどこかの3つ連続する駅名を更紗語に訳したとき、母音が1種類のみになるような組合せもある

さて、「市岸-引海-道木」と「新迫-真金-二倉」は、ともに同じ斎賀県にある。この性質にも現想対称性が適用可能ならば、次のことが成り立つ。

「藤生-通津-由宇」という組合せは、山口県にある。同じ山口県内のどこかに、更紗語に訳すと母音が1種類のみになるような組合せとなる3連続の駅名の組合せがある。ただし、「藤生-通津-由宇」それ自身は、更紗語に訳しても「含まれる母音の種類が1種類の駅名が3つ連続」とはならない。

同じようにして、消去法でその条件を満たせる可能性がある場所を探してみた。
例えば、「山口-上山口-宮野」はどうだろうか。この場合、更紗語で「山口」は kyiji である。「宮」はこの文章を執筆した時点で未造語だが、「野」は  hyatu だから、この3連続駅名には少なくとも3種類以上の母音を含むから、条件を満たさない。そのようにして、条件を満たすことが可能な駅の組合せを探すわけである。最終的に可能性が残ったのは、以下である。

  1. 岩倉-阿知須-岐波

  2. 阿知須-岐波-丸尾

  3. 岐波-丸尾-床波

  4. 丸尾-床波-常盤

※宇部線の岩倉-阿知須-岐波-丸尾-床波-常盤の5駅のどの部分を抜き出すか、という所に着地した。ただし、岩と磐は表記が異なるが同じ「岩」であることに注意。

ここで、先の議論を思い出しておこう。
想界の「新迫-真金-二倉」は、更紗語で「i」1種類のみを含む駅名が3つ連続しているということになるという話になった。だから「倉」を意味する語に含まれる母音はiだけになる。従って、もし「1」の場合、「含まれる母音がiだけの駅名が3つ連続」になる。
一方、「尾」は造語済であり、 we である。従って、もし「2」~「4」の場合は、「含まれる母音がeだけの駅名が3つ連続」になる。
ただし、「倉」がiを含み、「尾」がeを含むことは確定したわけだから、「岩倉-阿知須-岐波-丸尾-床波-常盤」の全ての母音が5連続で揃っていると言うことにはならない。また、現想対称性を考えても、「阿知須-岐波-丸尾-床波-常盤」の全ての母音が4連続で揃っていると言うことにもならないと考えられる。

なお、「阿知須」と「岐波」は万葉仮名的な地名だが、前者は「味鴨の砂地→味洲」、後者は「際」という意味に由来する地名と考えられているようなので、かりにこの駅名を更紗語に意訳するのであれば、その意味に遡って意訳すると言うことになるだろう。なお、「常盤」は、常+岩という意味であるため、「常+岩」として意訳する。

上記の推論から言えることは、以下であり、1~4のうちどれか1つが正しいということになる(2つ以上同時に正しい、ということにはならないので注意)。

  1. 「岩」「味」「洲」「際」を意味する語に含まれる母音は全て i だけである。

  2. 「味」「洲」「際」「丸」を意味する語に含まれる母音は全て e だけである。

  3. 「際」「丸」「床」「波」を意味する語に含まれる母音は全て e だけである。「常」「岩」を意味する語は、どちらか一方もしくは両方に e 以外の母音を含む。

  4. 「丸」「床」「波」「常」「岩」を意味する語に含まれる母音は全て e だけである。「際」を意味する語は、e 以外の母音を含む。

上記の条件を満たすように造語すれば良いことになった。

結論2

今回の議論では単語を完全に確定させることには繋がらなかったが、とりあえず「この単語は、こういう条件を満たしている必要がある」という条件を整理することができた。これと他の条件を突き合わせて造語を行っていこうかと思う。

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