更紗語の「行く」を意味する動詞に2形態がある設定にした方が良いか?

更紗語の「行く」(go)を意味する動詞は、/are/ [arə] である。これは以前の分析から得られた結果だ。

ところで日本語の「行く」には「いく」と「ゆく」の2形態がある。それでは、更紗語で「行く」を意味する動詞にも、同様にして /are/ 以外にももう1つの形態がある設定にした方が良いだろうか?

これについて考えてみたい。

想界の駅名から分析する

しつこいようだが、想像地図世界(想界)は地球上ではなく架空の星にある。しかし想界の地名は基本的に日本語で書かれている。架空の星なのに何故日本語が通じるのか、と思うかもしれないが、本当は想界では日本語は通じない。城栄国の公用語は更紗語である。2020年の時点で公開している地図は、「想界の言語は、地名のような固有名詞でさえも日本語に訳されている」というのが公式な解釈である。

ではもし更紗語に「行く」という動詞に2つの形態があって、それが地名の中で使い分けられているのであれば、想界の地名で「行」を含む地名は、「ゆく/ゆき」と「いく/いき」の2つに訳し分けが行われていると考えた方が自然である。

そう思って、想界の駅名で「行」の文字が含まれる駅名を検索してみたところ、「ぎょう/こう」のように音読みをしているものを除外すると、「吉行」「行岡」の2例が確認できた。それぞれ「よしゆき」「ゆきおか」という読み方であり、地名として現れる形態は「ゆく/ゆき」のみである。このため、訳し分けは存在せず、更紗語の「行く」という動詞に1つの形態しかない可能性が高まった。

それでも、「地名に現れるのは片方の形態のみ」という可能性も否定はできない。しかし、日本語に「ゆく」「いく」の2形態が存在するのは、「ゆく」のほうが古い形態と考えられていて、yuku の1番目の u が脱落して yuku(>yku)>iku となったと考えることができる。一方、更紗語の /are/ はそういう理屈を考えるのはちょっと苦しそうである。そして /are/ は変格活用する。(日本語は「来る」の方が変格活用している)

2形態があるのなら「来る」のほう、としておけば現想対称性に問題はなさそうだ。というわけでとりあえず「行く」を表す動詞には2形態はないということで今回の結論としておきたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?