グリーンウオッシュって何?

・グリーンウォッシュ~ことばの由来~ 
「グリーンウォッシュ」という言葉は、環境(グリーン)と「ホワイトウォッシュ」(白塗り、ごまかし)を掛け合わせた造語で、1986年に環境活動家ジェイ・ウェストヴァーヴァーがホテル業界の偽善的な環境キャンペーンを批判する際に生まれた言葉です。その後、企業が環境に優しく見せかけた活動や広告を行うことを批判する際、この言葉が広く使われるようになりました。

・グリーンウォッシュとは
グリーンウォッシュとは、エコをイメージさせる「green」と「whitewash」(ごまかす、うわべを繕う)を組み合わせた造語。企業が環境に配慮しているかのように装う、グリーンウォッシュを規制する流れがEUを中心に世界に広がっています。


今日、消費者にとって、製品(物品とサービスの両方)や企業の環境報告などに関する多くの説明を理解するのは容易ではありません。企業は偽りの環境目標を発表したり、環境への影響や利点について、信頼性の低い表現をマーケティングに用いたりするなどして、消費者に誤った印象を与える可能性があります。

環境省も2022年7月に発行した「グリーンボンドガイドライン」で、「実際は環境改善効果がないにもかかわらず、環境面で改善効果があると称すること」として、グリーンウォッシュ排除のために、国内で初めてグリーン性の指標の例を示しました。

・グリーンウォッシュの世界的な状況?
ここ数年、ヨーロッパやアメリカを中心に、この問題に対する規制や監視が厳しくなり、企業の環境への姿勢が厳密に検証されるようになりました。ヨーロッパやアメリカを中心とした各国で、罰則付きのガイドラインや法律が導入されました。こうした動きを先導、統合する形で、EUは2024年2月、根拠のない曖昧な環境表現を禁止する指令案を正式に採択し、グリーンウォッシングに対処し、消費者と環境を保護するための措置を講じており、日本企業もEU域内ではこれを遵守する必要があります。

とくに「カーボンニュートラル」などの環境訴求に関しては、正確な定義や証明が求められるようになり、曖昧な表現を安易に使うことへの警鐘が鳴らされました。規制強化の波はアジアにも訪れており、日本企業も影響を受けることになります。グリーンウォッシュを排除するための判断基準やKPIなどは継続的に見直される予定ですので注視していきたいですね。

企業がまずできることのひとつとして、EUのグリーンクレーム指令規制や、監視の進む国々の法律や基準を参考に理解することなどをおすすめします。

・「環境にやさしい」はNG
企業は、環境に優しいと主張する際、具体的な証拠を示すことが求められ、曖昧な表現は許されなくなっています。例えば、「環境にやさしい」などの主張が、実際には環境に悪影響を与えている場合や、根拠が不十分な「低炭素」などの表現も問題視されます。また、広告で自然を連想させるイメージを使うことで消費者を誤導する行為もグリーンウォッシュとされ、注意が必要です。

グリーンウォッシングをめぐる議論は年を追うごとに複雑になっています。
2021年に欧州連合(EU)が行った調査では、企業による環境主張の53.3%が誇張または虚偽であった(明確な根拠に欠ける)とされています。

中途半端にコミュニケーションを行えば批判の的になり、黙っていることもできない─企業がこれまでにない厳しい局面を迎える中、企業としては真剣な態度で環境問題に取り組んでいても、表示やコミュニケーションの仕方で知らないうちにグリーンウォッシングに加担してしまっている場合も大いにあります。

・景品表示法違反になることも……
日本では景品表示法や環境表示ガイドラインによりグリーンウォッシュが制限されていますが、厳罰を課す法規制はまだ整備されていません。しかし、2022年12月に消費者庁が「環境に配慮した製品である」「堆肥化可能で生分解性である」など根拠のない環境配慮表示を行った日本企業10社に対し措置命令を出したことに端を発し、グリーンウォッシングへの厳格化の流れは訪れていると考えます


・こうして考えるといいよ、的なアドバイスなど……
グリーンウォッシュへの規制強化の背景として、地球が直面する3大危機への意識の高まる中で、見せかけの取り組みでは許されないという面があります。カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミー、生物多様性への配慮などサステナビリティを軸とした経営に取り組む企業が増えてきており、環境の取り組みが企業の事業のコアに関わる部分になってきました。環境問題に対する企業の取り組み姿勢や実績が消費者や投資家に問われるようになってきたという意味で、大きな進歩と考えます。

今後、企業は製品やサービスの環境配慮について具体的で裏付けのある行動をとることと同時に、信頼できる情報提供がますます求められるようになるでしょう。
このことは、真摯な取り組みを積み重ねている企業にとっては、その取り組みが正当に、高く評価される社会になってきたわけで歓迎すべきことと思われます。

企業は準備や対応を進めることで、企業の競争力を高めることができます。
消費者との好循環を作り、正しいリスク管理と迅速な対応を行うことで脱炭素やサーキュラーエコノミー(資源循環)を基盤とした企業競争力が高まり、長期的な収益性や成長を支える新たなビジネスチャンスにつながるからです。成果で評価が決まることから、今後は環境に対する取り組みがますます加速することを期待します。


番外編
批判を恐れて情報を隠す「グリーンハッシング」とは?
グリーンウォッシング批判を恐れて、企業が環境目標や取り組みを公表しない行為。
ネットゼロ目標を掲げる企業など、失敗を恐れて公表を控えがちな行為もグリーンウォッシングの一種とされ、特に金融セクターでは今後、情報開示が厳格化される見込みです。
「グリーンハッシング」回避のためにも、透明性のある環境コミュニケーションが重要です。

例えばスニーカーブランドのVEJAは、自社の限界を正直に伝え、AllbirdsはスニーカーのCO2排出量を全て公表しています。企業が弱みを公表することで、業界全体の持続可能性向上に貢献できる可能性があります。Allbirdsはカーボンフットプリント算出ツールも公開し、業界全体での協力を呼びかけています。

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