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置いて行かれる猫達

うちの近所には野良猫が多い。
家の前の道路を軽く一瞥しただけでも常時猫が4匹は居る状況で。
これが朝や夕方の特定の時間になると10匹前後になる事も珍しくない。

増え始めたのは十年程前からだったか。
公園を挟んで反対側にある古いアパートの住人が猫に餌を与え始めた。
毎年暖かくなると子猫を見かけるようになり、自宅の庭にも入ってくるようになった。
冬になるよ良く車の下に潜り込んでいた。
あちこちに糞をするので毎年のように踏んでは靴を洗った。
時々妙に人懐っこい奴で撫でさせてくれる猫も居たりして、何だかんだ猫が当たり前に居る生活が続いていた。
猫に餌を与える事を禁止する張り紙もされてるようだったが、結局効力は無くアパートの住人による餌やりは最後まで続いた。

転機が訪れた。
近所のアパートが老朽化を理由に取り壊される事になったのだ。
当然住人達も他所に移転する事になった。
日毎に住人が出て寂れていくアパート、餌やりをしていた住人も期限一杯まで残っていたが結局出て行った。
誰も居なくなってなお、相変わらず餌を求めて猫達は決まった時間に集まる。
たまたま前を通りかかった私の足元に寄ってくる猫達。
居た堪れない気持ちにさせられる。
この猫達はどうなってしまうのか、他に行く場所はあるのか、様々な考えが回る。
結局、何もできない自分に悲しくなり逃げ出すようにその場を後にした。

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