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愛とカルマと再定義。

少し前の話になってしまうけれど、今年も参戦、風弥さんのバースデーライブin渋谷REX。去年はピアニスト風弥のソロステージと、ドラマー風弥のDaizyStripperとのひとりツーマン形式だったのだけれど、今回はDaizyStripperのレア曲縛り。Re:definition(再定義)の言葉通り、ご時世も含めありとあらゆる理由で演奏できなくなった曲たちを再定義して、再び命を吹き込む日になった。そして、そのコンセプトと意図を理解したうえで、ライブの流れを一切切らず、アンコールが終わってさあ挨拶となった瞬間、お約束のバースデーサプライズをきっちり仕掛けにいったメンバーも、いつものこととはいえさすがだなあと。ポルシェのリュックをプレゼントされて「ありがとう」と微笑みながら、ステージ上でモンブランをマジ食いしている風弥さんの姿にすべてが集約されていた。お誕生日おめでとう、風弥さん。

絶妙な五角形とは言ったもので、全員の性格がバラバラだから役割分担がはっきりしているし、だからこそ自分にできないことができる人間へのリスペクトが自然に生まれる環境なんだと彼らは言う。だから風弥さんの絶対音感も、直ちゃんの過酷な生い立ちも、まゆさんのカルマも、ありとあらゆるすべてが個性として平等に尊重されているのだろう。個性というのはそれまでの人生の積み重ねなので、その時その時の「今」を全力で生きていないと、個性的どころか何者にもなれやしない。だからこそ、肩書やイメージだけで過剰にもてはやすことも、頭ごなしに否定することもないという不文律が、ステージの上にも下にも行き届いているこのバンドのあたたかさに、いつだって救われているのだ。

DaizyStripperというバンドを見て「ああ、それでいいのか」と思わされたことがいくつもある。ひとつは夢を追うこと。叶う叶わないではなく、そこに向かって努力することに意義があって、たとえその夢を諦めなくてはならなかったとしても、その時の経験は絶対に無駄にはならない。それと、感謝の気持ちはきちんと相手の目を見て伝えること。なんなら彼ら「ロックバンドなのにありがとうと言いすぎだ」と関係者にいちゃもんをつけられて「人の目を見てありがとうと言って何が悪いんだ」と本気で怒っていたことがあったので。あと、何かを作るということは、人間性という名の感性からモノを生み出すことだからこそ、いいものを作りたければいい人間でいる努力を怠ってはならない。どんな善人も四六時中善人でいられるわけがないので、その時その時の自分の感情を、プラスにもマイナスにも素直に受け入れられるのが、いい人間というものなのだろう。

最初の緊急事態宣言が出る前日、港の見える丘公園で「これからどうなるのかな」と大きな不安を抱えながら、地元の景色を眺めていた。でも、この地球の、この日本のどこかという漠然としたものではなく、この街のどこかに彼らもいる、だからこそ会える日まできちんと生きなきゃ、あの実家でしか出てこないような固有名詞がガンガン飛び交う地元トークをもう一度聞くまで死ねねえわと素直に思えたのも、彼らのおかげだろう。好きを見つけると、人はたくましくなるものだ。まあもっとも、世の中が動いたり止まったりまた動いたりと、ある意味一番大変だった時期に、配信で風弥さんの「ペリー来航の絵に描かれてるタマクスの木がねー(はいはい知ってます開港資料館の中庭にあるやつです)」「ペリーとマッカーサーが来たって言うと変な街だよねー横浜(はいはいニューグランドのスイートルームに名前付いてますよね)」「シウマイ弁当、てか崎陽軒って知ってる? 食べたことある?(むしろシウマイ売ってる弁当屋だと思ってますが何か)」と、ハマっ子の通常営業をお見舞いされ続けていたので、世の中がどうあれ好きを貫いている人は強いなあと改めて思わされたというね。地元トークといえばReiさんも配信で「港の見える丘公園から見えるガンダムがね、なんかシュールでいいんだよね」なんて話をしていたけれど、あの高さと距離から見るとガンダムもつかまった宇宙人にしか見えないよなとか、市だか区だかの公報に「ガンダム内覧会のお知らせ」というシュールすぎる記事が出てたなとか、コメント欄に書くわけにもいかずひとり頭を抱えたなんてこともあったなあ。まったく「横浜駅、店が変わってるのはわかるんだけど、前そこに何があったか思い出せないんだよ。残像はあるんだけど。で、思い出せないまま時が過ぎて、気づけばまた別の店になってる」としみじみ語っていたまゆさんも含め、地元がすぎるんだ君たちは!(机ドン)

何の話だったか。まあなんというか、ここ数年どうしても文字だけのやり取りがメインだったので、どうしても奇をてらわないよう過剰かつ過敏に気を遣っていたのだけれど、もうそろそろ自分の言葉を解放してもいいころだろうなと。芸は身を助くならぬ、好きは幸運を呼ぶ。そう信じて、自分の言葉をこれからも紡いでいこうと思えた、そんな夜の話からどんだけ飛躍したんだ。なにはともあれ、雨でも良い晴れさせれば良い、それだけの話なんだよ。終わり良ければ総て良し、笑えればなお良し、ってね。

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