日本代表W杯の初戦相手、ドイツとはどんなチームなのか
これまでW杯4回もの優勝を誇っている強豪国ドイツ。今回のカタールW杯で、日本代表はグループステージ第1戦に対戦することが決まっている。
ドイツとともに強豪国であるスペインも同じグループであるだけに、初戦の結果は森保ジャパンのその後の戦いに非常に大きく影響してくる。
我々がドイツとの一戦を見るにあたって、まずはドイツとはどんなチームなのかを知ることが重要である。
ドイツ代表の基本情報
ドイツは現在17大会連続19回ものW杯に出場しており、今回のカタールで節目の20回目の出場となる。現在FIFAの世界ランキングでは11位に位置しており(2022年10月6日発表)、これは後述するが前回大会のW杯グループステージ敗退とEURO(欧州選手権)でのラウンド16敗退が大きく影響している。
現在の監督は20‐21シーズンにバイエルン・ミュンヘンをCL制覇に導いたハンジ・フリックであり、ドイツ国内でもEURO後の名将の就任、またその実績からW杯優勝の期待が集まっている。
愛称はDie Mannschaft(ディー・マンシャフト)であるが、日本では単純にドイツ代表と呼ばれることが多い。
前回W杯、EUROでの敗戦
前回の2018ロシアW杯において、ドイツ代表はまさかのグループステージ敗退を喫した。前々回のブラジル大会で優勝していただけに、この敗退はドイツ国内のショックはさることながら、世界中のフットボールファンを驚かせた。また、新型コロナウイルスの蔓延で1年延期になったEURO2020(欧州選手権)では、ラウンド16でイングランドに敗れ、これによってそれまで実に15年間もの間長期政権を築いてきたレーヴ監督が退任する事態になった。
ドイツ国内の強豪バイエルンを率いたハンジ・フリックが監督になったドイツはここ数年苦しんできただけに、心機一転このW杯に懸ける想いはかなりあるはずだ。故に日本代表も心して戦わなければならないと言えるだろう。
ドイツ代表のメンバー
現在のドイツ代表のメンバーは、主にバイエルンの選手たちを中心に構成されている。ざっと上の画像で紹介している20名のメンバーの内、実に7名がその選手たちである。さらにフリック監督が最近まで指揮していたこともあって、同チームの影響を大きく受けている代表チームとなっている。
フリック監督は主に4231を採用している。ドイツらしい攻守で縦に速いフットボールを展開しており、特にアスリート能力の高さを生かした強烈なプレスを活かして、相手がボールを前進させる前により高い位置で刈り取ることに長けている。これは現在リヴァプールの監督のユルゲン・クロップが有名にしたゲーゲンプレスに通ずる要素も多分にあり、このハイプレスはドイツ代表のフットボールの象徴となっている。。
選手に目を向けると、注目はやはりサイドの突破力のある選手を揃えているということだろう。特にニャブリやザネ、ムシアラといったバイエルンに所属する選手たちの突破力は群を抜いており、個で打開する力を持った選手たちである。
ここで最も要注意したい選手として、ホフマンを挙げておく。
主に代表で右SHを担う彼は一言で言えば、神出鬼没なプレーで相手を困らせるプレーに長けている。ライン間でボールを受けることもできれば、相手を引き付けて味方のためのスペースを作れ、ゴール前においては中央や逆サイドまで出向いて点も取れる。そういう左右のサイド関係なく、色んなところに顔を出して多種多様なプレーがそつなくこなせる、また守備の場面でもハードワークできる選手である。
このホフマンを好きにプレーさせてしまうと、彼に中盤からボールを簡単に引き出されるだけでなく、ハイラインの日本のDFラインの裏を取られたり、ゴール前のスペースを恣意的に作られるなどされて、簡単に失点してしまう。そういった意味では、日本の選手たちが彼のマークの受け渡しをどれだけ円滑にでき、パスコースの消し方を工夫できるかは非常に重要になってくるだろう。
日本が勝てる可能性は?
普通に考えれば、日本の敗戦が予測できるところではある。事実、グループ突破のオッズは圧倒的にドイツスペインが大本命となっている。では、我らが日本代表はドイツ代表に付け入る隙は無いのだろうか。
結論から言えば、ドイツに勝利することができる可能性はある。
しかし、それはドイツ側のコンディションやシステム、人選はもちろんのこと、バイエルンのチーム状態次第で大きく変わってくるだろう。
前述の通り、ドイツ代表にはバイエルンの選手たちが多く選出されている。もしW杯前にバイエルンの状態が悪ければ、当然選ばれる選手たちのコンディションやメンタリティも思わしくない状態にもなり得る。そうなれば、下剋上を狙う日本の選手たちがそれらの要素で上回ることができる可能性は自ずと上がっていくであろう。ただ、これはあくまで相手側の他力本願的要素である。
日本代表側に立ってみると、人選次第では可能性があると言えるかもしれない。現在の日本のシステムは4231で、守備時にはトップ下を前線に押し上げて442でハイプレスを仕掛けるものになっている。大方前線からのプレスは、アメリカとの強化試合で手ごたえを得たものがある。よって、前の人選に関してはアメリカ戦と同じで良いだろう。工夫を加えると面白いのは、まだ不動のレギュラーのいない左SBである。
ドイツの武器は強烈なウィングの選手たちである。特にザネやニャブリ、ホフマン、ムシアラといったタレントがいる中で、それを抑える対人能力の高いSBが必要なのだ。現在左SBは中山雄太が務めており、この選手は守備攻撃両面持ち合わせた選手である。攻撃力も注目されがちだが、守備能力にも長けているのも特徴だ。
しかし、この選手よりドイツの右サイドを完封するのに適任な選手がいる。それが伊藤洋輝である。彼は現在ドイツのブンデスリーガのシュツットガルトに所属しており、ドイツのウィンガーに対する知識や慣れに関してはDFの中で最も持っている。このことから、よりブンデスのことを知っている伊藤洋輝を使うことで、無失点に抑えることができる確率は高くなるだろう。このあたりのテコ入れを柔軟にできるかが、ドイツ戦の結果を左右すると言ってもいいかもしれない。
結局最後は監督次第
とはいえ、いくら人選を変えたとしても、当然相手は監督の指示のもと、それに戦術的に対応してくる。特にドイツはハンジ・フリックが監督なだけに、かなりの修正力は持ち合わせている。相手が修正・対応してきたときに、日本側も当然対応し返さなければならない。余談ではあるが、このあたりの監督同士の駆け引きがフットボールの魅力の一つであり、現代のフットボールの多様性を生み出している要因の一つである。
しかし、現在の森保監督が就任して以来の試合を見ていると、相手が何かしら変えてきたときの修正力が高いとは言えないように見える。
特に先日のドイツ遠征でのエクアドル戦では、その前のアメリカ戦とはほぼすべてのポジションで人選を変えてきたが、アメリカ戦で良かったプレッシング強度が弱く、そのタイミングもかなりチグハグになっていた。エクアドル戦で出た選手たちがプレッシングの強度で特別劣るわけではなく、むしろきちんとハードワーク出来る選手たちが出場していただけに、おそらく原因は監督が相手の出方に合わせて修正できなかったことであろう。
W杯本戦では、過去の対戦相手よりも高い修正力を持つ監督が相手になる。よって、日本も森保監督の戦術的手腕が勝ち点を取るためには必須になる。このあたりは、W杯を通した注目ポイントの一つになってくるだろう。
手強いドイツに変化はなし
いくらドイツの弱点を探したところで、相手が強豪であることに変わりはない。彼らの不調の基準は、日本のそれよりも遥かに高い次元にある。その中で戦わなければならないことを踏まえると、ドイツ戦は間違いなく難しい試合になる。特に個々のタレントの強烈さと組織力はW杯優勝を十分狙えるだけに、日本が勝てる確率はかなり低いだろう。その中で善戦して勝ち点をもぎ取るには、相手の詳細な分析と複数パターンの相手の出方に合わせた戦略を抜け目なく行う必要がある。実際前回大会の韓国は、それでドイツを下した。
近年の日本人選手のレベルは、ヨーロッパのトップレベルに近づきつつある。冨安がアーセナルで高い評価を受けていることからも、それは疑う余地がない。よって、過去の日本よりはドイツに勝つ確率は上がっていると考えられる。我々としては、日本代表がやってくれると信じて応援するだけである。
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