あなたと新生活
「“宇宙の果ての先の星”に行って本当に幸せな生活が保証されるの?私とっても不安だわ。親も友達もいないし…」
「あの星は僕たちが住むのに十分な酸素もあるし、この星より自然が豊富っていわれてる。基本的なインフラも完備されているし、これからみんなが移住するから人種も仕事による収入なども差別や格差もないスタートがきれるはずだよ。それにさ…」
「それに?」
「僕がいるじゃないか」
「それはそうだけど…」
「その話はまた明日しよう。君に見せたい“宇宙の果ての先の星”の新しい資料が僕のメールに届いたからね」
夜にあなたの上司と名乗る方から連絡があった時、何を言っているのかわからなかった。
スカイタクシー同士が正面衝突するなんて、今の時代ありえない事故。
無人操作だからこそ安全なはず。でもなんでこんなことが…
最後のあなたと話した時間、宇宙の果ての先の星での生活に不安があったのも確かだけど、あなたとずっと一緒に居られるのが嬉しすぎてちょっと困らせてみたかっただけ。
あなたの会社にあった私物が私の手元に届きました。身内がいないから私に引き取ってほしいって。あなたが見せてくれると言っていたメールを今日みました。
私たちが一緒に住むはずだった街並みの画像。これ見せて安心させたかったんですね。
マイホームは思ったより大きくてびっくり。そして1階がカフェになっている。
覚えてくれていたんだ。
出会った頃カフェでアルバイトしていた。
「カフェ併設の家とか昔の映画に出てくるよね。今の世の中じゃ全員がシェルター暮らしみたいなものだから無理だけど、あんな生活憧れちゃう」
サプライズで作ってくれたんだ。
でも私が要らないって言ったら、どうするつもりだったの?
なんでも自分で決めてしまうあなたらしいけど。
私、宇宙の果ての先の星で生活すること決めました。
宇宙の果ての先の星行きのロケットの予約も済ませました。
新しい生活、やっぱり不安はあります。
カフェやってみます。
でもあなたがいるから大丈夫。
心の中だけど。
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