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14歳のグチ屋

14歳の頃、家を飛び出して、
バスで片道1時間かけて
都心の街へ繰り出した。

「グチ屋」と書いたスケッチブックを
抱えて、バスに揺られてた。

着いたのは昼間の繁華街の入口。
マックが目の前にあって。

路上の花壇のレンガのブロックを背もたれにして
スケッチブックを看板のように立てかけた。

手には緊張で汗が滲んでいて、
顔をあげるのは恥ずかしくて
少しうつむいていたと思う。

知らない街に行って、
私のことを誰も知らない場所で
何かをリスタートさせたかったのかもしれない。

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14歳の頃、学校はしんどかった。
担任の先生との亀裂もひどかった。
友人関係を絶って、迷いがある時期だった。

家は逃げ場だったけれど、
祖父の介護と認知症による脱走事件が度々起こり、
家にいるのもしんどかった。

今思えば、祖母は祖父の介護からノイローゼに
なっていたんだと思う。

祖母の甲高い怒鳴り声と罵声が響く休日。
部屋に閉じこもって漫画ばかりを読んだ。

夕方、親が帰ってきてから部屋を出る。
ようやくリビングに行って、
テレビをつけてお笑い番組を
観るのが楽しみだった。

ある日、テレビを見ていたら
東京の夜の繁華街で、
酔っ払いのグチを聞く
「グチ屋」をしている人が
インタビューされていた。

やることは「通りすがりのグチを聞く」だけ。
たった5分間の番組だった。

素直に「羨ましい」って思った。

学校でのイザコザは、親に話したくなかったし、
家のイザコザは友人には言いたくなかった。

“私のことを知らない人に
グチったらスッキリするのかな。
でも、東京に行くなんて無理やけんなぁ。”

“私みたいな人
他にもおるんやろうか。”

“グチ屋がココにもおったら
助かる人とか他におるんやろか。

おるんやったら、
「グチ屋」を自分でやってみたらどげんやろ…

だれにも見られんごつ、
遠いところでしたらどげんかな…”

テレビで見たお兄さんの見様見真似をして
路上の看板用にスケッチブックを買う。
クレヨンで「グチ屋」と何枚か試しに書いて、
見やすそうと思った一枚に決めた。

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意を決して決行したのは冬の日だった。

ドキドキした。
馬鹿にされるんじゃないか、という思いと
今までとは違う自分の行動にドキドキした。

次は、グチ屋を警察に止められてから
スケッチブックが残るまでのお話。

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