第十九話「縄を持った観音」

不空羂索観音「アモーガ・パーシャ=必ず獲物を捕らえる縄」

天台宗での人間道担当は不空羂索観音(ふくうけんじゃくorけんさく)
いつも縄を持った観音様です。

「不空」とは「むなしからず」、つまり「願いはちゃんと報われるわよ!」
という意味
「羂索」(けんじゃく)は戦いや狩猟につかう投網や縄のこと、
つまり「この手に持った縄でいい奴も悪い奴もひっくるめて全員救っちゃうわよ!」
という、博愛であり女王様的な観音様です。

見た目は、顔が一つに、目が三つ、腕が八本とこれまたグレイトなお姿、
そんな素敵な不空羂索観音ですが意外と一般的には強い信仰がありません、

それはこの不空羂索観音のターゲットが一般人ではなく
政財界の実力者、つまり当時の藤原氏だったのです。

藤原一族は不空羂索観音の鹿の皮で出来た衣装を見て
それはそれはドキドキしました。
鹿は春日大社・藤原一族の象徴でしたから
「我らの女神様はこの方しかおられぬ。」と思ったのです。

そんなこんなで一般人が近寄りがたい存在になってしまいましたが
藤原一族はみんな不空羂索観音にメロメロになったということです。
メロメロすぎて一族そろって観音様のために専用のお寺を建てたほどです。
パトロンをメロメロにして寺まで建立させてしまう魅惑の不空羂索観音

仏像界の女帝と言っても過言ではないですね…
その上、この方は常に縄を持っていたりする…
そういうの好きなんですね、権力をお持ちの方というのは

つづく

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