青い珊瑚礁

③プロポーズ

付き合いだしてからも樹里は良くお店に来た。
常連の客にもいつのまにかバレていたのでよく話のネタにされた。
茜ちゃんも私に懐いたのか「お母さん」なんて呼ばれる日もあった。
少しむず痒いが嫌な気はしない。悪意がないからだろうか?
付き合ってから星矢のことを詳しく知るようになった。
元々はホテルのバーで働いていて、カクテルの大会などにも出場していたらしい。
お酒は本当に弱い、こんなに飲めないのが意外だった。
「バーテンダーって飲めない人結構いるんだよ?」
その時は驚いたが確かにそーらしい。作るのは良いんだが飲むのは嫌いなのだ。
シェフなどが意外にコンビニ飯が多いのと同じ理屈だろうか?
毎日料理や仕込みをしているせいで、
家のキッチンにはなかなか立たないというあれである。
たまに泊まりに行くのだが、その時はお酒を作ってくれない
彼いわく。「店じゃないと作る気にならないんだ」とのこと。
オリジナルカクテルなどは良く実験台にされるのだが・・・
他の意見を聞きたいらしい、その時の反応が面白く樹里も楽しんでいる。
茜ちゃんはと言うと、気を利かせてくれるのか良く部屋にこもり勉強してる。
まぁ「遊ばない?」と声をかけると子犬のようにこっちに戻ってくるのだが。
家での料理は茜ちゃんが担当らしい「これも花嫁修行!」といつも張り切っている。
そしてこれが意外にも美味しいのだ、星矢も「茜の料理は姉譲りだな」と言っている。
聞いた話によると、茜ちゃんの両親は両方ともホテルのシェフ、パティシェなのだ
それを聞いた時『料理一家なのかな?』なんて思ったり。
まるで家族のような日々が樹里の心を満たしていった。
そして月日は流れ・・・
3人はレストランに来ていた。「ここは僕の姉たちが働いてた店なんです」
夜景を一望できとても一般OLの樹里からしたら非日常空間である。
「茜も始めて来た・・・」茜ちゃんもとても驚いている。
大人の私が驚くくらいだ子供からしたらもっとすごく見えるのだろう。
「星矢君じゃないか!」陽気な180センチはありそうな男性が近づいて来た。
「あっお久しぶりです!あぁごめんねこの方はこのレストランのシェフでオーナーの
赤井 純也さん。今日招待してくれた方なんだ」
「どうも純也です今日は美味しいものたくさん出すから楽しんでってくれよ」
「どうも星矢の彼女の樹里です」「茜です」
2人ともぺこりとお辞儀をする「茜?おーー大っきくなってて気づかなかった!」
「え?」茜ちゃんはキョトンとしている「昔見習いの頃ご両親にはお世話になったんだ」
どうやら茜ちゃんが幼い頃両親が連れて来てくれたらしい
「あら?茜ちゃん?」後ろから声がする「あーー大っきくなってーー」
「うわぁぁわぁ」「星矢君も大っきくなったわね〜」
「ご無沙汰しております楓さん。この方は楓さん姉さんの後輩」
「楓です!よろしくねー」手をひらひらさせる楓「どうも」ぺこりと挨拶をしてると
「下ろしてください」茜がボソッと声を出した「あらごめんなさい」樹里の元に駆け寄る茜
「じゃあ席に案内するよ」純也の一言で移動を始める。
「すご〜い!」それはもう素晴らしい席であった
まるで星空のようにきらめくビルや車のライト眠らない街東京とはこのことか・・・
そんな事を考えていた「じゃあ座ろっか」普段星矢が椅子を引かないので少し驚いていると。
「びっくりした顔しないでよこれでもここで働いてたんだから、癖の1つ1つ」
「いやいつもバーカウンター越しの接客だから」「ママ顔赤いよ?」
「ほっといて!」星矢が笑顔で2人の横に座る。乾杯酒が運ばれてくる
「なんていうか、こんなお洒落な所あまり来ないから緊張するね」
「僕もお客としてくるのは初めてだからなんか緊張するよ」
微笑み合う2人緊張からか時間がゆっくりと流れている気分になる
ゆっくりと注がれるスパークリングワイン「ごゆっくりお過ごしください」
「じゃあ乾杯」「乾杯今日は呑むのね?」「乾杯酒くらいはね?」
「私もー」「茜ちゃんはオレンジジュースね?乾杯」
静かな空間にカツンと小さな音が響き渡る。
「こちら前菜の・・・」そこからいつもと変わらない当たり前の会話をしながら
料理が次々と運ばれてくるどれも目新しく美味しそうに盛りつけられている
その1つ1つの芸術的な料理に毎回凄いと小さく声を出す樹里と茜
それを見て幸せそうに微笑む星矢であった。
「こちらデザートのチョコドームになります」「えっなにこれ!」
今日1番の驚きを見せる樹里「少し早いんだけど誕生日だよ樹里」ニッコリと微笑む星矢
「おめでとう!」「ありがとう!」樹里がとても驚いていると
「こちのらホットチョコレートの液体をかけさせていただきますね」
「お願いします」店員さんが上からチョコレートをかける。
ゆっくりと溶け出すチョコドーム、驚いたのはここからだ、チョコドームが溶け出すと
「なんか書いてある」よく見ると『結婚してください』と書いてある。
嬉しさのあまり声の出ない樹里「改めて樹里結婚しよう」
そーいうとポケットから小さな箱を取り出す星矢
樹里嬉しさのあまり泣き出しながら「うん・・・うん・・・」
「これから素敵な家庭を築いていこうね?」
「はい・・・不束者ですがよろしくお願いします」
2人は幸せな雰囲気のまま店を後にした。

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