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MGC(マラソングランドチャンピオンシップ)で数字遊び・試合後編

MGCが終わりました。

とんでもない試合でした。出場した40名の選手、指導するコーチングスタッフ、大会運営の方々諸々、お疲れ様でした。そして、ありがとうございます。僕は男子の25キロ付近から見始めたので前半の状況はリザルトでしか確認できませんが、ここまで白熱するレースになるとは全く想像していませんでした。正直な話、大会自体の意義を見くびっていました。五輪まであと11ヶ月弱ありますが、これからの陸上界がより楽しみになる内容でした。ありがとうございます。

レースとしては男女ともに戦前の予想を上回るハイペースの入りだったみたいですね。男子は設楽悠太、女子は一山麻緒が動かしたようで。特に女子は入りの5キロが16分31秒。男子は設楽悠太が一時的に1キロ3分を切る入り。夏のレースとして考えるとあり得ない入りです。設楽選手、何故失速すると分かって攻めの走りを止めなかったんでしょうか。勇気は認めますがここだけが不可解でした。

話を戻します。これもハイライトと速報値を見て知ったのですが男女ともに20キロ付近までに仕掛けがあったんですね。10-15キロ15分35秒→15-20キロ14分48秒に上がった男子の鈴木健吾ら、16分31秒で入り15-25キロを33分28秒でまとめた女子の前田穂南。ここでレースの流れは変わりましたね。

男子25キロ過ぎ、設楽悠太の走りに異変が起きます。脚のバネが効かなくなったのか5キロ16分台までが落ちました。設楽悠太は大体35キロまでペースを保てれば心配無い選手なんですが、これは終盤の登り坂で追いつかれるなと思っていたらその通りに。chase groupの粘りも見事でしたが、ここで際立ったのが夏マラソンでの実績豊富な中本健太郎選手。更に後方から追い上げ前を追う、これだけでMGCの開催意義があったと言えますね。

男子の最大のハイライトはchase groupが設楽悠太を抜き去った37キロ過ぎからでしょうか。中村匠吾、服部勇馬、大迫傑、橋本崚、大塚祥平、藤本拓、鈴木健吾、竹ノ内佳樹、中本健太郎、上位選手によるバチバチな優勝争い。ゴールが近づくにつれてゾーンに入ったような…日本のマラソン史上に残るスパート合戦が繰り広げられました。優勝した中村匠吾選手はラスト2.195キロを6分18秒(5キロ換算14分21秒)と、世界レベルの争いといっても過言ではなかったです。服部勇馬、大迫傑両選手もガムシャラに食らいつきましたが。

女子は徐々にペースが落ち全選手が単独走を強いられる中で、鈴木亜由子選手ら上位2名は中間点までの貯金を守る粘りの走りを見せました。小原怜選手も追い上げましたが馬力が足りず、わずか4秒、4秒及びませんでした。男子と異なり、優勝した前田穂南選手でラスト2.195キロ7分55秒(5キロ換算18分02秒)。瀬古利彦ディレクターは「男子はメダル争い。女子は入賞が期待できる」と(多少盛ってるかもしれないが)現状を示してますね。

正直、MGC本戦がここまで盛り上がるとは思ってませんでした。見くびってました。昨日のスタートは午前9時前後。五輪本番は6時スタート。他の競技も行われ、男女で開催日も違います。この事から、観客数は恐らく五輪本番よりもMGCの方が多いと見越してます。52万5000人が生で見届けた選考会。予想以上の歓声とプレッシャーを浴びた選手。いい刺激になったと思われます。

一方で、戦前本命視されていた大迫傑、設楽悠太、松田瑞生選手は代表内定を得られませんでした。プレッシャーが半端なかったのか、普段よりもフォームがブレてしまい適切な対応が出来なかった印象を受けました。いずれもファイナルチャレンジに回ることとなります。激戦必至ですが、ハイレベルな派遣設定(男子2時間05分49秒→日本記録/女子2時間22分22秒→日本歴代9位相当)が設けられてます。

言い方が正しくないかもしれませんが、現実的な目標を見据えて走ったMGCシリーズと違いファイナルチャレンジでは非現実的な目標に挑むことになるのでケガのリスクが増します。もしかすると、振るいにかけられる選手がこの時点で出てくるかもしれません。各選手の選択に注目です

世界大会など大舞台で大事なのは「速さ」のみでも「強さ」のみでもなく、その両方を兼ね備えた選手と言えそうです。後半追い上げた岡本直己、野上恵子両選手が届かなかったのを見るとそう思わざるを得ません。また2時間6分台を持つ井上大仁選手と2時間23分台を持つ岩出玲亜選手が完走した選手中最下位に沈んだ辺り「本番に合わせる力」も重要になっていくでしょう。マラソンに過去の肩書きは通用しません。己に打ち勝った選手がその大会では強いと広く知らしめた大会になりました。観ていて興奮しましたし楽しかったです。

最後に…。中村匠吾選手、あそこでよく吐き切りました。苦しさを抱えたまま走っていたらどこかで立ち止まっていたかもしれなかったので。


今回の大会を受けて手持ちのデータ(数字遊び)を改良し(フルマラソンの戦績のみを考慮していき)ます。またMGC不出場で有力な選手も分析して、改良版を時間のある時に出していこうと考えてます…


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