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ウェビナー『相談支援、対面とオンラインの違い』レポート

 5月23日、公益財団法人関西カウンセリングセンターのウェビナー、『相談支援、対面とオンラインの違い』を受講しました。

 新型コロナウイルスの影響で、相談支援現場にもオンライン化の波が半ば強制的に押し寄せました。対面支援のオンライン導入は課題でしたが、着手できなかった現場も多いと思います。

 その導入として、現段階のまとめのようなテーマなので楽しみにしていたウェビナーでもありました。

①,「今なぜSNSカウンセリングなのか」工藤啓(育て上げネット理事長)

 今回のウェビナーは50名定員で募集をしたが、あっという間に埋まり、最終的に86名(!)にまで上ったとのこと。ニーズは高いと予測していましたが、想像以上の人数であり、この機会をポジティブに捉えている人が多く、単純に嬉しく思いました。

まず冒頭で工藤さんは3つの目的を述べていました。

①システムを知る必要
②対面とオンラインの違い
③先行者の知見ノウハウを疑似体験して実践に取り入れる

 ①について。オンラインツールのシステム自体への造詣を深めることが必要であるという意見でした。イレギュラーな情勢の中で、利用者の不安要素を排除する必要があります。②はそれぞれの特性を理解して臨むこと。③は今回の様なウェビナーの重要性でした。また、

 また、コロナ明けでもオンラインができる、対面でもできる、という幅の広さが責務になる。例えば、交通費がいらない、電車に乗らなくてもいい、地方の人が物理を越えて来る、だから相談に来られる人もいるかもしれない。

 面談に限らずオンライン化は難しいことですが、それ相応のメリットがあります。可能性が広がるという捉え方ができるのではないでしょうか。

②,「SNSカウンセリングを実施するためのチャットツールについて」桑原(トランスコスモス株式会社)

 ライン公式アカウントツールKANAMETOの紹介、基本機能説明がありました。セキュリティや顧客管理など、相談援助を行う上で配慮すべき点が多いことに気づかされます。というのも、利用者に適切なサービスを提供することが至上命題なのはオンラインもオフラインも変わらないからです。オンラインツールをLINEで行うにあたり、必要な性能の紹介がありました。

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出典:SNSカウンセリング相談サービス(トランスコスモス株式会社)

③,「SNSカウンセリングの必要性と効果」宮田智基(帝塚山学院大学教授)

 SNSカウンセリングのきっかけはLINEの利用率によるものでした。

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出典:平成29年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書概要

 従来、電話いじめ窓口が主流でしたが、若者の現在の生活様式にミスマッチでした。電話相談の場合、声が聞こえ、場所が限られることで家族に聞かれてしまうことを懸念する子どもには難しい手法になっています。LINE相談は、電話相談の26.4倍の相談(2018年10月)があったことからも自明でした。

 SNSカウンセリング~ココロの健康相談~では、開始日に既に14,866人の登録があり、最終日には63,910人(!)という数になっていました。

 もちろんデメリットもあり、対面に比べて情報量が少ないことが挙げられていました。その欠点をを質問で引き出す技術でカバーし、尋問にならない工夫が必要だといいます。非言語コミュニケーションが全くないように思えるが、そうではない(後述)という話にハッとさせられました。対してメリットは気軽さや場所の融通が挙げられました。

④,SNSカウンセリングの現場から(SNSカウンセリングの実際)伊藤吉美(関西カウンセリングセンター主任相談員)


 顔が見えない、時間がとても掛かるというデメリットがあると思ったが、支援員同士が相談しながら対話できるというメリットにも成り得るという話がありました。質疑応答形式で、印象的だったのは・・・

・相談内容の違い
 子どもは手軽に入ってくる。はーい!と軽いものから死にたい・・・など。感覚的にTwitterにつぶやくことと同じ。主訴がないレベルで入ってくるので、気軽さはかなりある様子。
・非言語が使えない(個人的今回のハイライト)
 前提として困るのはカウンセラーであること。相談する側は意に介さない。加えて非言語はある。レスポンスや大文字、小文字など、-なのか~なのか。汲み取ることができると考える。
・二元論ではない
 リストカットはいけませんか?に対して「はい、だめです。」という一問一答ではない。あなたはどう思っているの?という話で対話を促す。
・利点
 ハードルが低いので、ここで「聞いてもいいんだ」と思ってもらい、スクールカウンセラーや、家族と話ができるようになると良い。

 オンライン相談に前向きに取り組まれていることが伝わりました。特に、「非言語コミュニケーションがない」「オンラインは勝手が悪い」などのデメリットは、あくまでカウンセラーにとってであり、利用する子どもは気にしていない、という考え方でした。

 言い訳してしまいそうな場面ですが、利用者第一の考えを持っているからこそ出る言葉だと痛感しました。

⑤感想

 オンライン支援を行う上で大事なことは「想像力」「アップデート」だと感じました。再構築の考え方が必要であり、新たに始めるのではなく既存の知識や経験をどう活かし、更新するか。その姿勢が必要だと思います。

 オンライン上でも基本の傾聴姿勢は同じですが、それに加え、オンラインだからこそ必要な配慮ができるかどうか、という点です。いつも以上に大きな相槌をしてみる、背景を変えてみる、言葉の距離感を気を付ける、などです。加えて、文章だけのSNS相談では、「こんにちはー」「こんにちは~」など、相手にどう見えるかまで気を遣う必要があると言います。

 オンライン支援と対面支援、もしかしたら求められるスキルや特性は異なるかもしれません。私は対面だけ、オンラインだけ、というマインドよりも、両方チャレンジすることで、ひいては利用者の選択肢を広げることに繋がります。その支援者像こそ、これからの社会に必要なアップデートなのではないでしょうか。

 100分の1もここでは記載できませんでしたが、こんな支援があると知ってもらえたら嬉しく思います。今後の支援でオンラインがどう影響してくるのか、不安でありつつも新たな社会様式の到来も感じられました。

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