自民党総裁選が終わって

9月29日、自民党総裁選が行われ、岸田文雄新総裁が誕生しました。

10月4日には臨時国会が召集されます。そこで、首班指名選挙が行われ、正式に第100代内閣総理大臣に就任することとなります。

ただ、第100代総理としての任期は短いものとなります。というのも、10月21日には衆議院議員の任期満了を迎えます。そのため、臨時国会では新総理の所信表明演説と代表質問を経て、会期末の14日に衆議院が解散され、事実上総選挙に突入するものと見込まれます。そして、総選挙後初めて召集される国会(特別国会)では再び首班指名が行われ、第101代内閣総理大臣が誕生します。

なので、岸田新総裁は、まずは総選挙に勝つことが当面の最大の目標ということになるでしょう。

今回の総裁選を振り返って

今回の総裁選は、9年ぶりに現職が出馬しない選挙でした。

その意味では政策転換や世代交代の大きなチャンスでしたが、そうはなりませんでした。

結果的には、主要3派(細田派・麻生派・旧竹下派)が支持する岸田氏が議員票で河野氏を圧倒しました。

当初は世論調査で人気の高い河野氏が本命視されていました。都議選・横浜市長選に相次いで敗れ、自民党の支持率が低迷する中で、選挙に不安を抱える若手議員などを中心に支持を集めるとみられていたからです。また、石破元幹事長や小泉環境相といった国民的人気のある政治家が支持に回り、党員票で圧倒するとみられていました。

しかし、序盤の河野氏は議員票を得ようと、持論を抑え、慎重な言い回しに終始し、本来の切れ味・持ち味が消えていました。また、基礎年金を全額税方式にすることに言及するなど、準備不足を露呈し、政権運営に不安を感じさせるところもありました。投票日が近づくにつれて失速していったという印象です。

逆に追い上げたのが高市氏です。安倍前総理の支援を受ける保守派で、選択的夫婦別姓に反対するなど主張も保守的でしたが、討論ではソフトな印象でした。議員票では河野氏を上回り、党員票でも健闘しました。自民党には根強い保守勢力がいるということと、安倍前総理の影響力が依然として強いことを感じました。

野田氏は告示日前日になってようやく推薦人を揃えるなど、当初は出遅れた印象でした。しかし、選択的夫婦別姓にも唯一明確に賛成し、森友加計問題の再調査にも賛成するなど、自民党内の意見の多様性を示し、議員票では推薦人の20人を上回る支持を得ました。

岸田氏はこれまで「勝負弱い」と言われていました。しかし、今回は真っ先に手を挙げ、党役員の任期制限を打ち出すことで、その後の二階幹事長降ろし、そして菅総理が退陣に追い込まれる流れを作りました。

そして、自民党の支持率が回復し、河野氏が失速する中で、3A(安倍・麻生・甘利)の支援を受け、安定感のある岸田氏が選ばれたということだと思います。

今回の総裁選の最大の効果は、自民党の政党支持率の回復でしょう。高市氏の出馬で保守層が活気づき、女性候補が二人出るなど話題性もあり、連日メディアを賑わせたことで、一時離れていた支持層が戻ってきたとみられます。

岸田氏は選挙後のスピーチで「国民の声を聞く」と述べました。丁寧に国民の声に耳を傾け、説明し、納得してもらう。これまでのコロナ対策で特に欠けていた、こうした地道な政治の営みを積み重ねていくことによって、政治への信頼を取り戻してほしいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?