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窓際のおっさん25 人材育成に昔の価値観が上手く通じない背景(3/4) 厳しさによる教育の難しさ 上の言うことが正しいという前提に陰り

 前回は、事務処理は苦労ではないという結論と、形骸化した厳しい指導の横行について、おっさんの体験談を紹介した。
 今回はその続きとして、厳しく接する教育の難しさと、上の言うことが正しいという前提に陰りが生じているのではという考察を述べる。

<前回の続き 厳しくすることによる教育の難しさ>


 この上司からは、分かり合っていない相手に対しても「とにかく厳しく指導すれば正解」とする形式主義的浅さが見て取れる

 他者への理解や愛情が欠如しており、主査と見れば文句をつける。そんな「ちょっと出世した職員(主査)にマウントを取って影響力を示したいだけの本性」すら丸見えだった。

 どこかの記事で、かの有名なイチロー選手が
 「厳しい指導が無理だから今の人はかわいそうでもある」
 「昔は厳しい指導によって、能力が不足している人も、一定水準までは登ってこれた」
 との旨をコメントしていた。
 一方で「指導は複雑で難しい、正解がない」とも述べていた。

 おっさんもほぼ同意見である。

 厳しい指導の必要性や有用性はある程度はあるように思うが、例のような浅い考えの愛情がない指導者が増えたせいで形式的で害悪なものになり果て、現代はほんのわずかな厳しさを伴う指導でも、実施が難しくなってしまって残念にも思う。

 今の時代ではせいぜいとして。。。

 ① 不安全行為や、卑劣な手段による人間関係の破壊には必要な叱責。
 ② 明らかなサボタージュなど、周囲に示しがつかないほどの怠慢には警告、更に改められなければ処分。
 ③ 能力は能力自体の種類も個人差も大きいので、例えば職位だけで単純判断しない。また、明確に役割と評価基準を述べ、なるべく第三者をかませて人情采配を防ぐ。

 ざっくりこれぐらいである。指導者として、予め気を遣わなければならない部分があまりにも多く、被指導者への踏み込みも昔よりは浅い。  

 結局、例のダメ上司のような形式的な教育、実質的なマウンティングや見せしめの連続が人との接し方に、過度のコンプライアンス概念を定着させてしまった。
 イチロー氏のいうような理想的な厳しい教育を含めて、厳しく接すること自体が通用しなくなってきている。

<上が絶対:上が今頼りないと思うので、見直しや対策が必要>


 とかく昔は「上の言う事は絶対」「社長がカラスが白いと言ったら白なんだ」などと、サラリーマンの生存戦略的に語られることもあった。また、そうすることで、多くの人が老後まで安定した立場と収入が保証された時代でもあった。

 そうした生き方が染みついている世代にとっては、上の言う事を聞くと同時に上の人間がお喜びになるような処理を忖度することも必要だったとは思う。

 しかしいつまでもその空虚な仕事を上の世代が続け、現場が世の中の加速に対して取り残された結果、現在は世間を騒がすパワハラ事件や、思いつめての被害者の自殺などが発生して、深刻な問題になっている。

 この問題の主要因は、組織では上が正しい前提なのに、上が圧倒的に正しいことをしてこなかった所業のツケであるとおっさんには思う。

 例えば、
 ① 自分が偉く有能に見えるように、自分が成果を誇れるように、無駄な仕事を正当化して部下後輩を苦しめる。
 ② 間違っていてもそれを取り下げようとせず、部下に全力で上の人間の選択や行動を正当化するべく、取り繕わせる。
 ③ 変化とそれに伴う責任を逃れるために、嘘の仕事ばかり部下後輩にやらせてそのば凌ぎをしている。
 ④ ①〜③をいつまでも維持するために、人が足りない一方で、結局は無茶な人海戦術に頼っている。

 おっさんより前の世代の現役時代は、まだまだ成果主義の果実も僅かに残っており、多少無理があっても数字が出れば、上が下の人間を押しつぶしてもギリギリお咎めなしで済んだ話も多いだろう。
 また、そもそも今よりも人手不足ではなかったので、個々の負担自体も今よりはいくらか少なかったようには思う。

<若い人との分断によって、年配者が組織内で権威を落としている>


 それでも「上の言う事は絶対」「社長がカラスが白いと言ったら白なんだ」といった価値観は、組織である以上、上の意見を優先する合理性においては、ある程度はやむを得ない所ではある。

 しかし、今の若い人はすぐに辞めてしまう。厳しい指導も受けた経験がないので、心も病みやすい(良し悪しは別だ)。

 新技術や時代に合った感性を発揮できる若い世代の活用も必須であるのだが、黒いのを白と勢いで言い切っただけでも、貴重な若い人が反発したり潰れたりして問題になってくる。

 故に、立場が上でも謙虚になれない人ほど、問題を起こして権威が失墜しており、実態として上の言うことは絶対という意識付けが、徐々に通用しなくなっている(古い世代の人があらゆる世代に舐められている)ように思う。

 大事なのは、指揮命令系統の徹底について、今更強調することではなく、単純に反対意見を扱える状況づくりのはずなのだ。

 つまり上が謙虚になって、正しい指揮命令系統の維持に注力できればいいのだが。。。プライドを捨て切れないのか、妙にフラットな職場環境や、極端な暴政と言った、船頭が方向を見失った状況が多々見受けられるように思う。
 
 簡単ではないが、多面評価や、問題者の降格基準の明確化などによって、精神的に未熟な人間をラインから外すなどの取り組みをし、いくらかでも筋の通った船頭を立てる必要があるのではなかろうか。

次回に続く


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