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読了のおっさん24 海皇紀(川原 正敏/月刊少年マガジン)

今日も、おっさんが全巻読んで面白かった漫画をご紹介です。
個人の感想であり、感じ方はそれぞれなれどご参考に。
概要的なネタバレは含みます。

海皇紀(川原正敏/週刊少年ジャンプ)
1998年~2010 全45巻

① タイプやテーマなど
 海洋ファンタジー、冒険、少年漫画、船舶、操船、崩壊後の未来、剣術、日本刀、戦記もの、科学、国家

② 簡単な内容
 地球の文明が崩壊して数千年後の未来。世界は大国ロナルディアの侵略に伴う戦乱に覆われていた。ロナルディアの侵略によって故国を失った姫「マイア」は、護衛である稀代の兵法者「トゥバン・サノオ」と共に、故国復興のために「カガク」を求めて旅をしていた。
「カガク」の手掛かりを持つ魔導士イルアンジャに会うためグリハラという土地を探していたところで、東の小国ウォルハンの国王「カザル・シェイ・ロン」が襲撃されている場に巻き込まれ、同時に介入した海の一族で主人公の「ファン・ガンマ・ビゼン」と出会う。
 物語はこの出会いから、ファンの操るオーバーテクノロジーの帆船「影船八番艦」にカザル一向を除く面々が乗り込み、「グリハラ」を目指すところからスタートする。
 カザル一向は東の小国から範図を広げて、大国ロナルディアに対抗する覇王の道、ファン一向は「カガク」を探す冒険、海の一族を巡る争い、海洋を舞台にする
各国との交わりを重ね、カザルの覇道を海から支えながら、歴史を紡いでいく。
 未来海洋ファンタジーであり、歴史モノの要素もあり、冒険活劇でもある。


③ 読みどころ
 艦船とその操船に係る描写は、おそらく漫画作品では唯一無二と言える。それだけでも読む価値があると思う。全てが非常にリアルで、一コマ一コマに現実味や臨場感もある。
 タッキング、スターボード、ワッチ、ミズン、スパンカー、ホールアウト(イン)など。。。知っている人が読めば、ハキハキとかっこいいと感じる専門用語が連発され、まるでその船に乗って操船を眺めているような感覚がある。(おっさんは若いころから興味があったので多少は分かるが、専門用語であり、耳になじまないと読みづらいかもしれないけど)。

 世界やキャラクターも良い。ファンタジーであるが、文明崩壊後の未来であるため、物理法則などの常識の延長にある世界観である。カガクは現在の科学のことで分かりやすい。
 男キャラが多く、ストーリー上も前面に出ている男臭い作品ではある。だが女性キャラも美しく気丈、感性的、と非常に女らしくもあり、全キャラに魅力がある。

 全編に渡って海と言えば海ではあるが、地上戦もある。海以外の過酷な自然環境や、遺跡を探索するといった冒険のシーンもある。単独の船での航行によるストーリもあれば、大規模な艦隊を動かしての戦いのシーンもある。それが全45巻に隙間なく詰まっていて、非常に盛りだくさんである。
 時折上空から海原全体を俯瞰するコマがあって、状況を確認しながら読めるのも楽しい。
 おっさんは徹底的に細かくは読みきれていないが、海流、風向き、ゆきあし、舵の効き具合や船の安定度なども非常に細かく正確に描写しているとのことで、そのリアルさ故のギリギリの勝負の連続に、深い読みごたえがある。


④ 雑多な感想
 本作は凄く気になっていたが、長い間読めていなかった。川原正敏先生の作品はどれも好きだが、修羅の刻、修羅の門を読んだ後、龍帥の翼があったので、そっちに寄り道をしてしまい、結局最後に読むこととなった。でも、ある意味最後に読んでよかったとも思っている。読んでみて一番好きなタイトルになった。

 また、他の作品はレンタルまたは漫画喫茶で読んだ(龍帥は一部購入した)が、一挙全巻買ってしまった。アルティメットガイドまで。

 海洋もので戦記物でシーンも多彩であるが、ギミックも多彩である。折れない、曲がらない、なんでも切れるニホントウが出てくる。無線機と思しきものが出てくる。暗視スコープと思しきものが出てくる。
 崩壊後の世界で「オーバーテクノロジー」或いはファンタジーにおける「魔法」の位置づけとして、旧文明の「カガク」が存在し、読者には親近感と共に、物語を盛り上げるエッセンスにもなっている。
 また、現代のテクノロジーを超えたものもまた「カガク」として登場し、二足歩行ロボットなどがそれにあたる。
 こうしたカガクの兵器と、作中の登場人物たちとの間には様々な因縁があり、機転を利かせたカガクの活用や、カガクの兵器との戦いもまた展開として熱いものがある。

 戦闘シーンそのものも良い。体術の応酬がリアル。これは修羅シリーズでもそうだったが、結構見入れる。勿論漫画なので超人的な動きは間違いないのだが、リアル志向であるからこその臨場感や、ギリギリの緊迫感をいつも感じる。
 リアルさで言うと、作中世界の海の価値観もリアル志向だった。船乗りの常識として、遭難者はいかなる立場や理由であっても救助するという考えがある。
 海は過酷な環境で、助けに行けるにもかかわらず無視をする行為は罪に問われることすらある。これは現代でも全世界で共通の認識である。
 本作にもハッキリとその描写があり、敵国の兵士を何故助けるのかと、女性キャラが泣きながら納得せずにいるのに対して、ファンは意に介さず「船乗りだから」とシンプルに返答する。思わず口元が緩んでしまった(おっさんだけだろうか)。



⑤ その他
 万人にオススメの作品かと問われると、本当に迷うところだがそこは難しいと答えたい。

 テーマや描写の好き嫌いは本当に分かれると思う。だが読んだ方がいい作品だとは思う。得るものはあるはずだ。

 船が出てくるものや海がテーマのものは割とあるが、ここまで帆船をリアルに描写したものをおっさんは知らない。
 唯一無二のテーマと作風(リアル思考な所など)であると思う。その分他にはない魅力が詰まっている。

 だが評価があまり無いのが不思議に思う。理解が難しいのだろうか。。。?

 例えば批判的な意見として「主人公が出来過ぎ」というのも聞くが、何を今更、そりゃそうだろうと思う。
 ファンは強くて、頭も切れて、技術も高くて、女の子にモテモテ。確かに出来すぎだがそこは漫画で英雄譚なのだし。

 逆風でも味方につけるのがトップスルスクーナー(すべて縦帆)の影船八番艦であるが、やれやれ、本作を推している人程、こういう訳の分からない例えをするからいけないのだろうか。。。

 それはさておき、本作が大好きな人も結構いらっしゃる。以下にオマージュイベントがあった。

 https://umibun.ti-da.net/e2825659.html

現在もやっているのだろうか?
 模型とはいえ、船の技術を競うというのは技術系には結構面白い話だ。

 こういった形でもっと船の世界に、そして本作にも興味を持つ人が増えるとよいと思う。



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