窓際のおっさん どうにもならない積算の話

会社にいると色々ある。どうにもならない事ばかりで、禄を食むためだけにひたすら受け流して暮らしている。時には反撃してみたり、動き回って相手を撃ち落とすこともあるけれど、会社全体としては何らプラスがない。それでも一筆積み上げれば、誰かの一遇は照らせるかもしれない。そんな想いで今日も筆を取る。

会社にいると答えが決まっていて譲ってもらえない場合が多い。
今日はその例として「見積もり」の件についてお話ししたい。

<建築・土木の考え方>
建築・土木工事で、特に公共工事など堅いところやお金の大きいところは、
見積書の書き方がかなり合理的に決まっている。
「資材、人工、面積、環境、夜間や土日対応」
といった基本単価と数量を正確に数えて
「管理費、経費、外注部分などその他の積み上げ」
といったものを必須項目として、
一定の掛け率準拠なり追加積み上げなどとして加算していく

概ねどこでも、そのやり方で良いとは思うのだけれど、
この界隈を3〜5年程度経験してしまい、
かつその他の業界の会計ルールについて疎かったり、
興味がない人は「見積書とはかくあるべき」と思ってしまう。
ここに落とし穴があるようにおっさんは思う。

建築・土木はお金も沢山動くし、公共的でもある。
これは私見だが彼等のうち特に古い世代の人達は
「俺たちはものづくり大国日本の知的エリートだ」みたいな意識もあり、
その中で合理的で透明性・公平性の強い積算の術を知ると、
インフラ系技術者は、これが絶対的に思えてしまうかもしれない。

<会計には色々ある>
だが、例えば商社などは
商品の取り扱い以外の、例えば施工業務などはほとんど外注で、
修繕の見積もりをお願いしているのに、
部品代しか載っていないものが出てくるケースもある。

。。。え? それって変だよね、何とも思わないの?
と、この3行だけでは思うかもしれないが、

①部品は定価であり、商社は代理店なので原価で仕入れている。
 しかし原価は業界内で公表禁止のため定価で出すしかない。
②定価から原価を引いた差分が施工外注費及び利益に当たるはずだが、
 外注に出す施工費はまとめて年間ベースで支払う固定費のため、
 本件にいくら掛かったか正確に算出できない。
 特にたった1日の小さな修繕では算出が困難である。
③そうは言っても見積書に形式上、
 経費や人工を載せることは可能ではあるが、
 載せてしまうと他者との価格競争で敗北してしまうリスクがある。

こうした背景の結果、詳述に部品代だけ載った見積書が作成され、
提出されるのである。分かりづらい話だがありえない話でもない。

<それでも形式で判断してしまう人が多い>
ところが大手企業や公共セクターは、
こうした見積書を嫌う傾向があるのは確かだ。
特に建築・土木が長い人など、一定の項目が含まれていることが、
当たり前だと認識している人からすると、
「この見積書は異常値として弾くべきだよね」
などと結論づけてしまうことがある。

おっさんもこうした手合に、
「君は建築設備の部署を経験していると思うけども」
などと要らぬ前置きとともに御指摘を賜り、
上記の如く説明したがついに理解されることもなく、
上から「次回からは見積書の項目をきちんと明示するように指導せよ」
とお叱りを受け、平行線で終わった経験がある。
なぜこういう見積もりになったか、疑問を持って確認すれば、
この業者はむしろ金額的に良心的であるとすら気づけるだろうに。

<適正金額の見極めは形式にとらわれないこと>
おっさんはこの案件で、当然何社か見積もりをお願いしたのだが、
他の業者さんは経費や人工の項目が入っていて、
何十万も高かったのを覚えている。

他の業者には、施工を主たる業務とする業者や、
ほとんど個人経営の町工場なども含まれている。
当然、仕事毎に職人を集める方法を取る場合もあるし、
経営方法や会計方法が異なってもいるだろうから、
本当の金額はなんとも言えないのだが、
単純にぼったくっている可能性だってある。

「次回からは見積書の項目をきちんと明示するように指導」
ということになると、業者としては困ってしまうか、
むしろ利益を優先するために体裁さえ整えれば良いのであれば、
「なんだ、もっと金額積んでいいのね、感謝感謝」
となって、形式が利益誘導のための茶番になってしまう。

<結局はちゃんと勉強して判断しているかどうか>
今回の件はまとめると以下に障害を感じる
①判断者が建築・土木への傲りからやり方を絶対視するあまり、
 勉強を怠っている。
②説明を聞く気が無いのか、プライドが邪魔をするのか、
 本当に起こっていることよりも、
 見慣れた形式への当てはめを強要してくる。
③なんでこんな簡単な理屈を理解できる人が上にいないんだろう。

また、しょーもない愚痴を言ってしまった。
おっさんの窓際生活はまだまだ続く。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?