ひと匙日記 あなたの大切なものは

5月26日(金)

 どういう会話の流れだったか忘れたが、宗教の勧誘についての話になった。友人が昔、信号待ちをしている時に二人の外国人男性から声を掛けられた。手には冊子を持っていてそれはおそらくその二人が信仰する宗教のものであったので、友人は、"あ、勧誘かな"と思い、少し身構えたそうだ。二人の男性は友人にこう話しかけた。

「あなたの大切にしているものはなんですか?」

友人は少し考えたあと、

「うーん、強いていえば、俺かな。」

と、答えた。その答えに二人の男性は

「あなたには神の救いは必要ありません。」

と言って去って行ったそうだ。

友人もめちゃくちゃカッコよかったが、わたしはその二人の外国人男性の去り際の潔さに感嘆した。

 姉が中学生の時、姉の同級生から頻繁に電話がかかってくる時期があった。電話には母やわたしが出ることもあるので「また、〇〇さんから電話あったよ」と姉に話すと、「あの子、宗教の勧誘で同級生に電話かけまくってるんだって」と言った。わたしは、宗教の勧誘と言うのは大人がするものだと思っていたから、中学生でもするんだ、と驚いた。姉に話を聞くと、その子はクラスでも誰とも口を利かずいつも一人で過ごしていると言っていた。そんな環境にいてもクラスメイトに積極的に電話をかけるなんてすごいなぁと思った。その子がすごいのか宗教がすごいのかはよくわからなかったけど。
ただ、残念だったのは、その子は毎回、姉の名前を間違えていた。わかりやすく言うと「大」と言う名前なのに「太」と間違えたり「犬」と間違えたりしていたのだ。母が電話に出ると
「うちには犬という名前の者はいませんが」と言って電話を切っていた。わたしは、名前間違える人の宗教には絶対入らんやろうな…と思った。姉が中学を卒業してからもしばらくは電話がかかってきていたように思うが、いつのまにかそれもなくなった。と、言うよりもわたし自身がビックバン反抗期に突入して、それどころではなくなっていた気がする。


あなたの大切なものはなんですか?