第1話：ありのままで

世の中で、間違いなく誤解されているものが2つある。
『学問のすすめ』と『アナと雪の女王』である。

福沢諭吉は「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」という、
博愛とスーパーリベラリズムの信奉者のように誤解されるが、割と自由と開放を熱烈に支持する急進的な人物でもある。

そして、この言葉には続きがある。

「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」と言えり。されば天より人を生ずるには、万人は万人みな同じ位にして、生まれながら貴賤上下の差別なく、万物の霊たる身と心との働きをもって天地の間にあるよろずの物を資とり、もって衣食住の用を達し、自由自在、互いに人の妨げをなさずしておのおの安楽にこの世を渡らしめ給うの趣意なり。されども今、広くこの人間世界を見渡すに、かしこき人あり、おろかなる人あり、貧しきもあり、富めるもあり、貴人もあり、下人もありて、その有様雲と泥どろとの相違あるに似たるはなんぞや。その次第はなはだ明らかなり。『実語教じつごきょう』に、「人学ばざれば智なし、智なき者は愚人なり」とあり。されば賢人と愚人との別は学ぶと学ばざるとによりてできるものなり。また世の中にむずかしき仕事もあり、やすき仕事もあり。そのむずかしき仕事をする者を身分重き人と名づけ、やすき仕事をする者を身分軽き人という。すべて心を用い、心配する仕事はむずかしくして、手足を用うる力役りきえきはやすし。ゆえに医者、学者、政府の役人、または大なる商売をする町人、あまたの奉公人を召し使う大百姓などは、身分重くして貴き者と言うべし。
　身分重くして貴ければおのずからその家も富んで、下々の者より見れば及ぶべからざるようなれども、その本もとを尋ぬればただその人に学問の力あるとなきとによりてその相違もできたるのみにて、天より定めたる約束にあらず。諺ことわざにいわく、「天は富貴を人に与えずして、これをその人の働きに与うるものなり」と。されば前にも言えるとおり、人は生まれながらにして貴賤・貧富の別なし。ただ学問を勤めて物事をよく知る者は貴人となり富人となり、無学なる者は貧人となり下人となるなり。

(*´Д`)ﾊｧﾊｧ読むのに疲れるからサマろう。
人は本来平等といわれているが、実際には貧富や境遇の格差があるのが現実で、乗り越えるスキルとして知恵がある。さあみんな学ぼう。
と言っている。
つまり「格差があるから学ぼう！」という啓発なのだ。
多分、諭吉自身が頭が良すぎて、自分より頭の悪い人の発想が理解不能だったに違いない。タイムマシンで諭吉に会って伝えたいのは「頭の悪い人には結論から＆1行で」である。結論まで遠い。

打って変わって『アナと雪の女王』も、松たか子が熱唱した曲のインパクトが大きすぎて、「ありのままで生きることは素晴らしい」というストーリーだと誤解されがちだが…オチが違う。
奔放すぎる妹を持つ、全てを凍らせる能力者の女王がおり、幼い頃からその能力をずっと押さえてきたが、暴発で孤独になり、ならばありのままに孤独に生きる！と決めたら国中が凍ってしまい、
真実の愛の力でちょうどいい能力の自制とコントロールができるようになるまでの過程が「ありの～ままで～」の歌である。

大人の中で「いい子でいなさい」と育った元子ども的には「うわっ…辛い」と思いました。はい。

「ありのまま」にも限度があるプロフィール写真

さて、今回の婚活の話は「婚活アプリ」のプロフィール写真について語る。プロフィールというのは、お見合いだと「釣り書き」とも言われ、なるべく人となりの「良いところ」を知ってもらうものだ。

ところが、婚活アプリをすると、そのプロフィール自体「何かがおかしい」人がいるのだ。
大きく分けると、
・お前、「ありのまま」すぎやしないか！？
・お前、「自分を隠しすぎ」じゃないか？
の2つに集約される。

１．「ありのまま」過ぎるパターン
プロフィール写真に女性はそれなりにメイクアップをして綺麗な瞬間の写真を選ぶ。奇跡の一枚とかSNOWで盛ってるのはやり過ぎだと同性でも思うし、男性も興味が失せそうだ。

ただ、男性は別の方向性でやり過ぎがいる。

かなりの人数「ヒートテックとステテコ」状態をプロフィールにしている人をお見受けする。
しかも、背景は「ごみの転がっている自宅」だったりもする。
さらに、すごい不機嫌そうなしかめっ面の自撮りで口は「への字」である。

「ありのまま」を見てもらいたいにしてもやり過ぎだろう！！
興味を持ってもらう段階でそれって怖くてドン引きしてしまうし、
その理由は「TPOのわからない人では？＝もしや社会生活送れないのでは？」という疑いも生じ、怖すぎるから近寄れない…という結果になるのだ。

そして、登録したての「新着」の女性にやたらいいね！をつけてくるが、後半になると来ない。
新着の女性なら目が肥えてないから大丈夫という問題ではなくて、
まずは興味を持ってもらえそうな段階の写真を撮った方が良いのでは？という話だ。

これは女性も、めっちゃ個性を前面に出している強めの柄の洋服＆強めのメイクの方もいるのだが、個性を押し出すタイミングは基本的にコミュニケーションが取れた後なので、男性に聞くとそれはそれでとても怖いそうだ。

2.「自分隠しすぎ」パターン

・お前は、なぜマイケル・ジャクソンなのか？

・お前は、なせクリオネなのか？

・お前は、なぜ刺身の盛り合わせなのか？

・私が付き合いたいのはチワワじゃない。人間だ。

・遠影過ぎて、もはや景色の一部で人となりが見えない。岩？アンコールワット？森？海？

…と、かたくなに顔を隠す人達もいる。

こちらもまた「何者！？」と怖くて誰もマッチングできない。

結局どんなプロフィール写真が良いのか？

これは、器量よりも性格よりもTPOにマッチした第一印象だと思う。

「清潔感がありおしゃれでも盛らずに配慮が合って、人となりがわかり、優しそうである」がTPOだ。

重要な取引先とのMTGにスーツで行くのと同じで、お付き合いするかもしれない人に、いきなり生身の自分を出し過ぎても、正体不明でもいけないということだという結論に至った。

だって、プレゼンにヒートテックとステテコで現れたり、目出し帽被ってたり、ギラギラ衣装で来たらびっくりでしょう？

何より、先の、ありのまま過ぎたり隠し過ぎる男性も、盛りすぎたり主張強めの女性も、自己紹介を見るとかなりの割合で共通の主張がある。

見た目で判断する人はお断りです。

過去に何か嫌な思いをしたのだろうけど、それはそいつが感じ悪い奴だったんだよ。これから出会う人に罪はない。

また、ファッションや見た目というのは記号で、その人の意見や考え方を伝える一手段にもなる。

会話がキャッチボールだとしたらお話をする前に見た目の主張が強すぎると、1個ボールを相手に投げつけてることになる。それは驚いてしまうし、NGというのもまた一つのボールの返しである。

だから、都合の悪いボールは投げてくれるな、こっちは最初に投げつけるからな！というスタンスは、私は取りたくないなと感じた。

男性でも女性でも、心はありのままで、見た目は背伸びして身綺麗に見せる努力をする一手間は欠かさずに、婚活したい。