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ストリトートデザインガイドラインのポイント、ちょっと押し売り的な追加の3選

 こんにちは。もう年度末ですね。春の陽気で屋外が気持ちよく、ついブラブラ散歩したくなってしまいます。ウォーカブルなまちが本領を発揮する季節の到来です。

 さて先日、国土交通省がちょうど一年前2020年に出したストリートデザインガイドラインについて、個人的解説記事を書きました。

 読んでくださった皆様、どうもありがとうござました。その中でも、なんと2人もの方に「続きを書いて欲しい」と言ってもらえました。その2人が大学の後輩や同僚だったりするので、言わせた感も満載なのですがw
 というわけで、今日は、前回書ききれなかった好きなポイント3点を書きます。前回よりもさらに個人の想いが強めで、オススメポイントの押し売り的な感じです。もしよろしければお付き合いください。

1.街路を改変する意義。子どもだってステイクホルダー

 全国各地でまちなかを盛り上げる取り組みが行われています。そこで頑張っている人たちの熱意の大もとは、「まちへの愛着」だろうと思います。頑張っている方々は「自分を育ててくれた街をもっと元気にしたい!」と、集客が見込める郊外のロードサイドではなくて、まちなかの商店街でお店を頑張って続けてくれているんではないでしょうか。そして、それは多くの場合、自分自身の子どもの頃の記憶から来ているものだと思っています。
 ですが、現在の地方都市のまちなかは、車がビュンビュン走る「子供にとって危ない場所」になっているケースも多いと言われています。ガイドライン策定課程の”ストリートデザイン懇談会”でも、西村浩さんがおっしゃっていました。

 今はまだ、まちなかのために頑張ってくれる人がいる=プレーヤーがいる状態ですが、子ども達がまちなかに愛着を持たないまま成長すると、将来どうしようもなくなってしまうのではないでしょうか。
 これまで、まちづくりで、子どものことについてフォーカスされることがあまりなかったように思っています。あっても公園や交通安全対策の話くらいでしょうか。今回のガイドラインでは、経済の話だけではなく、持続可能な地域づくりのために街路の使い方を変えていきましょう、子どもたちが安心して過ごせる場へ変えていきましょう、と書かれています。しかも、まちなかを再生させる意義1章のはじめの部分、かなり前段部分でそのことに触れています。

 上記はガイドライン7ページの抜粋ですが、それ以外にも所々、子ども達がガイドラインに登場しています。国内では三鷹、海外ではニューヨークで、ストリートの価値を子どもたちの成長の場と考える事例が取り上げられています。素敵な写真で、公共空間の価値は経済価値だけじゃないよなぁと改めて考えさせてくれます。

 余談ですが、地元の栃木県小山市だとこんなことがありました。まちなかの公園の活用について、東京の会社が応募してくれた話です。箇条書きの2ポツ目に注目です。

まちなかの公園の活用について、自分が育ったまちに関わりたい・よくしたいと思ってくれている人がいる大切さを改めて感じます。(出典はこちら。) 

( おまけ 私の地域活動のモチベーション )

 さらに余談ですが、私が地元の小山市でまちづくりに関わる理由も似ています。地域でイベントを企画・開催するなかで、「ボランティアなのになんでそんなに頑張れるの?」とよく言われます。転勤族の私と夫にとって、敢えて悪い表現をすると小山は一生の中でのイチ転勤先、通過地点に過ぎません。ですが、息子・娘にとっては幼少期を過ごした思い出の場所、さらに言えば原風景になるかもしれない土地が小山駅の西口エリアです。子どもたちにできるだけ、楽しい、キラキラした思い出を残してあげたい、そんな一心でイベント開催だったり、まちづくり活動に携わっています。

 ちなみに今のところ、うちの3歳児は「明日は城山公園でキャンプする日?」「また◯◯ちゃんとピクニックする?どんぐり探す?」「明日も思川でお船のる?(=SUPのこと)」と口癖のように言っています。近くの公園や川で遊んだ思い出はすごく楽しかったようで、小山での原風景を良いものにという想い、なかなかいいセン行ってるんじゃないかと思います。

2.社会実験の種類を意識しよう 

 現在は「社会実験」という言葉も世に浸透して、全国各地で「まずはやってみよう」と社会実験が実施されています。すごく良いことと思いますが、一方で地域がイベント疲れに陥る話もよく聞きます。社会実験は「実験」なので、何のための実験なのか、目的をしっかり持って実施されなければなりません。もちろん、その後の結果・検証と、その公表も大切です。

 社会実験の中でも、近年多いのが「社会が状況変化に慣れる」ためのもののではないかと思います。この種類の社会実験は、期間の設定や運営が手軽になるよう意識して企画し、イベント的な社会実験とゴッチャにしないようにしなければと思っています。

 さらに踏み込んで言うと、社会実験の段階を意識しましょうという話があります。ここからはガイドラインの外の話です。「行政が社会実験をやってもその先につながらない」という声をよく耳にします。日本では、数日間のイベント的社会実験も、数ヶ月かけてやる社会実験も一括りに「社会実験」と呼ばれています。ですが、泉山塁威さんらが日本でも広めようとしているタクティカルアーバニズムの考え方では、社会実験をフェーズごとに分けて考えています。
▼数日単位(短期的デモ)
▼数ヶ月単位(実験)
▼数年単位(暫定的デザイン)
▼数十年単位(長期的変化)

日本でもこの整理を意識して社会実験を組み立てると、将来にうまくつながっていくのではないかと思っています。

 Tactical Urbanism(戦術的アーバニズム) Figure by Rui IZUMIYAMA

タクティカルアーバニズムについて興味がある方は以下サイトがわかりやすいです。

3.「笑顔度」という指標。どうやって公共空間を評価する?

 社会実験や事業で空間改変をしたら、評価が必要です。まちづくり・街路改変分野での事業の評価指標として現在一番多く使われているのは「歩行者交通量がどれくらい変化したか」という指標ではないかと思います。
 「沿道の売上」も経済循環としてわかりやすい指標だと思います。ですが上述したように、経済だけではない目的があると私は思っています。都市政策は福祉政策にもなり得ます。そう考えるときに、空間の評価の仕方はいろいろありますが、たんに歩行者量が増えただけではなく、もっときめ細かい評価をしていかなければだめ、というのが、懇談会でも話されていたことでした。懇談会の中で交通安全の専門家の小嶋文先生が「笑顔度」という概念を教えてくれました。

居心地の良い空間は笑顔の人が多いはずですよね。その空間が良い空間かどうか、とてもわかりやすい指標だと感激しました。今はまだ測定にお金がかかり簡単に測定できない指標かと思いますが、今後のカメラや画像認識の技術の発展ともに、使ってくれる地域が増えればいいなと思っています。

また、居心地の良い公共空間はDiversityがある、「いろんな人がいろんなことをしている」ほど良い空間と言われています。寛容さが居心地の良さにつながるのでしょうか。単に歩行者交通量だけでなくて、その空間の多様性を図る指標も国土交通省から参考例が出ています。公園・広場編やストリート編があって、こちらから見れますのでぜひ参考にしてみてください。

4.おわりに

 今回も最後までお付き合いくださいましてありがとうございました。
 ストリートデザインガイドラインは「居心地がよく歩きたくなる街路の参考書」と副題がつけられています。つまみ読みをしてヒントを得れるものだと思うので、ウォーカブルの担当者の方は是非一度読んでみてください。紙に出力してを一冊机に置いておくことをオススメします。また定期的にアップデートされるようなので要チェックでもあります。

今回も、育休中の公務員として、ソワソワしながら、行政が出してるガイドラインについて書きました。なんですが、前回に比べるとだんだん面の皮が暑くなってきたようで、慣れてきた感じもします。(おい!w)
 また何か伝えたいネタが出てきたら発信したいと思っています。どうぞ今後ともよろしくお願いします。

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