二つの冷蔵庫

 夜中、小腹が減って台所に行くと、クマはいなかった。ほっとしてから、なぜクマなんかがいると考えたのか不思議に思った。東京の一般家庭の台所にクマなどいるはずがない。なのにありありと熊のいる光景が想像できてしまった。

「疲れてるのかな?」

 何か冷たいものでも飲もうと思って冷蔵庫を開ける。そこにクマがいた。

「うわあ!?」

 思わず大声を上げてしまったが、クマはぴくりともしない。どうやらぐっすり眠っている様子。

「冷蔵庫が空だ」

 よく見れば、冷蔵庫の周囲は食い散らかしの残骸でいっぱいだった。おそらくクマの仕業だろう。
 冷蔵庫の中身を食いつくし、満腹になったクマは眠気を催した。そこで、ちょうどスペースの空いた冷蔵庫に潜り込み、冷蔵庫の冷気で冬眠状態に陥った。
 そんなところだろうか。

「それなら冷蔵庫にいるうちは起きないか。でもこれ、どうしよう」

 私はその場で、新しい冷蔵庫をAmazonで注文した。この冷蔵庫はクマ専用にするしかなさそうだ。
 というわけで、いまうちには冷蔵庫が二つある。

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