真夜中のごちそう
夜中、小腹が減って台所へ行くと、クマが困っていた。冷蔵庫を漁っていたのだが、ろくなものがなかったらしい。
「こっちは小腹どころの騒ぎじゃないんだよ。これから冬眠だってのに、こんなにハラペコでどうするの」
クマ様はそんな泣き言を仰る。どうして急に敬語になったかと言えば、こちらが圧倒的に不利な立場だからだ。向こうは食物連鎖の頂点、こちらはクマ様にとっては格好の餌である。
だがクマ様は悲嘆にお暮れなさっているせいか、そのことにお気づきあそばされていないご様子。ならば絶対に気づかれてはならない。
「それなら私が美味しいものを作ってあげるよ!」
そう、私が助かる道はそれしかなかった。幸い私は料理が得意だ。
その夜、私は腕によりをかけてかけまくり、料理の腕前をここぞとばかりに振るいも振るいまくった。
満漢全席もかくやという料理の数々が我が家の食卓を埋め尽くし、すべてがクマ様の胃袋へと消えて行った。怒濤の夜であり、奇跡の夜であった。
「ああ、満腹。もう何も食べられない」
私がようやくクマ様にそう言わしめたとき、ふと思い出したように夜が明けた。
私はベッドにいた。リアルな夢であった。
ちなみに私は料理ができない。
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