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もくれんとおかあさん 1


ある秋の深まりが見えた日。
こみちちゃんのおうちにいた、もくれんの命が終わりました。

もくれんは、真っ白な猫で、耳と鼻と肉球が桃色をした、美しい猫でした。

こみちちゃんとその家族は、
いつもいつも もくれんの美しさに驚いて、なんて綺麗な猫なんだろうと思いました。

歳をとっても、ずっと美しいままだったからです。その美しさは、一度目を見たら離せなくなるほど、吸い込まれてしまうほどの引力でした。
どうしてこんなに綺麗なのか、理由はわかりませんが、化粧もしないのに、美容室も行かないのに、「本当きれいねぇ」とこみちちゃんのお母さんはいつも感心していました。

こみちちゃんのお母さんは一心同体なのかと思うほど、もくれんといつも一緒でした。

もくれんはお母さんのことが大好きでした。お母さんに呼ばれると嬉しくて、目を細めて、2人にしかわからないサインで返事をするのでした。

猫は自分が病気になっても、具合が悪くても、自分からそれを伝えることができませんが、お母さんはもくれんの変化をすぐに気づくことができるのでした。

ご飯を食べる量が減ったな
おしっこの量がいつもより少ない
目やにが出ているな
寝てる時間が普段より多いな

お母さんのきめ細やかな気配りがいつももくれんの体調の変化に気づくことができるのでした。

もくれんは、お母さんが帰ってくると、リビングのドアの前で待っていました。時々爪でドアをカリカリして、せかしたり、ニャアと呼んでみたり。

お母さんがトイレに行くと、そのドアに手をかけ、鼻を押し付け、中に入っていきます。お母さんが洗面所に行くと、洗面所のドアをまた開けて、にゃあと鳴いて呼びます。

お母さんに抱っこされると、とても気持ちよさそうにしていました。
目を細めて、ぐるぐると喉をならし、時々お母さんの顔をみて、何かを伝えていました。


続く…


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