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私を構成する5つのマンガ

迷うとは思ってたけど本気でチョイスに迷いまくって結局UPが遅れに遅れてしまった……。
絞る基準として、「アル」で表紙画像を出せるもの(ないのもあったんだよ……コマなんてもちろんあるわけない)、メディア化されたことない、人にオススメしたい、という3つを柱にしてみた(その結果、結局は自分が青春時代読んでた古き良き少女漫画寄りになってしまった)。
でもマイナーだけどマイナーすぎない5作になった……と自分的には思ってるんだけど、はてどうなんだろう??

遠藤淑子「エヴァンジェリン姫シリーズ」

笑いながら人生で大切なことを知りたい方にオススメ。
遠藤淑子さんはマイフェイバリット漫画家さんの一人で、もう全作品大好きなんだけども。
その中でも原点的な、この『エヴァンジェリン姫シリーズ』を紹介しておきたい。
ヨーロッパのどこかにある架空の小国エッシェンシュタイン王国、そこの世継ぎの王女様であるエヴァンジェリン姫。
……というと、なんとも優雅なセレブのお話みたいだけども。
実はこの国、超〜貧乏!
王族の居城である古いお城はあちこちボロボロで、でもその修繕代すら国家予算から出せない有様。
姫自ら金策に駆け回る始末なのだ。
エヴァ姫は年若ながらもしっかり……してるかと思いきや、その性格は一言で言えば素っ頓狂。王女様のくせに守銭奴でもある。
周りのお付きの人たち(代表格が典型的巻き込まれ系イケメンのオーソン)を振り回し、姫のゆくところいつも珍騒動あり、なのである。
例えるなら、ウェルメイドなハリウッド黄金期のコメディ映画の雰囲気。
悪役はいても悪人は出てこない。
エヴァ姫はなにかと勘違いしたりドジを踏んだりするけど、どんな時でも姫としての矜持を失わない。
性格は猪突猛進タイプなのでよく暴走もするけど、盲目的には決してならない。
無闇に周りに頼るようなこともしない。いつだって自分にできる最善を尽くそうとする。
姫にとって何より一番怖いのは、自分のせいで大切な人々が傷つくことだから。
だからこそ姫は国民からも愛されているのだ。
遠藤さんの絵はお世辞にも上手いとは言えない。けれど、『漫画力』すなわち絵とストーリーで見せる力は本当にすごいと思う。
もちろん、キャラクターの魅力、セリフの素晴らしさも。
個人的にはたぶん、これからも一生何度も何度も読み直すと思う。
余談として、遠藤さんが動物好きなこともあってか、何かといろんな動物が登場するのもいい。
ちなみに、私はこの作品のおかげでアルプスアイベックスの名前を覚えました。


浦川まさる「いるかちゃんヨロシク」

王道だけど破天荒な少女漫画が読みたい方にオススメ。
主人公のいるかちゃんは、背は小さいけどとびきりの元気娘で男勝り。
運動神経抜群だけどお勉強は苦手、ヒロインというよりヒーロー要素が強い女の子。
一方、お相手の春海くんは文武両道、眉目秀麗な男の子。一見、鉄面皮で冷徹、自他共に厳しい生徒会長でもある。
転校生として学園にやってきたいるかと、生徒会長の春海が最初はガチンコでぶつかり合いつつ、いつしかわかり合いお互いほんのり恋心まで……というラブコメディ。
ちなみに掲載誌は「ときめきトゥナイト」とかと同時期の『りぼん』。
しかしこれ、少女漫画のラブコメディという枠にはとてもじゃないけど収まりきらない。
今読んでも、ギャグとアクションの描写が突き抜けててあまり古さを感じないし。
なんといっても少年漫画顔負けの血と汗と涙、そしてヒロインの変顔満載のギャグ!
例えば、いるかがいろんな運動部で助っ人をしたりするのも学園もののお約束だけど、この作品の場合本格スポーツ漫画か⁉︎ってくらいド迫力な描写がすごい。
特に女子サッカー編とか、時代を先取りした感満載。当時、なでしこなんて影も形もない頃だったのに。
舞台が倉敷の名門校(強権持ちの生徒会ありというのもお約束)というのも雰囲気があってよき。
私のカップリング萌えの原点。
天真爛漫元気少女とクールツンデレ少年カップリング萌えな方は読んでも絶対損はないかと!


華不魅「鉄錆廃園」 

伝奇SF風味な本格ハイファンタジー、天使や魔物、幻獣、古代神話(特にシュメールあたり)がお好きな方へ。
これはねえ……少女漫画でも少年漫画でもない、いわゆるウイングス系というしかない作品なんですわ。
高河ゆんとかCLAMPとか我々世代のオタクの必修科目的なアレ(わかる人にはわかるはず)。
絵柄がちょっと癖があるというか硬質な感じなので、読む人を選ぶかもしれない(でも個人的にはあまり古さを感じない画風だと思う)。
基本的にはシリアスなストーリー展開だけど、人間も魔物もキャラクターの個性がとにかく立っているので、彼らの軽妙なやり取りには笑えるところも多々ある。
あと、漫画としての見せ方が抜群に上手い。さながら詩情あふれる映像作品のような雰囲気とスケール感。
あくまで絵で魅せて説明的じゃないのも映画っぽいかも。
個人的には、うるさくないかつくさくないモノローグのスタイルを学んだ気がする。
緻密な織物のような架空の一大叙事詩なので、なんかとにかく別世界にどっぷり浸ってみたい時にオススメ。
何しろ膨大な数のキャラクター(人間、魔物、幻獣的なものまで)が出てくる群像劇なので、誰でも必ず一人や二人や三人はお気に入りができるかと。
気になるキャラができたら、そのキャラの生き様を追うという読み方もできる。
みんなホントにいろんなものを背負ってるんだ……ファンタジーとはいえ、というかファンタジーだからこそ表現できる人間らしさと言える。
ちなみにこの作品、普通のコミックスだと全6巻、比較的最近出た豪華愛蔵版だと全4巻。
超長編というわけでもない……というか、長編というより中編?くらいなのに、構成力と読み応えがホントにすごい。
体感時間というか、キャラたちと共に時代を旅した感があるというか。
作者さんの闘病期間に連載中断したりしたけど、快復後にきちんと綺麗に終わらせてくれたので、安心して一気読みしてください!


竹宮惠子「私を月まで連れてって!」

少女漫画好きだけでなくコアなSFファンにもオススメしたい、近未来SFラブコメディの傑作。
作者はいわゆる24年組として知られる竹宮恵子先生。
代表作のハードSF漫画や少年愛漫画に比べると知名度は低いかも?ということで紹介しておこうかなと。
なんといってもこの作品の魅力はキャラクター!
主人公ダンはNASAのエリート宇宙飛行士、26才の独身貴族。対して彼の恋人、ヒロインのエスパー少女ニナはなんと御歳9才!
その歳の差17才というなかなか攻めたカップルなのだ。
未来世界だから許される……というわけもなく、2人が恋人同士なのは基本内緒。
だって17才差というだけならまだしも、9才のニナが成人男性と付き合うのはヤバすぎる。普通にロリコン案件だ。
「おまわりさんこっちです!」と即ダンを通報したくなるところだが、ちょっと待ってほしい。
そもそも親子ほども歳の離れたダンとニナがいったいどうやって恋人同士になったのか?
もちろん、素敵なSF的胸キュンエピソードがちゃんとあるのですよ!
さらにダンとニナを取り巻くキャラクターたちも、みんなとびきり個性的で面白い。
この作品、基本はオムニバス短編集でノリとしては海外ドラマのシットコムみたいな雰囲気。
しっかりコメディしてて読みやすいんだけど、一方でめっちゃちゃんとSFもしてて読み応えばっちり。
読んでると、竹宮先生のSFへや映画への造詣の深さに唸らされること間違いなし。
個人的に好きなのは、ブラッドベリの「何かが道をやってくる」、映画「シャイニング」のパロディエピソード。
あと、宇宙の果てからのメッセージみたいなちょっと切ないお話もすごく好き。
とはいえ、元ネタがわからなくてもちゃんと面白いのでご安心を。
とにかく、1話ごとに情報量がすごくて、同じ漫画とは思えないほど話によって雰囲気も変わる。
次は何が出てくるんだろう?というビックリ箱的な楽しさ。
上質はコメディが読みたい人はぜひご一読を〜。
ちなみに、「Fly Me to the Moon」というジャズの名曲を知ったのもこの漫画のおかげ。


黒田かすみ「Vice」

海外クライムサスペンスドラマまたはハーレクインロマンス、あるいはその両方がお好きな方に(って、あれ?少し前に見た時は画像あったのに、なくなってる!しょうがないので、同じ作者さんの別コミックを……でもこの中にViceシリーズの1作目も収録されてます)。

この作品は女性向けゴルゴ13と言っても過言ではないほどハードなアクション漫画なのだけど、作者が両方大好きと公言してるのである。
そして、実際作品を読むとめちゃくちゃ納得してしまうのである。
主人公は裏社会で暮らす凄腕の殺し屋。北欧系の美形、一見長身細身の赤毛の優男……ただし、実は女性。
この設定だけ聞くと、あーはいはいいかにも漫画だよね〜なんて思われるかもしれない。
が、とにかく一見は百聞にしかず、つべこべ言わずにこの漫画を読んでみてほしい!
シューマッハ(本名マリア)の強さ(身体メンタル共に)、潔さ、カッコよさはそんじょそこらの男じゃ絶対敵わないほどで性別問わず惚れてしまうこと間違いなし。
そんな彼女の押しかけ相棒が、黒髪のラテン男・エドガー。
ナンパな女好き、おちゃらけ者の三枚目……と思いきや、実は彼には壮絶な出生の秘密がある。
北国生まれと南国生まれ、何もかもが対極な2人。一匹狼体質のマリアは、最初はエドガーをとにかく鬱陶しがるばかりだったけれど、いつしかなくてはならない相棒と認め、さらに男性としても意識し始めるように……(この辺りの展開がまさにハーレクイン!)。
何しろキャラクターの設定が死ぬほど作り込んであるおかげで、リアリティがすごい。
ヨーロッパ、ラテンアメリカそれぞれの裏社会、その中で始末屋として生きてきた元軍人のマリア、血のしがらみから逃げるように三枚目を演じ続けてきたエドガー。
シリアスなんだけど、相棒としての2人のやり取りはまさに海外ドラマの掛け合いそのもの、テンポがよくて笑ってしまう。
一方で本筋のシナリオは基本よくできたアクションサスペンス。雰囲気としてはタランティーノ映画っぽいかも。
ただ、たまにめちゃくちゃダークでヘビーな話も(まあ殺し屋だしね)。テロリスト絡みの話などは本当に暗澹たる気分にさせられた……。
そういう意味では社会派ドラマでもある。
正直言うと絵のクセがかなりあるので、万人受けはしないかと(私は好きだけど)。
でも画力は高くて劇画っぽいので逆に男性ウケするかも??
いやまあとにかく騙されたと思って読んでくれ〜! 大人のニーズに応えてくれる面白さなのでオススメ!


以上5作品、振り返ってみるとコメディとシリアスの振り幅が大きい作品が好きなのかも。そして、どれもいまだに折に触れて読み返したくなるという共通項も。
たぶん今は電子書籍でも配信されてると思うので、興味を持ったらぜひご一読を〜。

あーついつい語り過ぎてしまった……けっこう大変だったけど楽しかった!(笑)

取材、執筆のためにつかわせていただきます。