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米栗カレンダ

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米栗久三郎による、1日1絵の、日めくりエッセイ。 3歳の「彼」の今日を綴ります。 こどものありようって、哲学だなあ…と思うのです。
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2020年6月の記事一覧

【米栗カレンダ 20200629】哲学的問いかけ

たのしいことって、なに? (幼稚園に行き、帰ってくると、大好きな「ばあばんち」で遊ぶ時間がちょっとしかない。庭で遊ぶ時間もちょっとしかない。 夕方になると、オヤから嫌いなお風呂に入れとか、甘いものはあんまり食べちゃだめとか、ごはんはちゃんと座って食べろとか、何かと「おもしろくない」ことを言われる。 オヤから「暗くなってきたから、おうちに入るよ」と言われて、しぶしぶ庭から上がって来た彼は、麦茶をごっくんしてから、ぽつりと言った。 「楽しいことって、なに?」 この言葉に

【米栗カレンダ 20200628】インディ・ジョーンズ的世界

くらかったけど、こわくなかったのよ! (雨の中、芝生の広場のある公園に遊びに行った。 うちの彼は、ポンチョを着て長靴をはいて、雨の中散歩をするのが大好きだ。自分も子どもの頃、雨が大好きだった。傘を逆さにして雨を溜めてみたり… 遊びに行った公園には人工の川が流れていて、雨が降っても水量が増えず、むしろ水量が減っている。 その川におりて、パパと一緒に歩き始めた彼。石によじのぼり、水草の間を歩き、ずんずん進んでいく……と、橋がかかっていた。橋の下は暗い。 しかし彼は進んで

【米栗カレンダ 20200627】それが君の性格。

おいも、とったのよ。 (彼の幼稚園で、じゃがいも掘りがあった。 泥だらけになって、土の中から芋を取り出す作業…あとから先生に訊いたら、「ひとりだけ、大物狙いでした!」とのこと。 他の子たちは、自分の手で握れるサイズの手頃な芋を手にしがちだったらしい。でもうちの彼は、とにかく大きな芋を探すことに熱中していたらしい。 ドライブをしていても、彼はおしゃれな車よりも、タンクローリーやごついジープが断然好きなのだが、それと関係あるのだろうか…。 いずれにしろ、可愛くて手頃なと

【米栗カレンダ 20200626】3歳の思春期

……食べなかったのよ。 (彼が幼稚園から帰ってくると、オヤは色々と訊いてしまう。 「今日は何したの?」「楽しかった?」「どんなお歌うたったの?」 そんなオヤに、彼は一応の答えを返してくれる。 しかし「「お昼ごはん、おいしかった?」と訊いたところ、 「……食べなかったのよ」 連絡ノートを読むと、そこには担任の先生の文字で「ランチ完食」とある。 「デザート、メロンだったでしょ?」と訊くと、 「メロンだった。」と、リピートで返しながら、もうミニカーでの遊びに集中した

【米栗カレンダ 20200625】満足感。

おはなで、うたうのよ! (扇風機をつけて寝たら、朝になって鼻がつまってしまった彼。 大人は鼻をかむことができるけど、まだ3歳の彼には難しい。 「鼻から息を出すんだよ」と教えたけれど、片方の鼻をおさえてもう片方の穴から息を出すのが彼にはうまく理解できないらしい。(いずれできるようになるさ……)と朝ごはんの準備をしていたら… 「見て!お鼻でうたうからね!」と彼がこちらを見上げる。 鼻歌を待っていたけれど、いっこうにメロディが聞こえてこない。 「お鼻で、歌ってるの? 」

【米栗カレンダ 20200624】僕のバランス

りょうほうたべるのよ。 (夕方、という半端な時間になって急激におなかがすいた彼。 「パン食べたい」と言うので、トーストパンをかるく温め始めたら、 「おにぎりも食べる」とおっしゃる。 とにかくパンを食べればひとまず落ち着くだろう…と思ったオヤは甘かった。彼はさくっとパンを食べ終えると、 「おにぎりも食べるのよ!」と宣言した。 おやつだとしても炭水化物ばっかりはまずいだろう、と、おにぎりと一緒に野菜のお味噌汁と焼き魚を出したら、それも食べる。 結果として、当然ながら

【米栗カレンダ 20200623】たまには言われたい…

「ぐあい、わるくなって。それで、トコトコあるいてきてね。」 (枝豆を茹でた。塩をふって、まだ熱いところを口に入れる。 うまい。 茹でたてのを莢から出して、冷ましたものを3歳の彼におすすめしたところ、彼もまあまあ気に入ったらしい。もっと食べるよね、と莢から出してやると… 「いらっしゃいませ〜、いらっしゃいませ〜、おくすりのお店だよ〜」 といきなりお店屋さんごっこが始まった。そしてすかさずオヤに言う。 「具合悪くなって!それで、歩いて(買いに)来るのよ!」 ぐ、具合

【米栗カレンダ 20200622】諦め…ない。

ままが、おしごとするのがいやだのよ。 (3歳の彼にとって、幼稚園に行く理由は『ママがお仕事に行くからしかたなく』であるらしい。 「きょう、ようちえん、あいてる?」と毎朝オヤに尋ねる彼。 「今日は開いてるよ。」と答えると、 「ようちんのなかが、こわいのよ。ままが、おしごとするのが、いやだのよ」とおっしゃる。 ママが仕事をしなければ、自分は幼稚園に行かずに家にいることができると思っている。ある意味そのとおりなんだけど、それだけじゃないわけで。 ざっと園を見渡してみると

【米栗カレンダ 20200621】危ない橋は、渡らない。

(公園で綱渡りをした。 ロープを編んだ網の上を歩いていく遊具を、彼は真剣な面持ちでゆっくりと足を運んでいく。「時間かかるのよ〜」と言いながらも、最後まで渡り切ることができた。 そう、彼は慎重派。誰かがやっているのをじっと観察して、何度も観察して、やっと自分ができそうだと思ったら、ようやく試してみる。ゆっくり、試してみる。 だから、彼と同じ年齢の子たちがやりたがることに、彼はすぐには飛びつかない。 (どうやってやるのかわからないけど、とりあえず行ってみよう!) という

【米栗カレンダ 20200620】自立心…じゃない。

さいしょから、やりたかったのよ! (洗濯機のスイッチを入れるのも、 バナナの皮をむくのも、 猫の餌をあげるのも、先にちょっと手を入れると彼はお怒りになる。 「最初からやりたかったのよ!」 自分で全部やりたいのだ。 手順というものを覚えてきたので、できることは自分でやりたいらしい。 ……まあしかし。 自立心が芽生えてきた…というわけでもない。 自分で着替えられるのに、靴だって自分で履けるのに手伝ってもらいたがる。なぜならば……興味がないから!!! 着替えをす

【米栗カレンダ 20200619】かっこいいのよ!

めがねをかけてない、ぱぱをかいたのよ。 (幼稚園で、父オヤの絵を書いてきた彼。 基本、眼鏡がないと生活がままならない父オヤなので、彼は「パパの絵を描くのよ」というときは、必ず眼鏡をかけた顔を描く。 が、今回の絵は…… 「眼鏡をかけてないパパを描いたのよ。」 「なんで?」 「かっこいいのよ、かけてなくても。」 ううむ、そうなのか?3歳なりに「かっこいい」と思たの? いやもしかして君、描くのが面倒だったとか…? 可能性はある。 何しろ言葉が達者になってきて、「

【米栗カレンダ 20200618】まだ人間になれていない。

まだ、にんげんになれてないの。 (彼はいま、庭先に来る猫と仲良くなりたくてしかたがない。 前にも書いたことだが、近づくと逃げてしまう猫との距離をなんとか縮めたいと思っている。 この距離が縮まらないもどかしい状況を、彼はちょっとおもしろいと思い始めたらしい。 (幼稚園に行きたくない)そんな朝。ささっとソファの裏に隠れると、 「まだ人間に慣れてないの。にゃおう。」 と言ってオヤとの距離を保つ。オヤとしては着替えてご飯食べて、さっさと出発の準備をしたいのだ。その気持ちを

【米栗カレンダ 20200617】君だけのお守り

ジープがどろのなかをはしるのよ。 (彼が静かに、姿勢正しく椅子に座っている時。 それはタブレットで、ジープの動画を観ている時。 ジープはおもちゃのラジコンカーで、雪の中を、泥道を、濁った川を疾走していく。その様は本物さながらに力強い。 彼は今、そのワイルドなドライブに夢中なのだ。 それを観ている間だけは無言。おしゃべり男子の彼が、3分以上黙る時があるとしたら、ジープの映像か、『大きな古時計』の童謡アニメを観ている時に限られる。 ひとがなにかに強烈に興味を持つ理由っ

【米栗カレンダ 20200616】風を切って

おわったのよ〜! (幼稚園が終わると、開放感でいっぱいの彼。 園庭を出ると、お迎えの車まで全力で走る! まさに風を切って。 「わー」と声を出して、走った勢いでおでこが丸出しになって、 もちろん手はグーで、走る走る。 走るのが気持ちよくて仕方がないから走る。 根っからのインドア派のオヤの目には新鮮すぎる走り方だ。 走って体勢を崩して倒れ込んでもなお笑っているなんて! 誰かと競争してるわけじゃない、ただ走りたい気持ちで走るって、見ているだけで清々しい。 きっと