体幹は【筋力】よりも【機能】
こんな質問を頂きました
掻い摘んで書きますと
『高齢の方でできない動きがある』
『それは寝返りやカラダを起こす動き』
『なぜできない?どうすればいい?』
こんな感じですかね
答えは簡単です
体幹の【機能】がとても低下しているから
タイトルにも書きましたがもう一度
【筋力】じゃなくて【機能】が衰えています
この2つは一緒にしてはダメな言葉です
全くの別物です
✅特異性の原理
筋力と機能は何が違うのかを
理解していくためにも
『特異性の原理』っていうのを
説明しておきます
カラダに課された要求にのみ
カラダは適応する
これが特異性の原理です
トレーニングの原理・原則のひとつなので
具体例としては
スクワットをしても胸板は厚くならない
みたいな例が多いですね
でも、特異性の原理は
トレーニングだけじゃなく
カラダのほとんどの事に当てはまる原理です
僕がよく言う具体例は
日本で普通に生活していれば
英語のLとRの発音は聞き分けられないです
僕はこの聞き分けができないですね
40年以上日本で生きてきて
LとRが聞き分けられないと困るから
聞き分けられるようにならなくてはいけない
こんな要求を課せられたことがない
よって僕の耳の機能はLとRを聞き分けることに
適応していない
だから僕はLとRは聞き分けられない
当たり前ですが全く同じ遺伝子を持った僕が
英語圏の国で生まれ育ったなら
その僕は余裕で聞き分けられます
これが特異性の原理で
課された要求にのみ反応する
ということです
✅衰えとは何か?
質問にあった方は高齢者です
単純に老化でカラダが衰えたから
できないんじゃないの??
こういう考え方をする人もいます
もちろん年を取れば筋力も機能も低下する
これは事実です
でも加齢による衰えではない衰え
こっちができない理由になっている事が
とても多いんですね
この加齢による衰えではない衰え
これがさっきの特異性の原理と大きく関係してきます
それは
元は持っていた機能や能力であったとしても
要求として課されない以上は
それらの機能や能力は低下していく
という事です
要は
人間は必要がなければ
その機能は自ら捨てて閉じていきます
これも特異性の原理です
なので、衰えっていうのは
誰しもが逃れる事のできない加齢による衰えと
特異性の原理により自ら捨ててしまったことによる衰えがあります
✅体幹の機能とは
ここまでを少しまとめると
寝返りや起き上がりができないのは
体幹の『機能』の衰え
そして衰えというのは加齢だけでなく
特異性の原理により自ら捨ててしまったことによる
衰えもある
こうなります
じゃあ自ら捨ててしまったことにより
衰えてしまった体幹の機能とは何??ですよね
『力を伝達する機能』
『カラダを協調させる機能』
この2つの機能がわかりやすいですね
これちょっと面白いですよね
言葉だけで見てもめちゃくちゃ大切そうな
機能ですよね
『これをすてるなんてとんでもない!』
ってやつです
でも捨ててます
言ったようにいくら大切そうなものでも
実際に必要だという要求を課さない限りは
捨てます
もっというなら課してる『つもり』でも
実際に課されていないのであれば
反応も適応もしません
✅みんなが獲得してきた機能
この話をするとたまにこういう方もいます
『私はそもそもこの機能を獲得していないかもしれない』
だから捨てるも何も元から持ってないと思うっていう人がいます
断言します
健常者なら100%獲得してます
とんちみたいな難癖はいりませんよ
100%です
力を伝達させる機能もカラダを協調させる機能も
ちゃんと獲得しています
しかも恐ろしいほどのスピードで
赤ちゃんの時に獲得しています
寝返りからずり這いを覚え
ハイハイをしその後立って歩きます
この時に体幹の『機能』をみんな獲得しています
赤ちゃんがこんな事をし始める時は
自分の体重はもう5kg以上です
7,8kgある事だってごくごく普通
まだ腕や脚の筋肉が未発達の状態で
赤ちゃんはこの重さの自分のカラダを動かさなくてはいけないんです
まだ大した力(筋力)は出せないんだから
上手に力を伝達しなさい
カラダを協調させて力を作りなさい
これが要求として課されるんです
その結果カラダは適応して
体幹の機能を獲得し、上のようにいろんな動きが
できるようになっていきます
だから
『力を伝達する』
『カラダを協調させる』
これらの機能はみんな赤ちゃんの時に
獲得している体幹の機能です
✅ぬるい生活と偏ったトレーニング
みんなが獲得してきたとても大切な機能なのに
残念ながら多くの人が捨てていく事になります
理由は話してきたように
必要だという要求を課してないから
使わない能力だからいらないやっ!
ってポイしちゃったわけです
なぜ使わなくてもいい能力になってしまうのか
①代わりになるカラダの動かし方を覚えたから
②日常生活で必要とされる場面が少ないから
③筋力を求めてしまうから
このあたりですかね
①は四肢(腕・脚)の筋力でカラダを動かす
ってことを覚えてしまいます
赤ちゃんの時にはなかった力が成長と共についてくる
四肢でもカラダを動かせるようになるんですね
四肢での動かし方のほうが優位になってくるのは
若干推論もありますが周りの大人がほとんどそうやって動いてるから、それを無意識的に真似てるのかもしれないですね
四肢でのカラダの動かし方を覚えろっていう
要求を課したわけです
②まぁ、簡単に言えば日常生活で必要な体幹機能ってぬるいんです
当然と言えば当然なんですけど
ある一定の体幹機能がない人は歩けない道、通れない場所、こんな感じのものが至る所にあったら不便で仕方ないですから
体幹機能がなくてもちゃんと大丈夫ですよ!っていう風に世の中がなってます
こっちは使わなくても問題ないから必要ないっていうのが成立してる生活環境に世の中がなってるってことですね
③これは①とも関わってきますが
代わりの動作として四肢の筋力で動く方法で上書きしたのなら筋力を鍛えたら動きやすくはなるんですね
筋力で動くから筋力を高めたらもっと動く!
これは正解です
でもこれは結果的に体幹機能を捨てる事に繋がりますよね
筋肉や筋力に要求を課したわけですから
体幹機能は反応しないし必要ないと見なされるわけです
✅必ずくる衰え
上記のような理由(他にもたくさん)で
体幹機能が低下してしまうわけです
ここで厄介なのはもうひとつの衰え
『加齢による衰え』です
これは誰しもが逃れる事のできない衰えです
特に筋力は50代を過ぎると急激に低下します
これは逃れられないんです
そして更に年を重ねていくと当然もっと
筋力は低下していきます
要は赤ちゃんの時と同じような
状態になるわけです
赤ちゃんはまだ未発達だから筋力がない
高齢者は加齢の衰えで筋力がない
理由は違いますが同じ状態になります
じゃあこの時に
それでもカラダを動かせ!を
やっぱり筋力に頼りますか?
多分、文字通り無理(理が無い)ですよ
だって加齢による衰えっていう自然の摂理に反するわけですから
筋力維持するだけでもすごい事なんですよ
でも、もうその動かし方は破綻してるわけですから
維持しても意味ないですよね
それでも筋力でカラダを動かすということを
要求として課していくことはカラダへの負担にしかならないかもしれません
✅体幹機能を取り戻す
と、なるともう一度赤ちゃんの時に獲得した体幹の機能
一度は捨ててしまった体幹の機能をもう一度取り戻しにいく方が僕はいいと思います
実はもう一度赤ちゃんの動きをやり直してみるってすごくいいトレーニングなんです
だってこれは体幹機能を高めるための特異性の原理を満たしたトレーニングなわけですから
そのトレーニングを赤ちゃんはしたからカラダが適応して体幹機能を獲得したわけです
だからもう一度それをするっていうのはアリです
ただし問題点が2つあります
①いい年こいた大人がジムとか人目のつくとこで赤ちゃんの動きをするのはキツい
まぁ家ですればいいですけど、家族の目もありますしね、こっそり1人でやってください
②単純にできない
こっちの問題の方がデカいですね
試しにやってみるとわかると思いますが
できないんですよ
赤ちゃんみたいに胴体(体幹)が柔らかくぐにゅぐにゅ動かなくて、ずり這いとかやっぱり四肢の筋力でやっちゃうんです
実際にしてみてください
ずり這いや高這いをしてみて腕や脚の筋肉が疲れてパンパンに張ってきたら四肢の筋力でしていて体幹機能があまり使えてないってことです
四肢の力でカラダを動かすっていう要求を課してきていたので赤ちゃんの動きもそっちでしようとしてしまって赤ちゃんと同じようにできないんです
な、の、で!
今回の動画の12:55あたりからの動きを
練習してみて下さい
この動画の大テーマは
体重移動と重心移動の話しですが
12:55あたりからの動きは
要求が課せられた動きなんです
『体幹以外を動かすな』
っていう要求です
これでもう一度体幹を動かすっていう
『機能』を取り戻して下さい
そして上手くできるようになったら
赤ちゃんの動きを真似てみてください
『筋力』じゃなく『機能』がいかに
大切で重要なものかが実感できると思います
大阪市 谷町四丁目
パーソナルトレーニングジム