下流域への正しい落とし方:自治体版③

Aさんは不動産会社Bが事実にない事を伝えていると福祉事務所Cに伝え、その日は家に帰った。

その夜21時頃、不動産会社Bからの着信をAさんは受けた。内容は、相談支援専門員を紹介するというものだった。Aさんは電話番号を告げられ、そこへと電話をした。

そこは確かに一般的な相談支援事業所だった。
Aさんは事の経緯を話すと、相談支援事業所の人からは「あくまで不動産会社Bにはお話は聞きますと言って聞いただけであること。そしてすぐに就労移行支援にいくならばとの前提でないと検討できないこと」を告げられた。

Aさんは更に不思議に思った。
相談支援専門員というのは、先ずサービス利用計画書をヒアリングして作成し、およそ半年単位で見直しを図りながら、どのサービスを利用するかはヒアリング後に本人と相談して決めるものだ。
それも無しになぜ就労移行しか受け入れの検討ができない事が前提になっているのか、そしてそもそも「話を聞いただけ」の状態になぜなっているのか。

Aさんはその相談支援事業所と、これまでの不動産会社Bの言動が異なっていることを確認し、電話を切った。
もしかすると、地域が違えばこんな事もあるのかも知れないと、Aさんは無理矢理自身を納得させ、その日は床についた。

そして、2人いると不動産会社Bが言っていたが、2人目は存在しなかった。

その翌日、Aさんの転出元へ不動産会社Bから「Aさんが相談支援事業所とトラブルを起こしたので、障害福祉サービスが予定通り提供できなくなった」と連絡がなされていた。

転出元は事情を知る由もなく、Aさんに対しての心象は悪くなった。

Aさんはここで、責任の追及よりもまず、医療体制が受けられる最低限の手続きを自分で行う事を優先し、役所での手続きに奔走した。
しかし、生活保護の移管作業が終わるのがおよそ半月先で、それまではサービスは利用出来ないし、障害者手帳も転入先のものへ更新できない。そして生活保護の地下鉄等の交通費減免なども移管作業終了まで受けられないことをAさんは知らされ、愕然とした。

医療や障害のサービスが無いと生活すらままならない。責任の所在よりも命が最優先だというのに、既にたらい回し状態にあり、責任を他のところに投げるドッチボールの様な状態にAさんは打ちのめされた。

それは土地柄なのだろうか。その間にもし失われる人命があったら、それはもう手遅れではないか。

Aさんは福祉事務所Cへ相談したがケースワーカーと課長の答えは一貫して「それはあなたのことだから」とAさんの話を聞くことは無かった。

この記事のタイトルが、自治体版と銘打っているのも、ここから関連してくることが多い。

さながらノンフィクションのように書いているが、最初に述べた通り、この物語はフィクションである。
それが実際に起こった出来事かについては、言及しない。フィクションなのだから。比喩であり、例えである。

つづく

©心瑠華 へべれけ


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