「原付に乗った王子様 2」

「広い家」
「そんなことないよ」
お酒を片手に、そんな他愛もない会話をした。ああ、いつ帰ろうかな、と思いつつも、少しどきどきしている自分もいた。
「ちょっとこっちにおいで」
「え、まあ、うん」
ハグされた。その体勢のまま会話が続けられる。もうだめだ。どうにでもなれ。結局そのままベッドへ入る。
「私、こういうことするの初めてなんだけど」
「大丈夫、優しくするから」
そういう問題じゃない。
その日から理由をつけて家に呼ばれ、いわゆるセフレになった。
あーあ、終わった。私の初めてはセフレに奪われてしまった。
この関係を終わらせたいと思いながらも、一人の寂しさに耐えきれずに結局家へ向かってしまう。でも行くまでも、行った後もなにをしているのだろうと一人罪悪感に苛まれていた。断り切れない自分の不甲斐なさから泣きながら歩いて帰ることもあった。

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