「原付に乗った王子様 4(完)」

なんとなく、わかっていたことだった。彼の私を見る目や顔つきがそのことを物語っていた。私は迷った。彼は悪い人ではない。それどころか、とても優しくて、おもしろくて、素敵な人だ。でも私は彼のことを友達としか思っていなかった。突然の出来事に驚いて何も答えられないでいた。
「えっと、でも、私、友達としか思ってなくて。
 もし、付き合ったとしても、サークルの人たちがどう思うか、、」
たくさんの言い訳が口から次々と出てくる。しばらくそんな言葉を繰り返して二人で謎の話し合いが始まった。トイレに行った友達は、このことを知っていて待っていてくれているようだった。私は自分に自信がなかった。この人ともセフレになっちゃったら、という不安もあった。でも、勇気を出して告白してくれたことがとても嬉しかった。長い長い話し合いの末、お付き合いをしてみることになった。「してみる」だなんて今思えば何と失礼な言い方。それから、セフレには「彼氏ができた、もう連絡しないで」と伝えて関係が終わった。

彼は、私の家まで原付に乗って会いに来てくれる。車に乗って迎えに来てくれる彼氏もいいけれど、原付に乗って迎えに来て、一緒に歩いて帰る。そんなのもいいじゃない。絶望していた私を地獄からすくい上げてくれた彼は、白馬に乗った王子様ならぬ、原付に乗った王子様だ。

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