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木工スケッチ(2)

過去に作っていたモノのうちブログに載せていたモノたち。今は作っていないかあるいは作れない。


糸巻

糸巻き。改訂版。カバザクラ製。
以前につくった糸巻きの改訂版。
見た目はほとんど変わっていない。

前のバージョンを買ってくれたとある主婦が,
「敷き詰められるのかと思った」
などと言うもので,
(そう思うもんなんか)
とか思った私がさっそく寸法を変えて作り直したもの。

木口(こぐち)の面積の割合が大きいのでほっとくと割れやすい。そこでかなり薄めたウレタンラッカーを含浸させたうえで,オイルフィニッシュをしている。


指輪ラダー

指輪。ブラックウォールナット。一部金色で彩色。
ブラックウォールナットの焦げ茶と金色は相性がいい。
さらに黒檀(コクタン)ほどに真っ黒な材になってしまうと,銀色なんかがシックであいそうな気がする。


皿立て

皿を立てる台。ケヤキ製。お皿を立てて飾るためのもの。
当初台部はフェラーリを意識した。
まあそれはともかく,かっこいいのを作ろうとは思った。

ケヤキという材は特に薄く細く加工したときに暴れやすくてタチが悪い。前回、背板を厚さ12mmで作ったところ仕上げた途端に反りが出たので大いに私の怒りを買った。

なので今回は背板の厚さを3mm増やし全体を小柄にしたのでずんぐりとした印象になってしまった。厚くしたところで反りが抑えられるわけでもないのだが,お互いに牽制しあう様々な向きの内部応力が増えるのでややマシにはなる。
で,実際に皿をおいてみると,みんな見えなくなるので台なんかどーでもいい事がわかる。


彩色積み木

彩色した積み木。いろいろな材。アクリルで彩色。
端材利用の積み木類などについては、手間を掛けている割には,
「なんで一個300円もするの?」
などと辛らつな事をいう客がいたりするので,私は落胆のあまり左のこめかみの鈍痛が止まらない。

それはともかく,こちらの手間と客の評価がずれてる事は把握したので,ひとまず彩色してみた。
ドールペイントなどに使うアクリル絵の具を使用した。


これは,自然素材を謳っている工房としては舌打ち案件になるが,売れてくれない事にはカップ麺すら買えないわけだし,なにしろメーカーの色つきオイルはバカ高いので何色も揃えるには私は臓器を売らねばならないだろう。

カップ麺が買えるようになっても消化する臓器が失われていては元も子もない。

アクリル絵の具は乾きさえすれば,水には溶けないはずなのだが,幼児が口に入れたらどうなのかよく分からない。なので,この彩色積み木についてはもはや幼児のおもちゃとするのは難しい。大人がちょっとした置物にでも使ったらどうだろうと思う。
私の知る限り,大人が積み木を齧り散らす事は,ないからである。

私が以前、ダイエーの地下食品売り場を徘徊し片っ端から試食品を口に放り込んでいた時のこと、勢いよく放り込んだソーセージがパーフェクトにナマであった事がある。
私はそれを口から出して元に戻すべきであったが,精神的に武士であったため羞恥心が許してくれずついに嚥下してしまった。
大人がナマのソーセージを食べちまうのはよくない。


トグルマンプロトタイプ

突発的に生まれたトグルボタンのコビト。梅とカバザクラ製。

おそらく私は病んでいるか疲れている。


指輪三角文

指輪。ブラックウォールナット製。三角文。
指輪の紋様は三角文とか呼ばれていて,古墳内部の壁画などにたまに描かれている。
古代人が墓なんぞに描いたぐらいだからもちろん呪術的な力を秘めていて,ためしにこれを身につけてみた私は左のこめかみの鈍痛が止まらなくなり,夜中にふくらはぎが引きつれて悲鳴と共に起きあがり,ロトくじで3000円が当たって,
「カップ麺を食べるのをやめよ」
という天啓を聞いた。
コーヒーを飲み過ぎているとも言われた。


指輪ナット

指輪。ナットに似せた指輪の改訂。ブラックウォールナット製。
もうちょっと角ばったストロングな印象のヤツは軽井沢で売れた。
小学校3,4年ぐらいと思しき女の子がトコトコとやってきて指にはめ,私の方に差し出したので,母上にでも買ってもらうのかなと思っていたところが,自分で代金を支払ったうえでさっさと立ち去ってしまった。
やはり特殊な土地なのだ。

シビリアンコントロールというのは・・・

まだ軽い子供の髪の毛をフワフワさせながら立ち去っていった女の子を眺めながらそのような考えに耽っていた。なぜだか。


トグルマン2代目

トグルボタンのコビト。改訂版。梅,カバ製。
拾った梅の枝で作ったボタンが人の顔に見えるというおばさまが後を絶たないので,このような事になったのである。
前、突発的に作ったヤツについてはひょろひょろの手足をみていたらなんだか怖くなってきたので末端部を付けた。トグルボタンなのでトグルマン。


組木のパズル

六つのピースの組み木のパズル。ブナ製。
このような物が,江戸時代からあるらしい。
図書館の本に載っていたと記憶している。だから骨董市で紐に括られたこぎたない木切れを見つけた時に私はピンときた。骨董屋の主人はこれが何なのか知らぬと言っていたので、
「なんなんすかねぇ、汚い木切れですねぇ」
とか言って余計な詮索が及ばないうちに買い取った。
出来上がりの形が分らなかったので,組むのには数日かかった。
寸法精度を目いっぱい上げて新しく作り直してみたら、雨の日に固まって動かなくなってしまった。やや緩めに作るのが良い。


クスノキ

近くの山の中に大きなクスノキが生えている。関東では一番大きいらしい。
クスノキは照葉樹の仲間で本来はもっと暑い地域が植生の中心である。肉厚な、蝋を塗ったような照りのある葉には水分の蒸散を抑える役割がある。
クスノキを含む照葉樹林帯の分布は日本から遥か南の方へ広がっているが,これは共通の特徴をもった古代の文化圏の広がりに重なっていると以前に読んだ民俗学の本には書かれていた(気がする)。

先史時代,沖縄や小笠原,更に南太平洋の島々を巡る人とモノの往来は,私たちの想像を超えて頻繁だったとの話なのだが,太平洋みたいなだだっぴろい所を渡るのには丸木舟を使っていたそうだ。なにせ丸木舟は沈まない。一方遣唐使の船なんかがよく沈んでいた事を考えると,稚拙な技術で構造船をこしらえる方が余程危ないのだろう。

巨木となるクスノキは,見るからに丸木船を作るには,具合が良さそうだ。
古事記にも,スサノオノミコトのアドバイスとして,クスノキを船に使えとか,マキを棺桶にとかヒノキを宮殿にとか親切に記してある。

クスノキのクスは「奇す」で,古い時代この言葉には「まれにみるほど優れた」とか「霊妙な」とかいったポジティブな意味合いがあった。
クスノキとは,そのような木であったのだ。


木の栞

木のしおり。ガッツ星人ぽい。ナラ製。漆仕上げ。
ナラの薄い板が少しだけ余っていて,私の気分が沈んでいた時に,なんとはなしに鉛筆で描いて切り抜いて作った。
冴えない感じだったので,漆を塗った。
こんなものが売れるとは,正直思っていなかった。
ガッツ星人というのは昭和のウルトラマンに出てくる敵役で別にガッツがあるわけではない。


流木バターナイフ

流木で作ったバターナイフ。漆塗り。
多くの木工家がバターナイフを作る。
展示会がある時。極めてヒマである時。まれにに乏しいゲイジュツ的感性が疼いた時などに木工家はバターナイフを作る。
同じような心境でペーパーナイフも作られる。

それはそれはたくさんの人が作るのものだから,もはやデザイン的には出尽くしていて,独自のというのはもう無理なんじゃないかと思う。
無理やり独自色を出そうとすると使いづらい物が出来上がる。

だから私は流木を素材にして、安いステンレスのバターナイフの形そのままに作った。
ステンレスみたいに細くしたらすぐ折れた。
いくら漆で塗り固めても木の強度には限界があるという事。

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