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人の話を聞かない人

「それも老化現象なんじゃない?」
Kちゃんがいった。
なるほど。それは思いつかなった。けど、本当にそうかもしれないな。
と、思ったので書いておきます。

             ★

キイロちゃんはおしゃべりが大好き。
身の回りに起きた楽しいこと、楽しくないこと、驚いたこと、ときめいたこと、仕事のこと、プライベートのこと、家族のこと、友だちのこと、
どんな話もエネルギッシュに語ってくれる。

キイロちゃんはおしゃべり好きなだけじゃなくて、話がとっても上手。
だから自然と、輪の中心はいつもキイロちゃんになっていく。
ふたりでも、3、4人でも、5人、6人、7人、8人……
人数に関係なく、誰といても、キイロちゃんはみんなの真ん中。

キイロちゃんは話が上手なだけじゃなくて、
話を聞いているみんなの様子にもとても敏感。
話の内容がわからない人には、丁寧に説明をしてあげて、
そこにいる全員が、キイロちゃんの話についていけるように配慮する。

キイロちゃんは周りに配慮するだけじゃなくて、
質問にもちゃんと答えてくれるし、
キイロちゃんと違う考え方の人にも耳を傾ける。
だからみんな、キイロちゃんの話を聞くのが楽しいし、
多くの人がキイロちゃんとおしゃべりしたいな、と思っている。

そんなキイロちゃんに会う機会が減って数年。
あの軽快なおしゃべりが懐かしくなるころ、
ある集まりでキイロちゃんにばったり再会した。

キイロちゃんは相変わらずみんなの真ん中で、
エネルギッシュにおもしろい話を繰り広げていた。

「それでね、あんなに楽しみにしていたのに、
やっと手に入ったあのお菓子、食べてみたらちっとも……
美味しかったのは、トッピングのイチゴだけ!」

いま話題の有名なお菓子を、
ある人にいただいて喜んだはいいけれど、
食べてみたら口に合わなかった、がっかり。という話らしい。

みんなが笑いながら「そんなもんだよね」とか
「あのお菓子を食べたっていうだけでもすごいよ」とか
いっているなか、ピンクちゃんがぼそりとつぶやいた。

「私は美味しかったけどな」

小さい声だから、みんなには聞こえなかったかもしれない。
でも、ピンクちゃんの隣にいたキイロちゃんには
聞こえていたはず。

キイロちゃんはピンクちゃんのつぶやきには答えず、
なぜか急に、ピンクちゃんに背を向けた。

そして、まるで何も聞こえなかったように、
そのお菓子がいかに美味しくなかったかを、
おもしろおかしく語り始めた。

「ねえねえ、ピンクちゃんは美味しかったんだって」

近くにいたベージュちゃんが、
ピンクちゃんを代弁するようにキイロちゃんに言った。

キイロちゃんはベージュちゃんの声を振り切るように
さらにエネルギッシュにお菓子の話を続けた。

ピンクちゃんとベージュちゃんは一瞬顔を見合わせて、
「だめだこりゃ」
という表情を浮かべた。

キイロちゃんは自分の話が終わるまで、
ピンクちゃんとベージュちゃんを見ようとはしなかった。

自分の話に笑ってくれる人、乗ってくれる人、共感してくれる人たちと
にぎやかなおしゃべりを続けるだけだった。

話が上手で、周りの人の反応に敏感で、配慮ができて…いたはずの
キイロちゃんは、変わってしまったのだろうか?
自分の話を遮る意見には、耳を貸さなくなってしまったのだろうか。

せっかくおもしろい話をしているのに、
話の腰を折るな、というのはわかるけれど、
ピンクちゃんの感想は、
決して腰を折るようなタイミングではなかった。

「自分の話」だけしたい。
話の邪魔をする人は無視。
反対意見には耳を貸さない。
そんなおしゃべりお〇さん、よくいるよね?

キイロちゃんはいま50代。
どうかそっちの道には行かないでほしいです。















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