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8 まず為政者が心を和らげよ

 このように十七条憲法と武士道の繋がりを見いだしていることから、
各条に武士道の徳目を照らし合わせてみました。
 これまでにない憲法十七条の読み説き方であるため賛否があるかも知れませんが、新たな視点として受け止めていただければ幸いです。
 なお、憲法十七条は仏教なくして成立することはありませんでした。
 そして、憲法十七条が仏教と深い関わりにある以上、当然ながら武士道もそうなります。
 仏教の本質は「慈悲」であり「怨親平等」です。武士が敵兵であっても手厚く葬るのは、命、生けるものすべてに対する慈しみがあり、怨親平等の心があるからです。
 たとえ敵でも同じ尊い命と思えば、それが失われたことに対して怨みより悲しみを抱くようになるのです。
 ここに、「和」の本質があります。
 武士道が究極の平和主義といわれる由縁もここにあります。

「和」を宣言した第一条を私なりに意訳してみました。


 それぞれが心を和らげて協力し合うことが貴いのであって、むやみやたらと反抗したり、対立したりするのは無益だ。
 ところが人というのは派閥やグループをつくって群れたがるもので、
物事を私心なく平明に見ることができる者は少ない。
 ゆえに親や上司など従うべき人に従わなかったり、周囲の人々と少し意見が違うだけで争い合う。
 これでは調和するわけがなく、平和は遠のくばかりではないか。
 けれど、まず上の者が心を和らげ、下の者も仲睦まじくして、
 おだやかに話し合うことができたなら、さまざまな事柄は自然と道理にかなって解決していくことだろう。
 このように和を目指していけば、どんなことだって成し遂げられないことはない。

 この内容を読まれて、今こそこれを実践すべきだと感じる人は少なくないはずです。特に、まず上の者、つまり為政者が手本となるべき行動を示していくこと、これは深く納得せざるを得ません。
 

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