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用の美と、母の手と

用いるにつれてうつわの美は日増しに育ってくる。
用いられずば器はその意味を失いまた美をも失う。
その美は愛用するものへの感謝のしるしである。
日々用いられる時、器は活々と蘇ってくるではないか。
その悦びの情を器にことよせて人に贈る。
品物の真の美は用いられた美である。

『工藝の道』柳宗悦

飾られてひたすら見るもの眺めるものにも
もちろん美しさはあるけれど
美とはもっと奥深く多彩なものであることを
もしかしたら私たちは
見失っているかも知れません。
たとえば、老いた母の手。
それは皺ばんで節くれだっていたとしても
その手は家族のために労をいとわず使われたがゆえの
美しさが見えてくるのです。
家事を忘れたような手は確かにきれいだけれど
母の手は言葉にならない美しさが、あった。
懐かしい、母の手。
今はもう触れることのない、小さくなった手。


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