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夏仕舞い

朝、寝ていられないくらい大盛況だった蝉たちが
もう私を起こしに来ない。
日が高くなってきても
聞こえてくるのは秋の虫の声ばかり。
8月最後の日
木々の緑に翳りが見えている。
どの季節にも終わりがあるはずなのに
夏ばかりが、なぜこうも際立つのだろう。
それは静けさとともにやってきて
深い安堵と一抹の寂しさを刻印する。
うだるような暑さに
あえぐように過ごしていた日々が突然遠のいて
毎回、私を驚かせる。
この夏、あなたはどんな想い出をつくりましたか。
不意に誰かに問いかけてみたくなる。
私は、どんな想い出をつくったのだろう。
特に、何も?
いえ、この日々
この日々がすべて想い出です。
ずっと後になって想い出すことは
いつだってどうということもない些末なものばかり。
いつの日かこの夏の小さな出来事を
私はてのひらに乗せて慈しむのだろう。

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