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マサが旅立ち意気消沈するお滝。追い打ちをかけるように二日後に大嵐が肥後を襲った。強い風がこれでもかと大粒の雨を打ちつけて来る。そのすさまじさは二階が吹き飛ぶのではと思われるほどであった。お滝とお桐は一階の座敷で身を寄せ合い息を潜めて嵐が過ぎ去るのを待った。
身振り手振りの会話でどう転んだか、 「金山寺味噌を琉球の王様へも差し上げろ。取り計らってやる」 と丸い目の船乗りたちは言い始めた。酔っぱらいの戯言で実現可能かどうかなんてわからないけれど、大友のお殿様に献上したのだから不可能ではないかもしれない。どうせやるなら手渡したいし、どんな国か見てみたい。マサは琉球へ行くことにした。
御船に住み始めて二年が経った。笑うように花が咲き、芽吹いた新緑は茂り出すのを今か今かと待ち構えている夏の初め。長崎へ荷を運びに行ったマサが五日たっても帰ってこない。いつもなら三日で戻って来るのに。何かあったのではと心穏やかではいられないお滝は川へ下りて荷運びの先頭を捜した。マサの乗る船の先頭は見つからないが、ほかの船は停まっている。