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梅すだれ

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恋も仕事も頑張る江戸女子、お千代の物語!ですが現在、猿彦や松之助など天草の隠れキリシタンのストーリーから、雑賀の国の物語が展開中。
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2023年3月の記事一覧

25-4 梅すだれ 紀国雑賀

翌朝はげん爺の言った通りに隣の家から粥をもらった。隣りの一家は十五年前に近江から越してきたそうで、外から来たタカベたちに好意的だった。

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25-3 梅すだれ 雑賀

おふみは店の前の坂ではなくて、店の裏の畑の横にある坂を上った。紀ノ川と雑賀川に挟まれたこのあたりには村が八つある。これをまとめて雑賀荘という。げん爺は雑賀壮の西の端にあるこの村の頭をしている。

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25-2 梅すだれ 雑賀

店には数人食べている客がいた。ハモは慣れた動きで座敷へ上がると、 「めしやめしや!この子たちにも腹いっぱい食わせたってくれ」 と叫んだ。その声に呼ばれておひでと呼ばれる女が茶を持って来た。そして「見かけへん顔やなあ」とタカベ親子を眺めまわした。

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25 梅すだれ 雑賀

雑賀には夕暮れ前に着いた。荷下ろしが始まる前に荷物庫にいる娘二人を外へ出さなければならない。タカベはすぐに荷物庫へ行った。昨日と同じように二人は荷物庫の隅に座っていた。昨日は「父ちゃん!」と立ち上がってきたが、今日の二人はぐったりしている。朝あんなに騒いだお滝もうつむいたままだ。こんな暗いところに二日も閉じ込められていたのだから無理もない。二人を不憫に思うタカベの心は痛んだ。

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