長編時代小説「梅すだれ」で創作大賞2024!其ノ弐
一向に立ち直る気配のない駄目幹助とは裏腹に、お千代は精神的に急成長を遂げていった。お守りにとどまらず、クリの着物の刺し子も買って出たのだ。すくすく育つ麻に子どもの成長をかけて、どの家でも赤ん坊には麻の葉模様の産着を着せる。まだまだ針を刺すことに慣れないお千代だったが、赤ん坊の刺し子の定番模様である麻の葉の模様に挑戦した。
直線とジグザグの合わせて十二本の線が一点で重なってできあがる麻の葉模様。きれいに交差させるのは至難の業。一針一針、生まれて来たばかりのクリのことを想いなが