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今週のかがく(12/11~12/14)

Twitter(@KonohaLina)で紹介した【今日のかがく】を1週間分まとめたものです。140文字ではご紹介できなかった内容ももう少し掘り下げます。テーマはほとんどTwitterのトレンドから拾っていますので、話のネタとしてお使いください。10分くらいで読み切れるはずです。

12/11(Wed.) 胃もたれ

年末が近づいてきました。忘年会などが重なって胃の調子がよくないという話もよく耳にします。最近はテレビやラジオで胃腸薬のCMを見ることはそれほど多くはなくなってしまいましたが、「胃もたれ」という言葉は誰もが聞いたことがあるでしょう。
年末に起きる胃もたれの多くは、食べ過ぎによって胃とその先の腸に食物が長い時間とどまって、神経が過敏になることで起きるとされています。食物を胃に長時間とどまららせないためには消化のよいものを食べることも大切ですが、宴会が多い状況ではなかなか選んではいられないもの。そこで、詰まるのが問題なら出してしまえというわけで、しっかり便を出すというのも一つの対策にだといえます(とはいえ、下剤を常用することはおすすめできません。)。これまでの研究で、食事がとれない人や嘔吐を繰り返してしまう人への対策として、しっかり排便させるとよいことも分かってきました。便秘は万病のもとですね。

もっとも、胃もたれは空腹時に胃が荒れることでも起きますので、長引くようなら検査を受けるようにしましょうねっ!最近の胃カメラ(内視鏡)を使った検査は苦痛が少なくなるような工夫がされています。鼻から入れる細いファイバーを使ったり、鎮静薬や睡眠薬を点滴で落として眠った状態で検査したりといろいろできるようになっていますから、検査前に相談してみてください。

ちなみに、里奈が胃もたれ覚悟で食べたい脂ものは大黒しめじの天ぷらですっ。

参考資料
1) Norton J. Greenberger. "便秘". MSDマニュアル プロフェッショナル版. Merck Sharp & Dohme Corp.  (参照:11/Dec/2019)
2) 杉村留美子, 笹谷美恵子. 排便状態の評価と食物繊維摂取量との関係. 藤女子大学紀要. 2(39), pp.105-109. 2002
3) 日本消化器内視鏡学会. 内視鏡診療における鎮静に関するガイドライン. 2013

12/12(Thu.) 推し

「推し」は主にアイドル(グループ)のファンの方が使う言葉のようですね。宝塚歌劇団の「ご贔屓」やジャニーズの「担当(~担)」も同じ用法で使われています。グループ内で特定の人がいない/決められない場合は「箱推し」などと表現することもあるとか。もう少し調べていくと「推し変」とか「推し増し」といったものもあるようです。
英語の表現は様々で、割とすぐ思いつく単語だと"favorite"を使った表現もありますが、ネイティブの方に訊いてみると、

My bias is XXX. / YYY is my bias.

といった使い方が自然なようです。
また、前述の推し増しとは少し違いますが、「推し」がいながらも、目を奪われてしまうような存在は"bias wrecker"と言うそうです。"wrecker"は「レッカー車」でおなじみの「レッカー」なので、なんとなくイメージできるでしょうか。「持っていかれてしまう」という感じなのでしょう。

ところで、"bias"には「歪み」や「偏り」といった意味があります。今回は統計学の話題でしたが、バイアスの存在は解析(分析)をして結果を読み解く際に不都合です。俗っぽい話題ですが、たとえば「社会で成功した人を分析した結果得られた共通の特徴」は典型的なバイアスとされています。他にも、自身にとって都合の悪い情報を過小評価する「正常性バイアス」は災害時に話題になることがありますね。
このようにバイアスにはいろいろ種類があり、それぞれ名前もついていて、様々な分野で研究されています。バイアスを完全に取り除いた調査・研究は無理なのですが、研究者や技術者はそれを軽減・緩和したりする方法を日々検討しています。

もうひとつ、stanはベイズ統計学と呼ばれる手法を用いる際の道具(ソフトウェア)のひとつです。ベイズ統計という言葉は聞き慣れないかも知れませんが、高校や大学の教養課程で学ぶ統計学(これを頻度論と呼びます)とは異なる考え方をとる統計学の一つの流派だと考えていただければよいでしょう。まだまだ発展途上の学問領域ですが、人工知能の領域では日常的に使われています。
ちなみに、高校数学で「ベイズの定理」という条件付確率の公式を習った人がいるかも知れません。ベイズ統計学の原点はここにあります。

里奈の推しは…そうですね、強いてあげるなら、ウェザーニューズ社のウェザーロイドAiriさんでしょうか。以前はちゃんと追いかけていました。最近はYouTuberとしての活動(https://www.youtube.com/channel/UCzrw4K7D9Ti3FP8WMTVPImg)もされているそうですね。登録者8万人はすごいです。かに座!

参考資料
1) Urban Dictionary. "bias wrecker". https://www.urbandictionary.com/define.php?term=bias%20wrecker (参照:12/Dec/2019)
2) YouTube

12/13(Fri.) マゼンタ

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マゼンタ(Magenta)は上に帯として載せた色です。Twitterには「少しだけ紫がかった鮮やかなピンク」と書きましたが、伝わったでしょうか。印刷物などを作る方はCMYKのMといえばすぐにお分かりいただけるはずです。そうでなくとも最近は家庭用のインクジェットプリンターのインクにマゼンタやライトマゼンタがあるのでご存じの方は多いと思います。
この色は、紅花を用いた染料である唐紅・韓紅、万葉集の「からくれなゐ(い)」に由来するという資料もありますが、製法自体は異なるのでなんとも言えません。詳しい書籍にあたれば確認がとれるのかもしれませんが、非常勤アイドルのためそこまでの時間を割くことができません。どなたかご存じの方がいらっしゃいましたら教えてクレメンス…じゃない、ご教示ください。

ところで、CMYKのKはBlackではありません(あえて黒といいたい場合はCMYBkと表記します)。Key plate(キープレート)のKです。キープレートとは、輪郭など細部を表現するために作られる版のことで、基本的には黒で刷られます。
なお、三原色とされるCMY(シアン・マゼンタ・イエロー)の混色では完全な(美しい)黒を表現できません。それに、黒は使用頻度が多いですから、インクの重ね合わせでは非効率です。これまでも、黒を表現する際には別に黒いインクを使ってきました。さらに最近のプリンターはこのCMYと黒に加えてライトシアン・ライトマゼンタをインクセットに加えています。4色や6色というのはここからきています。どんどん改善されているのですね。

さて、そろそろ年賀状の準備を始める時期ですね。自宅で作成される方はコンピューターでデザインを作成して、それをプリントする…という作業をしているはずですが、コンピューター画面はRGB(赤・緑・青)、葉書(プリンタ)はCMYKで処理がされます。一応の対応関係はあるのですが、そのまま変換して印刷すると画像の階調の違いで見た通りの色にはならず、くすんだ色になってしまいます。
でも、実際のところはそんなことを考えて使ったことがないという方のほうが多いですよね。それは、ほとんどのソフトウェア/プリンタが自動的に変換の処理をしてくれているからなのです。普段意識することなく使っているプリンターにも、その裏で高度な技術が活用されているのです。
ただし、印刷業者さんに依頼する場合は会社によって対応が異なりますので注意してくださいねっ。

里奈の場合は出版社さん(の担当者の方)がやってくれるので気にしたことはほとんどありません。名刺の印刷をお願いするときくらいでしょうか。

参考資料
1) 韓紅. 東京カラーズ株式会社. http://www.tokyo-colors.com/dictionary/%E9%9F%93%E7%B4%85/ (参照:13/Dec/2019)
2) 色の名前とカラーコード、RGB、CMYKの一覧表. 来夢来人. https://colorname.civillink.net/ (参照:13/Dec/2019)
3) 山口岳志. POD用カラーマネジメントシステムの開発. KONICA MINOLTA TECHNOLOGY REPORT VOL.5. pp.76-80. 2008

12/14(Sat.) ふたご座流星群 

12月14日の深夜から明け方にかけて、ふたご座流星群が極大になります。ふたご座流星群といっても、ふたご座を構成する星からなにか流れてくるのではありません。ふたご座の方向に流れ星の輻射点(ふくしゃてん;飛び出してくる起点になる場所)が見えるため、こう呼ばれています。
このふたござ流星群は1月のしぶんぎ座流星群、8月のペルセウス座流星群とともに3大流星群を構成しています。ただ、しぶんぎ座という星座はありません。かつて壁面四分儀座という星座があり、その名残からそう呼ばれていました。資料によってはりゅう座ι(イオタ)流星群と呼ばれることもありますし、それが標準的な呼び方だった時期もありますが、現在は平仮名の「しぶんぎ座」が正式名称です。
2020年最初の流星群はこの「しぶんぎ座流星群」で、1月4日に極大を迎える予定です。真夜中から明け方にかけてが見頃です。おおよそ北東の方角、北斗七星よりも低いところが輻射点です。前後1日は流れ星が増えるようですので、天気がよければ見たいものです。

ところで、流星群として定期的に起きる流れ星は、「彗星や小惑星のちりや残骸が地球の大気と接触してプラズマ化したもの」といわれています。プラズマとは私たちがよく知っている固体・液体・気体のどれでもない状態です。温度が上昇すると固体は液体に、液体は気体になりますが、さらに温度が上昇すると気体を構成する分子は陽イオンと電子に分かれます(これを電離と呼びます)。ざっくり説明すると、この電離によって生じた気体をプラズマと呼んでいます。もう少し厳密には「プラズマの要件」と呼ばれるものがありますが、詳しく知りたい方は書籍などをあたってみてください。
10年くらい前まで、「プラズマディスプレイ」と呼ばれる大きなテレビがありました。液晶ディスプレイに置き換わってしまったので現在見かけることはほとんどありませんが、もしかしたらまだお持ちの方がいらっしゃるかも知れません。このテレビはプラズマの仕組みを応用しています。

彗星や小惑星のちりや残骸はそれらが通過する経路に散らばっていて、そこを地球が定期的に通過することで、定期的に「流星群」が観測されます。小説や歌詞で「星降る夜に〜」という表現がありますが、実際には流れ星が降ってくるのではなくて、地球が「流れ星の種」のある場所に高速で(地球の平均公転速度は10万km超とされています)つっこんでいるのです。それを地球の中から観測すると、まるで外から突入してきたように見えてしまうわけですね。ちょっとだけ天動説っぽい感じも否めない、面白い表現です。
別の例えをしてみましょう。いま、「自転車」と「ガラス片が散らばっている場所」があるとします。そして、あなたがとても小さくなったとして、自転車のタイヤの中に入れるとします。ここで、自転車でガラス片を踏むのですが、外から見ていると、「ガラス片が散らばっている場所」に「自転車(のタイヤ)」が入っていってパンクした、となります。一方でタイヤの中のあなたからすると、外からガラス片が突然入ってきて、タイヤの中の空気が抜けた、となるのです。これと同じことが宇宙でも起きていると考えるとわかりやすいのではないでしょうか。

参考資料
1) しぶんぎ座流星群. 国立天文台. https://www.nao.ac.jp/astro/basic/quadrantid.html (参照:15/Dec/2019)
2) プラズマディスプレイ. IT用語辞典 e-Words. (参照:15/Dec/2019)

今週もおつかれさまでしたっ!

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