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【詐欺サイト確定】「けしょうすい」という詐欺通販サイトに実際に引っかかってみた


結論

通販サイト「けしょうすい」は詐欺サイト確定

 「けしょうすい」という名を冠する通販サイトは詐欺サイトであることが確定した。
 2023/8/7時点で確認されている「けしょうすい」のURLは以下の2つ。
 うち1つは2023/8/9時点で閉鎖が確認された。

詐欺サイト1

 ttps://chase.atashi.site/
 2023/8/9時点でもサイトは運営中である。
 なお、このサイトに掲載されている電話番号には、2023/8/1の午後15時頃に電話をかけてみたところ、ある女性と繋がった。
 「株式会社山川屋、通販サイトけしょうすいのお電話でしょうか?」と訊いたところ、「違います」と返ってきたため、おそらく一般女性が使っている電話番号を勝手に掲載しているものと思われるが、「けしょうすい」関係者が嘘をついて無関係を装っている可能性も否定はできない。
 また記載の住所は、実際に存在する場所ではあるが、海に隣接した水産会社が存在しており、これも虚偽の情報を掲載しているものと思われる。

詐欺サイト1 トップページ
詐欺サイト1 会社概要(8/4時点)

詐欺サイト1についての追記(8/9)

 詐欺サイト1について、再度会社概要を参照してみたところ、販売業者、販売責任者、所在地、電話番号、メールアドレスが全て変わっていた。
 この記載情報がデタラメなのは間違いなさそうである。
 ちなみにこの電話番号にかけてみたところ、「お掛けになった電話は、お客さまのご都合によりお繋ぎできません。」という音声が流れた。

詐欺サイト1 会社概要(8/9時点)


詐欺サイト2

ttps://consequence.usite.best/
 このサイトは、少なくとも2023/8/7時点では存在していたが、2023/8/9時点で閉鎖しており、詐欺被害の通報が増加してきたか、あるいは一定期間が経過したためサイトを閉鎖したものと推測される。
 詐欺サイト1より早く立ち上がったものとも推測できる。

詐欺サイト2 トップページ


詐欺サイト2 会社概要

経緯

 ここでは、「けしょうすい」という通販サイトが詐欺サイトであることが確定するまでの警察との情報交換、その後の銀行との対応等を時系列順に書いていく。

2023/7/31 午前3時頃 商品の注文

 事の発端はアクセサリー作りを趣味にしようとして、白金のネックレスをネットで探していたことから始まる。
 その中でこのサイト(詐欺サイト1、ttps://chase.atashi.site/)を見つけ、白金のネックレスを含む多様なアイテムが異様に安価な値段で販売されているのを確認した。
 その販売価格はほぼ全ての商品が20,000円前後であった。


購入を試行した商品
商品説明

 Pt850のネックレスの相場は1g10,000円弱で、5.2gのPt850のネックレスは割引前であれば妥当な値段といったところだが、本サイトでは半額以下で売られている。
 この時点で怪しさ満載のところではあるが、もし本物が届けば儲けものだろうというところもあり、ポチってみることにした。

 すると支払い方法の選択の余地なく銀行振込で支払いをするというテイで話が進み、追ってメールが来る旨のメッセージが表示された。

支払い方法の一覧(虚偽)

 ここではクレジットカードや代引きの支払い方法が表示されているが、選択の余地はなかったと記憶している。

2023/7/31 午前10時頃 警察への連絡

 ここで、詐欺サイトについて警察の意見を聞いてみることにした。
 最寄りの警察署に連絡すると、自宅に来てサイトや現況を検分してくれるとの流れになり、これまでの状況を警察に伝えた。
 すると、サイト全体の情報から警察官の方は十中八九詐欺サイトだろうとの判断を下した。
 警察からは、8/9にその後の進展を折返し連絡してくれることとなった。

2023/7/31 午後4時半頃 詐欺師との連絡

 ここで以下の内容で注文確認のメールが届いた。
 この東田 侑子という名前も偽名だろう。

注文確認のメール

 このメールが届いた数分後にメールに記載の口座に振込手続をすると、2回ほどメールでの連絡が可能であった。
 サイトの返品保証についての表記に矛盾が存在したため、その点を質問してみると、核心的な部分には答えずに返品・返金してくれるという旨の返答が来た。


詐欺師との連絡は取れない

 ここでは警察の存在は伝えず、探りを入れる目的で連絡を取っている。

2023/8/1 午後3時半頃~ 再度詐欺師との連絡を図る

 上記やり取りをした翌日以後、連絡の返答や商品の発送について督促する連絡を入れた。
 この時点で既に相手方からの連絡は途絶えている。
 このメールアドレスは「けしょうすい」のサイトの代表メールアドレスなので、おそらくは連絡が来ていることを認識してはいるものの、銀行振込が確認できた購入者からの連絡は無視し、商品の発送もしない、といったフローになっていると思われる。

2023/8/7 午前10時頃 警察から折り返しの連絡

 7/31に警察へ連絡した以後、警察は詐欺被害が発生したと推定して調べを進めており、「けしょうすい」サイト内の内容もデタラメで、詐欺サイトであるとの判断が8/7時点で下された。
 ここからは、振込み先の口座を凍結し詐欺被害者へ返金処理がなされる流れとなるが、警察によれば基本的に口座からは常にお金は引き出されるようになっているようで、口座凍結をしたところでお金がそのまま戻ってくる可能性はかなり低いとのことである。

2023/8/7 午前11時頃 三井住友銀行への連絡

 警察との連絡が終了し「けしょうすい」が詐欺サイトであるということが確定した後、振込先銀行である三井住友銀行の「振り込め詐欺資金返還ホットライン(0120-050-136)」に連絡し、口座凍結や詐欺被害の回復等について訊いてみた。

 三井住友銀行からは、以下の情報の提供を求められた。
■警察に連絡している案件か
■どこの警察に連絡したのか
■振込先銀行の支店名、支店番号、名義人
■振込の日時
■被害者の住所、連絡先

 警察にも訊いたことではあるが、こうした詐欺被害の被害回復については、銀行の方に直接訊いてもほぼお金が戻ることはないとの回答で一致した。
 理由としては、被害回復の仕組みとして凍結された口座の残金から被害者に分配されて割り当てられる仕組みとなっているため、
■当該口座からお金が即座に引き出され、少ない状態である
■当該口座により被害を受けた方が多数である
以上の条件が揃うことが多く、結局回復に充てられるお金は微々たるものになる、とのことである。

 今後は犯罪に利用された口座が凍結された後、組戻しあるいは被害回復分配(凍結された口座から被害者へお金を分配する)が行われるようである。(以下のサイト参照)
https://jp.norton.com/blog/online-scams/netshopping-scam

2023/8/8 午後12時頃 詐欺に使用された口座の凍結

 詐欺に用いられた口座のある三井住友銀行の「振り込め詐欺資金返還ホットライン」より、詐欺に用いられた口座は凍結された旨の電話があった。
 その時点での口座の残金は6000円強であったとのこと。
 このことから、口座振込が確認され次第速やかに現金として引き出されるというのはほぼ確実といえる。
 上記残金から各詐欺被害者へと回復分配がされるわけであるが、この時点で詐欺被害者は7名確認されていた。
 ここで仮に詐欺被害者7名の被害額が同等であれば、被害回復分配の金額は900円程度になると推測できる一方で、今後詐欺被害および被害の問い合わせが増えることも考えると、その回復分配の額はさらに減るだろう。
 加えて、その回復分配の手続きに必要な書類は今から約半年後に送付されるようで、数百円のために時間を取ってその手続きを踏むかと言われれば疑問が残る。
 以上のことより、詐欺被害に遭った際には基本的に被害回復の措置は手間に見合わないと言える。
 詐欺にはまず遭わないことが肝要である。

 また三井住友銀行は、本件の詐欺に用いられた口座は、本人が作った口座を詐欺グループに販売したものだろうと推定した。
 通常、口座、通帳やキャッシュカードを譲渡すること等により口座凍結がなされると、その口座の名義人は各銀行間で共有されているブラックリストに入る。
 このブラックリスト入りにより、日本で名を聞く多くの銀行では銀行口座を開設できなくなることが知られている。
 しかし三井住友銀行によれば、口座の名義人自体は直接的に本件に係る詐欺罪や窃盗罪等に問われることはないだろうとのことであった。
 ただし別件として、自他問わず口座やキャッシュカード等の譲渡ならびに譲受は犯罪収益移転防止法違反の罪に問われる可能性がある。(以下のサイトを参照)
https://www.police.pref.osaka.lg.jp/seikatsu/hanzaisyueki/13559.html#:~:text=%E6%AD%A3%E5%BD%93%E3%81%AA%E7%90%86%E7%94%B1%E3%81%AA%E3%81%8F%E3%80%81%E9%80%9A%E5%B8%B3,%E5%95%8F%E3%82%8F%E3%81%9A%E7%8A%AF%E7%BD%AA%E3%81%A8%E3%81%AA%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

2023/8/9 午後15時頃 警察への情報提供

 8/9の15時頃、警察官の方に自宅へ来てもらい、詐欺通販サイトの状況や銀行とのやりとり等について情報提供を行なった。
 警察からの新たな情報としては、
■サイトに掲載の電話番号からは他の情報と結びつきがなく追跡困難
■サイトに掲載のメールアドレスは匿名性が高い可能性があり追跡困難
■銀行から現金を引き出した人(出し子と呼ばれる)の個人特定は困難
といった情報が得られた。
 つまるところ、詐欺通販サイトは基本的に犯罪者の追跡が困難な形で運用されているようで、詐欺被害者は情報提供以外にすることは何もない、ということのようである。
 見方を変えれば、犯罪者の追跡が容易な詐欺は既に警察によって駆逐されており、現在詐欺被害者を出している詐欺グループは基本的に追跡が困難なものが残っていると言えるのかもしれない。

おわりに

 今回は好奇心と一時の高揚感に身を任せ、詐欺であることが明らかな通販サイトに引っかかってみたが、警察の方からは「自分で引っかかってみる前に相談して下さい」と窘められた。
 それはそう。

 また本件で分かったこととしては、「詐欺被害の泣き寝入りはダメ!」とは言うものの、自分の手元からお金が無くなった、あるいは詐欺被害に遭ったと気づいた時点で実質泣き寝入りをするしかないということである。
 「泣き寝入りNG!」などと綺麗事を言うよりも、「基本的に詐欺は泣き寝入りするしかないからまず引っかからないリテラシーを身につけろ」とでも言って欲しいものである。


 みんなは真似するなよ!


 おわり


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