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認知症の定義を超わかりやすく解説!厚生労働省とWHOとの微妙な違い

各所で違う認知症の定義

「認知症 定義」で検索すると、厚生労働省によるものや、WHO(世界保健機構)のICD-10によるものが目に留まるかと思います。

学術的なところまで掘り下げるとかなり難しいですが、簡単に理解できるようまとめてみました。

ICD(国際疾病分類)とは、WHOが作成した、世界共通に統一した基準で定められた、死因や疾病の分類です。
要は死因・疾病の定義などをまとめたものってことですね。

介護職関連の人は「ICD-10」と認識しているかもしれませんが、2018年6月、30年ぶりに改訂され、ICD-11として公表されました。
30年もあれば医療もかなり進歩したでしょうから、かなり多様的な内容になっているみたいです。
例えば、今やレビー小体型認知症は有名ですが、11になってから初めて記載されています。

厚生労働省で挙げている認知症の定義

厚生労働省による認知症の定義は次の通りです。

認知症とは、「生後いったん正常に発達した種々の精神機能が慢性的に減退・消失することで、日常生活・社会生活を営めない状態」を言います。
つまり、後天的原因よって生じる知能の障害である点で、知的障害(精神遅滞)とは異なるのです。

厚生労働省

WHOで挙げている認知症の定義

基本的な定義については、WHOが作成したICD-10と11で変わっていないので、10の内容を簡単に紹介します。

いったん発達した知能が様々な原因で、持続的に低下した状態である。
認知症とは、通常慢性あるいは進行性の脳の疾患によって生じ、記憶、思考、見当識、概念、計算、学習、言語、判断など多数の高次脳機能障害からなる症候群である。

ICD-10

※実際の内容をかなり簡単な表現にリライトしています。

Wikipediaに書かれている認知症の定義

参考までに、Wikipediaからも引用して紹介します。

認知障害の一種であり、後天的な脳の器質的障害により、いったん正常に発達した知能が不可逆的に低下した状態である。
認知症は、イヌ、ネコなどの人以外にも発症する。
狭義では「知能が後天的に低下した状態」のことを指すが、医学的には「知能」の他に「記憶」「見当識」を含む認知障害や「人格変化」などを伴った症候群として定義される。
これに対し、先天的に脳に器質的障害があり、運動の障害や知的発達面での障害などが現れる状態は知的障害、先天的に認知の障害がある場合は認知障害という。単に老化によって物覚えが悪くなるといった誰にでも起きる現象は含まず、病的に能力が低下して性格の先鋭化、強い承認欲求、理性的思考力衰退、被害妄想を招く症状を指す。

Wikipedia

どの定義を基準にするべき?

厚生労働省、WHO、Wikipediaのどれにしても、核心的なところは全部同じです。
ただ、それぞれ言い回しが違うし、小難しい単語ばかりでいまいちピンときませんね。

専門分野の悪いところです。

で、どれを基準に覚えようかという話ですけども・・・

まあ、どれでもいいです(>_<)

核心的なところは全部同じなので、そこを理解していれば、どの文章で定義を読んでも「あ、同じだね」って気づくことができます。

その上で、一番しっくりくる定義を覚えておけばいいと思います。

定義の核心はこれ!

先述の通り、どの文章を見ても言いたいことは同じです。
ざっくりまとめると、認知症とは次のような意味になります。

人は通常、生まれてからどんどん知能が発達していくものです。
そうして発達していった知能が、病気や怪我などが原因で徐々に低下し、日常生活や社会生活を送るのに支障をきたすようになります。
その状態が長期間続く。言い換えれば「ほっといても治らない、または進行していく」状態のことを、認知症と言います。

長期間とは、おおむね6ヶ月以上という考え方があります。
つまり、認知症のような症状が見られても6ヶ月以内に回復する場合、それは認知症ではなく、「一時的な認知機能障害」という解釈になりますね。

これはあくまでも現状での定義に沿った考え方だと思っていてください。

それぞれの定義を補足解説します

厚生労働省の定義を補足

認知症とは、「生後いったん正常に発達した種々の精神機能が慢性的に減退・消失することで、日常生活・社会生活を営めない状態」を言います。
つまり、後天的原因よって生じる知能の障害である点で、知的障害(精神遅滞)とは異なるのです。

厚生労働省

「生まれつき」のことを先天的等言いますので、後天的とはその反対で、「生まれた後に生じたもの」という意味です。

「知的障害(精神遅滞)とは異なる」というのは、知的障害は、生まれつき知能発達面に障害がある場合に診断付けられるもので、後天的に生じる認知症とは、症状が同じであったとしても全く違うものだと分類するための考え方になります。

WHOの定義を補足

いったん発達した知能が様々な原因で、持続的に低下した状態である。
認知症とは、通常慢性あるいは進行性の脳の疾患によって生じ、記憶、思考、見当識、概念、計算、学習、言語、判断など多数の高次脳機能障害からなる症候群である。

ICD-10

ここがちょっとややこしいところ。
高次脳機能障害とはなんぞや?

「高次」とはつまり「ハイスペック」と思ってもらえれば良いです。
例えば、

  • 触る

  • 持つ

  • 立つ

  • 座る

  • 歩く

などの行為は、脳が身体に出す命令としては基本的な機能です。
対して、

  • 記憶する

  • 理解する

  • 物や人の顔を識別する

  • 目的に合った物の使い方・行動をとる

  • 理性を保つ

といったことは、脳機能としてはかなりハイスペックなんですね。
だから「高次」脳機能というわけです。

結論を言うと、認知症になった方には高次脳機能障害が見られる(場合が多い)ということです。

Wikipediaの定義を補足

認知障害の一種であり、後天的な脳の器質的障害により、いったん正常に発達した知能が不可逆的に低下した状態である。
認知症は、イヌ、ネコなどの人以外にも発症する。
狭義では「知能が後天的に低下した状態」のことを指すが、医学的には「知能」の他に「記憶」「見当識」を含む認知障害や「人格変化」などを伴った症候群として定義される。
これに対し、先天的に脳に器質的障害があり、運動の障害や知的発達面での障害などが現れる状態は知的障害、先天的に認知の障害がある場合は認知障害という。単に老化によって物覚えが悪くなるといった誰にでも起きる現象は含まず、病的に能力が低下して性格の先鋭化、強い承認欲求、理性的思考力衰退、被害妄想を招く症状を指す。

Wikipedia

認知障害の一種というのもややこしいですね。
認知障害とは、同じくWikipediaによると、

健忘、せん妄、認知症などを含む、学習・記憶・理解・問題解決に支障をきたしている状態の事

Wikipedia

とあります。
「認知症を含む」=「認知障害の一種」ということで合致します。

ですが、そう言っておきながら、

先天的に認知の障害がある場合は認知障害という

と、なにやら矛盾した文章がありますね。

Wikipedia上の定義に他の定義が引っ掻き回されるような感じがしますね。
Wikipediaの特性上、仕方ないのかな?

次でちょっと整理しましょう。

まとめ

ここまでで、「認知症」「高次脳機能障害」「認知障害」という3つのワードがあり、それぞれニュアンスが似ているために、読む側は混乱しがちになります。

厚生労働省・WHO・Wikipediaそれぞれの定義で特に共通しているのが、認知症とは後天的に見られる症状群であるという点です。
これは前提として覚えておきましょう。

高次脳機能障害も、基本的には後天的なものであるとされています。
そして認知障害は、Wikipediaの中では先天的と言っていますが、広い意味では先天的・後天的関係なく、「認知機能の障害のこと」と思っていて問題ありません。

一文にまとめると、

認知障害の一種で、高次脳機能障害などの症状群が見られるものを認知症という

という感じです。
もっと言えば、
認知障害>認知症>高次脳機能障害
といったところでしょうか。

さらに、「後天的」は「年を取ってから」という言い換えができます。
生まれて数か月で頭を打って障害が出ればそれも「後天的」ではあるんですが、認知症の定義としては「加齢」が重要なファクターとなります。

認知症には若年性のものもありますが、それでもおおむね40代以上の年齢の人に長期的な認知障害が見られれば、それは認知症であると判断して良いでしょう。

これを基準にして、いろんな検索結果で見られる認知症の定義を読んでみてください。
なんとなく理解しやすくなっているかと思います。

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