水の妖精「スーイ」
はじめまして、こんのみさです。
2000年、次男がまだ小さかったときに公園を歩いていてふと浮かんできた水の妖精「スーイ」
当時から何度も何度も書き直して、やっと第3章まで書き上げることができました。
現在は、その出版と、12月23日にスーイクリスマス編の朗読イベントを開催するために頑張っています。
ここで少しだけ、スーイのご紹介と冒頭部分をお見せします。
私をずっと助けてくれたスーイが、必要とする人のもとへ飛んでいってくれることを願っています。
スーイは軽やかでクリアで温かい水の妖精です。
そして人間が発するむしゃくしゃした気持ちやもやもやした気持ちをキャッチするとすぐに飛んで行って背中に手を置き、スーイに流れる水をその人の身体の中に流し込むことが出来ます。もちろん妖精なので誰にも気づかれません。
4部構成の「スーイ」第1章では、この星に降り立ったスーイが沢山の人々や生き物に出会って成長していく姿を書いています。
第1話である「スーイ春」をお見せします。
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スーイ 春
遠い、遠い空のはて、まだどんなにえらい学者さんでも計算したことがないくらい遠い場所から、ひとつの星が猛スピードで飛んできました。
どんどんどんどん急いでいるようで、だれの目にもとまりません。
そしてその星が地球の大気圏に突入して、見たこともない美しい光をはなって爆発しました。
もし、遅くまで眠れないで窓の外を見ていた子どもがいたら、その星のかけらが見えたかもね。
シューン、ゴトン。
その中のひとつの隕石が、日本のどこかの森に落ちました。
「あーいたたたた。あーびっくりした。」
隕石に乗ってきたのは、スーイ。
小さいけれどしっかり者の水の妖精。
「あー地球に着いたんだ。」
スーイは明けたばかりの空に向かって大きく背のびをして胸いっぱい深呼吸をすると、 やっと着いたこの星を見てまわるために、 長い、長い旅の疲れも忘れて、 いきおいよく地面をけって飛びあがりました。
めざめたばかりの鳥たちもびっくりして、 いっせいに飛びたちました。
チュチュチュチュ、
だれかなー。
ピピツーピピツー、
きっと仲間だ。
鳥たちがさわいでいる間をぬって、 スーイは楽しそうに飛びまわったあと、 引きよせられるように 街のあるほうに向かって飛んでいきました。
公園の上を通ったとき、 ムシャクシャモヤモヤ信号がどこからか発信されていたので、 スーイは急いで水のみ場に降りたちました。
まわりを見わたすとうつむいて花だんの土をけっている男の子がいました。
ムシャクシャモヤモヤ信号は この子から発信されているようです。
スーイは男の子のそばに飛んでいって背中にそっと手をおいてみました。
すると、男の子のこころが伝わってきました。
「さびしい。さびしい。さびしい。
家に帰ってもいつもだれもいない。
そんなこと、友だちにも言いたくない。
ぼくのことなんて、だれも気にしないんだ。」
スーイには、この子の毎日が見えました。
いつも明るくて、家族おもいでお母さんを困らせたくないから「ひとりぼっちがいやだ」なんてぜったい言えない子だったのです。
スーイは男の子の背中においた手から、 自分の体のなかの水をいっきに男の子の体のなかへ 流しこみました。
「さびしいね。
さびしいけど、だれかがかならずあなたのことを
いまこのときも思っているよ。
だから安心して。
楽しくなることをさがしてごらん。」
男の子はふっと顔をあげて、今けっていた花だんに目をやりました。
そこには、ポピーの花が何本かたおれていました。
「あっ、ごめんなさい。」
男の子はすぐに、わざとやったわけではないけどいけないことをしたなと反省しました。
そのとき、てんとう虫が目の前を横ぎりました。
そしてこっちにおいでとさそうようにゆっくり飛んでいきました。
すっかり気をとられてついていくと、 池の上をアメンボウがすべり、 すぐ下にメダカが何匹も同じほうを向いて泳いでいるのが見えました。
その横でオタマジャクシがしっぽをくにょくにょしながら元気(げんき)に泳いでいます。
「あっ、足が出てるのがいる。」
男の子はながめているうちになんだかすごくおもしろくなってきました。
もっとよくまわりを見るとモンシロチョウが2匹でなかよくおしゃべりしながら飛んでいたり、アリがいそがしそうに歩きまわって食べものをさがしていたりするのにも気がつきました。
ふとまた池に目をもどすとコガネムシが1匹、池に浮いてもがいていました。
急いで葉っぱを摘んで池に浮かべ、落ちていた棒きれで葉っぱをコガネムシのところへ近づけました。
コガネムシがどうにか葉っぱに乗るとこんどはしずかにしずかに棒きれで
葉っぱを池のふちによせました。
するとコガネムシはなにごともなかったように 草むらのなかに消えていきました。
男の子は、思わず空を見あげてすっくと立ち、 たくさんの生きもののなかまになったような気もちで胸をはりました。
「こんど、友だちをさそってザリガニ釣りをしよう。」
そう思いたつと、ほっぽってあったランドセルをひょいと背負い、水のみ場の水道の蛇口をいきおいよくひねって口いっぱいにゴクゴク飲んでから
「気もちいいなぁ。」
と言って楽しそうに家に帰っていきました。
そのすがたを見送るとスーイもうれしくなってクルンクルンと飛びまわったあとさっきのポピーを両手で持ちあげてもういちどきれいに咲かせました。
そしてあたたかくやさしい陽ざしのなか、 花だんのチューリップやパンジーに水をあげたりチョウチョウを呼んできたりして、お花の気もちにこたえました。
その日、公園に遊びにきていた子どもたちはいつもよりお花がきれいに見えたかもね。
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