特別な本
先日、実家に帰った時のこと。
立ち寄ったコンビニにて「なんか欲しいものないか?」と母が言ってくれた。私は買うのをちょっと渋っていた『POPEYE』を手に取った。
「これ、いい?」
「いいよ」 買ってもらった。
なんだか久しぶりの感覚だった。たかが1,000円、そのくらい買える。でも買ってもらえるのは特別な感じだ。そしていつも以上にじっくり読み込んだ。何度も手に取った。なんでだろう、なんでこんなにいつもと違うんだろう。
数週間後、またこのPOPEYEを手にとった。
「あっ…」幼少期の頃の記憶が脳内で再生された。幼少期に買ってもらっていた『なかよし』だ。『美少女戦士セーラームーン』や『カードキャプターさくら』など名だたる名作たちが連載されていた、当時大人気だった漫画雑誌だ。
幼稚園児だった私は、母の買い物について回った後、母が会計をしている間に雑誌コーナーへ行き、新刊が出ていないか必ず確認していた。
時に母が買ってきてくれることもあった。買い物を終え、玄関に置かれたたくさんの荷物の中になかよしがないか、よく探したものだ。
当時の私からすると大きくて分厚い1冊だ。両手いっぱいに抱きかかえていたので、本当に大きかった。漫画だけでも分厚いのに、そこにさらに付録がついている。そして太い輪ゴムで留められている。毎月贈られる宝物のような存在だった。
そんな記憶と重なったのだ。
私の家は田舎の更に町外れだったこともあり、友達と遊ぶことが滅多になかった。なので雑誌が一人遊びのための大切なアイテムとなっていた。何度も何度も繰り返し読んでいたので、きっとその頃の感覚が自分の中に生きていたのだろう。母の手から貰うことで、いつも買う感覚とは違う、特別な一冊となった。
本は夢の詰まった一冊だ。特に雑誌は様々な視点で、いろんな人たちがピックアップした情報が詰め込まれている。それをプレゼントしてもらえる喜びって結構でかい。だから自分で買うのもいいけど、できれば誰かから贈ってもらいたい。
下品な気持ちがわいた。
「あぁ〜 POPEYEの年間購読、誰かプレゼントしてくれないかなぁ〜」
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