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「説教しても女性のえり好みする志向は変えられない」と言われる中で

説教で「高望み」を止めさせる事はできない

最近は婚活研究の学術書を読むことが多いです。学術書を読むと、目の前に広がる混沌とした出来事をメタ的に把握することができるのでとても良いです。

それらの本の中で、高橋勅徳先生の『婚活戦略』という本の言葉がとても印象に残ったので、少し掘り下げて取り上げてみたいと思います。

この本には「説教では婚活女性のリアリティは変えられない」というちょっと強い言葉の見出しのセクションがあり、「星野源のような普通の男性」で良いという婚活女性たちの言葉とその反応について、こう書かれています。

婚活総合サービス業に従事する現場の担当者や,カウンセラー,コンサルタントたちが一斉に声をあげた,婚活女性の求める普通の男性像に対する批判は,男性の平均年収の現実を踏まえた上で,1つでも多くの幸せな成婚を実現させたいという善意に基づいている。同時に,その善意は,結婚によって生まれ変わり自分の人生を取り戻したいという婚活女性の希望を諦めろと言っているのに等しい。

高橋勅徳. 婚活戦略 (p.131). 株式会社中央経済社

以前より、婚活女性に「それは高望みです」「地に足をつけて、自分の手が届く相手を選びましょう」とアドバイスする婚活関係者は数多くいました。

高橋先生はそのような「説教」では、妥協することなく良い相手を選びたいという女性のリアリティを変えることはできないと述べています。

そして、たとえそれが善意に基づくものであっても、女性にとっては「結婚によって生まれ変わり自分の人生を取り戻したいという婚活女性の希望を諦めろと言っているのに等しい」と、耳障りな言葉になってしまっていると言うのです。

「生まれ変わる」という表現は先行する学術研究を踏まえた言葉ですので、少しわかりにくいかもしれませんが、「結婚によって人生を大きく好転させること」といった意味になります。

アドバイザーが「高望みをやめろ」と主張するのもおかしな話

また、高橋先生はさらに別のインタビューで、婚活アドバイザーが「選り好みをするな」と”説教”することはおかしいと主張しています。

婚活サービスを提供する会社の方は、「えり好みするな」「現実を見ろ」などとよくお説教をしますけど、それはお門違いだと思います。あなたたちが提供しているサービスが、気力、体力、財力が続く限り、えり好みすることを可能にしているわけですから。少なくともサービス提供をしている側が「現実を見ろ」と言うのはおかしいですよね。

https://woman.nikkei.com/atcl/column/23/081600325/081600001/?P=2

なんとも手厳しいですね。

ではどうすれば良いと思う?

とはいえ、婚活女性が是非とも結婚したいと思うような「ステキな男性」は市場には数が限られていいます。故に、そこにたどり着ける人はほんの僅かしかいません。

「高望みをするな」というのがお門違いと言うなら、婚活アドバイザーの方や婚活女性の方々は、いったいどのような行動を取れば良いのでしょうか?

市場の行き詰まった先にあるものを模索

高橋先生の主張は「(婚活市場は)行くところまで行って破綻したほうがいい」ということだそうです。なんとも物騒な話ですね。

こちらの記事に詳しく書かれているとおり、高橋先生は結婚難を行き着くところまで進展させて、その後に出てくる新しい何かに期待されています。

未婚化・晩婚化に歯止めがかからず、みんな行き詰まっているのに、出てくるのは「身の程を知れ」の説教。なぜえり好みしちゃ駄目なのか?(中略)

それでも、行き詰まった先に、現状を変える道があると思う。極端な話、リファインされたお見合い結婚への回帰。もしくは、少子化を何とかしたい国の責任で制度設計して、それこそAIマッチングで強制結婚させる社会とか。その対極は、結婚にとらわれず男女が好きに生きることを肯定し、少子化を労働力確保と福祉の問題として対応し直す制度設計を目指すこと。こういう選択を迫られる地点まで行かないと、社会は変わらない。

https://toyokeizai.net/articles/-/575843?page=2

面白そうではありますが、社会変革にフォーカスを当てているので、婚活者個人がこれを受けて何か取り組むには少し規模が大きいように感じます。

世間体にとらわれない婚活をする

そのため、私は社会学者の山田先生のこちらの論にどちらかというと親しみを感じています。

山田先生は日本で結婚難が加速している背景に、「年収が低い人と結婚したくない」などのような「世間体」や「見栄」の影響が大きいとした上で、それらから解放された「インテリ」的な結婚のスタイルに希望を見出しています(『結婚不要社会』, p.171)。具体例として以下のような人を挙げています。

  • 月一万円の家賃で離島で豊かに暮らしている人

  • 夫婦二人で赤ちゃんも一緒にシェアハウスで暮らしている人

  • 食費が月1500円という人

これなら、より多くの人たちが(理論的には)実行できそうです。

ただし、山田先生は同時に、これらの生活ができる人は世間体の圧力から強い心で逃れることのできる人であって、多くの人にこのようなライフスタイルが広まるのは難しいと説明しています。

一通り高望みしたあとに自ら止める

最近、結婚相談所さんのアドバイザーさんの中には、本人が希望する人に一通り申し込んでみて、その後に考えてみれば良いと主張する方も出てきました。

筆者も以前「人はどうやったら考えを変えることができるのか」ということに関心を持って調べてみたことがあります。

その時の結論は、まず「変わりたい」という気持ちを持った上で「自分がしていない経験を自分のものにしていかないと、価値観のアップデートは難しい」という事に落ち着きました(下記に影響を受けた記事を載せておきます。記事内で紹介されている書籍も面白いです)。なので、まずは体験してみるという論にはとても共感します。

高望みを貫き通す

一方で、最近では「高望みは変えません、がんばり通します!」という人を積極的に肯定する相談所さんも目立つようになってきました。

「本当に頑張れますか?かなり大変ですよ?それであなたは幸せになれますか?」と、ご入会前に聞くのは、仲人の誠実さである、という事を理解できる人でいて下さい。

「高望みをしても、ちゃんとリスクを取れる、リスクを取ってでも叶えたい。」というのであれば、徹底的に応援します。

https://ameblo.jp/madoka-b2019/entry-12778007305.html

相当な覚悟を持った上でなら、血で血を洗うレッドオーシャンに飛び込むことを応援する。多くの屍を生み出しているという意味では、この論は高橋先生の「婚活界は一度行き詰まった方が良い」という論とシンパシーがあります。(批判しているわけではない)

まとめ

それでは、ここまでの考察をまとめていきたいと思います。

婚活者ができること

まず、婚活者ができることは基本的には「選り好みをやめて条件を広げる」か「当初に設定した条件を貫き通す」かの二通りしかありません。どちらもできないなら婚活市場から撤退することになります。

選り好みを止める場合には、強い理性を持って事前に情報を聞いた時点で辞めるか、当初条件で婚活市場に飛び込んでみて、体験と学習ののちにやめるかの二通りになります。

早く、コストも少なく婚活を終われるのが前者になりますが、どちらの方法を取るにしてもご本人が納得されないと人生に禍根が残ってしまいます。ぜひご自身にとって納得がいく方法を選んでください。

婚活アドバイザーができること

そして、婚活アドバイザーの方ができることは

  1. 理性で条件を広げることができる人のために情報を発信する

  2. 当初条件でまずはチャレンジしてみたい人を温かく応援する

  3. 条件を緩めず徹底的に戦いたい人を積極的に応援する

の3点になりそうです。いずれにせよ、北風と太陽の太陽のように、婚活者さんのご意志を温かく応援する対応が必要になるのかなと思っています。(説教ではなく)

今日は2023年の最後の一日。婚姻数は過去最少を更新する見込みです。その中で少しでも多くの人が幸せな結婚を叶えられますようにと思っています。

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