「ザ・ホエール」(劇場)感想。

「ザ・ホエール」(劇場)感想。
(2023-04-09 TOHOシネマズ西宮OS・スクリーン4)

 ダーレン・アロノフスキー監督、ブレンダン・フレイザー主演で、主演のブレンダン・フレイザーがアカデミー主演男優賞を受賞した作品を遅ればせながら観ました。

少し気になっていた作品ですが、上映後にすぐに観たいって気はなく「観たい映画リスト」の下に入れていたのですが、やはりアカデミー主演男優賞を受賞した事で「観ておこう」と思って観ました。

 辛く苦しい話ですが非常に良かった。やはり主演男優賞を受賞したブレンダン・フレイザー演じる主人公のキャラと演技が見事だったけど、実は彼を取り巻く周りのキャラこそがこの作品の魅力なのだと思った。

離婚して男性同士で愛し合ったあとその男性を喪なって失意のまま太っていった主人公チャーリーをずっと支えてきた友人であり看護師のアジア人女性リズ、分かれた妻の元に居て全く合っていなかった娘との再会、そして布教に訪れてきた若き宣教師。

普通なら、彼らが主人公チャーリーと出会って変化していって、チャーリーもまた彼らと出会って変化していく様子を愛と感動で描くんだろうが、それを一筋縄で行かないキャラ描写と展開にしていたのが深かったな。



※以下、ネタバレがあります。



 物語的には、普通なら主人公の寿命が尽きようとしている中で再開した娘との関係の修復で娘が父親を改めて愛するようになる…的な感動と涙の展開を普通は描くのだろうが、この作品では徹底して娘が父親に嫌悪感を怒りを向け続け、彼女がネットに父親の姿を晒したり、その他の行為を父親は好意的に「自分の為に」と解釈してくれているんだけど、それすらも彼の楽天的発想でしかなく元妻が言うように娘は単に悪いキャラなのだったのでは?と分からない描き方をしている点が素晴らしかった。

宣教師の青年の話も、普通なら彼が宗教心を取り戻したり彼の説教が主人公に響いたりとなるはずが、最後の最後で青年が主人公の愛するひとが死んだ事を悪し様に言ういやな展開を出してくるのが見事だった。

人生、ままならないもので最後の最後で優しく接しても何も元に戻らず返って来ない事もありうる。それだけ残酷なものなんだと思わせると同時に、それでも見放さずずっとそばに居てくれたアジア人女性の友人の存在が素晴らしかったな。

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