「少女は卒業しない」(劇場)感想

「少女は卒業しない」(劇場)感想

(2023-03-05 なんばパークスシネマ・シアター9)

 「カランコエの花」が素晴らしかった中川駿監督の新作。
最初は観る予定に入れてなかったのだが、観た人の評価が良かったのと後から「カランコエの花」の監督だと知って「これは観ないと」と思って遅れ馳せながら観に行きました。

 映画としては満点でしたね。今年観た新作映画の中ではベスト1であり「今年はもう邦画の実写映画は観なくてもいいや」と思えたほど内容が素晴らしかったです。

前半は非常に淡々と物語が進み「これ大丈夫かな?」と不安になったのですが中盤「そう来るかぁ~!!」とのけぞってしまったw 
後半は圧倒的であり圧巻であり、観終わって本当に凄い物を観たなぁと感じた次第です。

物語は卒業式の前日から始まる。そして卒業式当日で終わる。

卒業式の予行演習や友達との卒業アルバムへのコメント入れなど何かと賑やかで落ち着かない雰囲気の中、4人の少女を主人公とした物語が交互に描かれていきます。

最初は「誰が誰か?が分かりにくいかも」と思っていたのですが、あまり多く脇役が登場しないのと場面が明確に分かれていたので混乱せずに分かりやすく楽しめました。

「カランコエの花」の監督作なので状況的にキツい話や重い話も出てくるかな?と思ったのですが(有るにはあるのだが)全体的にナチュラルで健全な話で終始していたと思います。その意味では一般にも観てもらいやすい内容だったと思います。

ただ、個人的には中川駿監督の作品だと「カランコエの花」の方が厳しさも同居してて好きだったかな。

「少女~」は朝井リョウの小説が原作なので基本、原作の展開と良さを踏まえて脚色してあるので監督が脚本を書いた「カランコエの花」のような鋭さと厳しさは薄くて、良い話だけど優等生的な話に感じた点がインパクトのあと一歩の弱さを感じたかな。

ちなみに書店で原作をパラパラとめくってみると、サブタイトルからどうやら「連作短編集」になっていた様子。たぶんだけど原作は章ごとそれぞれの少女の物語が描かれているのを、映画では組み直して同時進行に交互に描きつつそれぞれのクライマックスを映画のクライマックスに「バン!」と畳み掛けた感じでしょうか。

いずれにしろ今年のベスト3には残る傑作だったと思います。

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