罪深き呪いと麻薬
「鎖骨くらいまで伸びた姿を見てみたい」
そんな一言で私は髪を伸ばす決意をした
思えば大学時代はずっとロングだった
胸くらいまであった
結婚式を終えてからだったかな
少しずつ短くなった
子どもが生まれ、育てる間に髪を洗う、乾かす時間すら勿体無いと思い、ショートになった
夫はショートが好きだ
しかも、刈り上げてるようなハンサムショートが大好き
ショートは人を選ぶ
私は声がハスキーで目も鋭く
鼻筋は自慢ではないけど通っている方らしい
頬骨が高いから笑うと目が埋もれるけど
唇はふちどりがちゃんとあって厚みもある
正直、ハンサムショートは似合う顔立ち
そして仕事はパンツスーツスタイルなので
まあまあ似合うんです
彼と一緒に働いていた頃は
刈り上げ熱も高かったからサイドだけでは物足りず後ろも刈り上げてたっけ
夫はたびたび、私にバリカンを当て「今日は2mmにするよ」と嬉しそうに刈り上げていた(どんな夫婦やねんw
好きな人の一言は罪が深い
「前髪さ、今右にわけてるやん?左にしてよ」で
私は分け目を変えた
関係が始まって半年は頑張った
切りたくて仕方なかった時期を超えて肩までつきそうだったけど、音信不通になったことをっかけにばっさりショートに戻った
15cm
落ちた髪の毛の長さは彼を思って頑張った証だったのだが無情だった
彼に会うたびに「伸びた?」って聞くが
だんだん彼もそこじゃない感というか、髪の長さはあまり関係ない感じがしてきた
というか、興味がないんだろうなあって思ってきててね
先月に会ったとき、また頑張って伸ばしていたのに10cmぐらい切ってたんだけど何も言わないから思わず聞いたのね。
正直な彼は「ごめん、正直気づいてなかった」って。「そのスタイルが似合うのはよくわかってるんだよ」フォローのつもりなのかこんなこと言われたけど、左に分けた前髪を耳にかけ直してため息をつく
何年ぶりだろうか
洗い流さないトリートメントを買ったり、ヘアアイロンを買ったり。ヘアオイルも買って冬の時期を乗り越えてみたり。
私なりに髪に時間をかけたものの、相手はあまりにも無関心になっていた
好きな人の言葉は呪いだ
少し前までは、また伸ばそうと思いヘアケアアイテムやセミロングのヘアアレンジをインスタで眺めていた
でも、私はもう頑張らない
髪がくくれなくてもいい
私が好きな髪型は幸いにも似合う髪型だ
あごくらいの長さで首が見えて
前髪はすらっとわけてある
寒色系のイヤリングカラーを入れている
今の髪型は好き
最高にかわいい姿を
彼に見てほしいけれど
あいにく、彼は未読スルー
きっと明日になっても返事はないだろう
好きな人の好きな人になりたい
好きな人になれたら
もっと好きでいてほしいと願い
好みのタイプを聞いて努力してきた
その欲張りが自分らしさとか私の好きよりも優先されると、どこかで褒めてもらえたり気づいてもらえなかった時にネガティブな感情を彼に向けてしまう
嫌いになりたくない
彼とのLINEは業務連絡ツールであることも
電話なんかもう一年近くしてないことも
わかってる
周りの仲良し婚外カップルさんと比べたら
プラトニックだし
なにを旨み(魅力?)として付き合ってんのか分からんくなるときもゼロではない
苦しい関係性は求めていない
ならば、適正距離を見直すしかない
好きな人の言葉は麻薬
いつぞやかに言った「好き」の言葉や
「2人で行こう」も「来年もまた一緒に」ってLINE
その言葉で日々の辛さを紛らわせたり、あたかも幸せであるかのように錯覚すら起こさせることもできる
夢から覚めたくない私にとって
今まで送られきた言葉たちに
陶酔するのは簡単だった
でも、少しずつ言葉の意味は変わる
彼の言葉はどうなっていくのだろうか
願わくば
このショートスタイルの私を一目見て
抱きしめてほしい
でもそれも夢のまた夢なのかもしれない
抱きしめてほしいと思っている私と裏腹に
髪が短い私ではない私を彼は求めているのかもしれない
見た目は大事
好みも大事
さあ、私は何を優先する?
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