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#吃音社会人1年目の私へ

就活

2010年。
前年にリーマンショックが起きたその年の有効求人倍率は0.6倍。およそ半数の就活生が就職したくても求人がない。僕は、そんな氷河期の就活生だった。

そんなただでさえ厳しい状況下、僕はさらに焦っていることがあった。
僕には幼少期から吃音症があったのだ

吃音症とは、話をするときに相手や場面に関係なく「こ、こ、こんにちは」とはじめの音を繰り返したり「こーんにちは」と引き延ばしたり、また「・・・こんにちは」と言いたいことは決まっているのにはじめの音が詰まってしまうなどの症状により、なめらかに話すことが難しい症状のこと
(うぃーすたプロジェクトHPより抜粋)

吃音症をもっていることで就職面接では完全に不利になる。
焦りに焦った僕は、その焦りと不安を解消するために、とにかく出来る限り数多く会社に、応募して応募して応募しまっくてチャンスを掴むという戦略をとった。
多い時は週5でどこかしら会社の就職試験を受けた。
必死に受けまくった。

そんなことを数か月続けていると、ぼくの吃音症状にも変化が現れた。

次第に「会社訪問」や「面接」という場面に場慣れしはじめた。
気づけばどこの会社に行っても殆ど緊張せず、面接中、吃音症状はほぼ出なくなった。
その結果、応募した企業は数十社にのぼり、その内3社から内定をもらえた。
僕は就職活動を終えた。

結局、僕は就活中に応募したどの会社でも「自分が吃音である」という事は一切伝えることは無かった。

入社

かくして無事に希望する企業に入社できた僕だったが、本当の苦労は就職後に始まった。
なまじ吃音を隠して入社してしまったため、会社にいるあいだ、常に自分が吃音者であることを隠し通さねばならなくなった。
そうしなければ「病気の隠蔽を問われクビになる!」そう考えた。
だから、吃音がバレないように必死で言い換えしたし、全力で苦手場面を回避に奔走した。

しかし、そんな状況は長続きせず、入社して1年が経った頃、会社に行くのが嫌で嫌で堪らなくなった。電話応対が怖くて仕方がなかった。毎回朝礼から逃げ出したかった。

僕はノイローゼになった。

カミングアウト

僕は困った末に、吃音の発話訓練を行なっている病院をなんとか探し出し通院を始めた。
訓練を始めると、急速に症状は改善にした・・・なんてことは無かったが、治療(訓練)しているという医学的なお墨付きは得られた気がした。

それをもって、ある日の会社のミーティングで、僕は自分が吃音であることをカミングアウトした。
当時の僕は、そのくらいのお膳立てがないと僕は吃音を打ち明けることが出来なかった。

カミングアウトしたことによって、周囲の僕に対する対応に変化があったかというと、特に何も無かった

ただ、元々吃音症状によって嫌がらせを受けていたというワケでもなかったので「僕に吃音があっても無くても同じように接してくれる」というのが嬉しかったし、徐々に職場での悩みも薄れていった。

それから

あとになって会社応募時に僕を面接した先輩と、その時について話す機会があった。
先輩は「いや、面接の時も結構どもってたよ」と言った。
僕が完璧に隠し通せていたと思っていた吃音は、実は入社前に既にバレていた。つまり最初から、僕以外のひとは僕が吃音であることを受け入れていた。

今年で社会人8年目。新卒で入社した会社は転職したけど、未だに電話や朝礼は苦手だし吃音で困ることも多い。しかし、その時できる範囲の努力をして、これからも何とかしていこうと思う。

たぶん何とかなる。

#社会人1年目の私へ #吃音


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