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作りたいから作るだけ。Konelの追い風を受けて進むプロダクトデザイナーの頭の中。

先日開催されたTOKYO MIDTOWN AWARD 2023 デザインコンペにて、Konelのプロダクトデザイナー・都淳朗が優秀賞を受賞しました。その作品「リバースけん玉」にも垣間見える、日常に潜むオルタナティブを追求し、作るために越境しまくる都は、どこかKonelを象徴する存在でもあります。入社3年目、根っからの“作る人”が今思うことは何か? 改めて聞いてみました。

日常のすべてのベクトルを、作ることに向けていたい

ーいつも何かに注目して探求してるイメージがあるけど、最近の関心事は?

マンガ「サ道」を読んでて、日本語では風の名前が2000種類あるって知ったんですよ。2000種類ですよ? 目に見えないものを識別する感性も面白いし、四季のある日本らしい話だなぁと思って。テクノロジーも好きだけど、基本的にはそういう自然にまつわることの方が気になります。

ーどんなものに惹かれるかという傾向はある?

時間の積み重ねが感じられるものが好きですね。風の表現にも歴史があるし、ずっと集めている流木も時間の経過が感じられるのが魅力。時間と自然によって彫刻が作られている感じがします。時を経て、なぜ今こうなってるのか?ということに強い興味があるんです。

ー今回のデザインコンペでモチーフになったけん玉も、人工物ではあるけれど、歴史や時間軸があるものとしては共通してそうだね。

たしかにそうですね。けん玉は社会に当たり前のように受け入れられてるけど、実はみんなちゃんと見てない気がするんですよ。よくよく考えるとけん玉ってなんでこの形なんだろうって思いません?
けん玉って日本発祥の伝統遊びだと思いきや、16世紀にフランスで発祥したものらしいです。江戸時代に日本に伝わってきて、広島で “日月ボール”として今のあの形に変化したんですが、それが1918年。つまり僕らの知ってるけん玉になってからまだ100年くらいしか経ってないんです。歴史があるものを掘っていくと面白いですよね。

 江戸時代の文献に残る“拳玉”。「日本はけん玉を輸入して魔改造した側なんですよね」(画像:日本けん玉協会HPより)

従来の「球と皿」「剣と穴」それぞれの役割を入れ替えた「リバースけん玉」。TOKYO MIDTOWN AWARD 2023 デザインコンペにて優秀賞を受賞。

ー子供の頃からもの作りをしていたと聞いたけど、どんな学生時代を過ごしたの?

保育園の年中から小6まで、地元(徳島)の工作教室に通ってました。とにかくもの作りが好きだったので、大学も工学部のデザイン学科に入りました。メーカー等のインハウスデザイナーになる人も多い環境でしたが、いわゆるデザインを極めたいというよりは、もの作り自体がやりたくて、その一環としてデザインを捉えてましたね。

ー大学でもガッツリもの作りに集中してたんだね。

いや……学部時代の4年間は本当に何も考えてなくて、バイトしてバンドやって酒飲んで以上!みたいな毎日でした(笑)

ーそうですか(笑)

そんな生活を謳歌していて、勉強に関しては言われた課題しかやらないような感じだったけど、学部4年の時に3Dプリンタを初めて使って、何これめっちゃ楽しい!ってなった時があって。脳内で考えていたものがすぐに立体になって目の前に現れる感覚に衝撃を受けて、そこからハマったんです。
その後、大学院に進んで3Dプリンタを使った作品作りに没頭するようになり、ようやく自分の人生に手触りが出てきました。

ー3Dプリンタとの出会いが大きかったんだね。

そうですね。ただ、手法はいろいろあれど、何かを作り続けていたいという思いは3Dプリンタ以前からずっとあって。とにかく、やっていること全てのベクトルを作ることに向けたいんです。寝ることも、食べることも、遊ぶのも僕にとっては何もかもが作るための行為なんですよね。

ーワークライフバランス的なものは完全に超えているわけだ。作ることが生活の中心にある。

そう。ただ作るっていうシンプルな軸があるだけで、社会の雰囲気や周りの人がどうであれ僕には関係ない。作り続けていられればそれで幸せなんです。

3Dプリンタの可能性と自由さを拡大すべく作った2019年の作品『3D「プリン」ター』
既成概念を捉え直すことで、面白い違和感と新しい動きを生む作風の原点になった。

※note「なぜ3Dプリンターを使ってプリンを作るのか」

負けると死ぬほど悔しい

ー今回のTOKYO MIDTOWN AWARD 2023 デザインコンペについても少し聞かせてください。率直な感想は?

今回いただいた「優秀賞」はグランプリに次ぐ2位という位置付けなんですが、実は前日に電話で聞いてわかっていたんです。そこで担当の方から僅差で2位だったと聞き、すごく悔しくて…。悔しすぎて一人でいられなくて、Konelの上司と後輩を誘ってカラオケ行って、号泣しながら歌いまくりました。泣きすぎて翌朝起きたら顔がパンパンで(笑)。受賞式があったので慌てて冷やしてなんとか乗り切りましたけど。

授賞式の様子

ーそうだったのかぁ。1番と2番じゃ大きな違いだったんだね。

本当にそう。M-1で2点足りなくて負けた芸人さんは、きっとこんな気持ちなんだろうなと思いましたね。

ー順位へのこだわりがあるということは、競うことが好きだった?

コンペに出始めた頃はそうでもなかったんですよね。と言うのも、高校までバスケをやってたんですが、その中でどんなに頑張っても上があることを実感してしまって、勝ち負けがある世界はもういやだなって思ったんです。だから大学ではデザインとバンドという、勝負から遠そうな世界を選んだ。でもやってみるとやっぱり勝敗のようなものは存在して、負けると死ぬほど悔しいんです。でも、悔しくても作ることをやめなかったということは、ここがやっぱり自分が身を置きたい場所なんだなとも思いました。となるとこの世界で一番を取りたいと考えるようになって、先日の号泣カラオケにつながります(笑)。

「リバースけん玉」の議論の痕跡。このホワイトボードも都の作品。

Konelがもの作りにブーストをかけてくれる


ーところで、もの作りはいつやってるの?日々クライアントワークもガッツリやっているイメージだけど…。

コンペなどの制作でいつも組んでいるパートナーがいるんですが、平日は彼と夜22時くらいから週1ペースで2時間ほどブレストしています。あとは土日に集まって集中して作る感じですね。一人で作る時間は平日の通常業務の合間にも取るようにしています。

ー忙しそうだね。Konel業務との時間の配分はどうなっているんでしょう?

時期によって変わりますけど、Konelの通常業務 70%、パートナーとの時間20%、個人作業10%ですかね。
Konel業務で何かを作る合間に別のものを作ってる感じです。だからKonel業務も制作活動もぐちゃぐちゃに混ざり合っているんですが、その方が脳みそにもストロークができて、Konel業務に戻った時の勢いがつくんですよね。意識的にそうしていると言うよりも、単に飽きて別のこと始めてる面もありますが(笑)。

ーそれはKonelにいるからできている部分もあったりするのかな。

それは絶対ありますね。Konelという環境がなかったら「リバースけん玉」は作れなかったと思います。
場所もあるし、機材もあるし、何より人の繋がりがあるから、作るための環境がソフト含めて整っていますよね。今回もKonelメンバーが飛騨の木工職人さんを紹介してくれたり、リバースけん玉を練習しまくったメンバーがイメージ動画に出演してくれたり。この環境のおかげで僕は純粋に作ることに集中できるんです。追い風が吹いていて、もの作りにブーストがかかるんですよね。

ーたしかに、皆で応援する雰囲気があるよね。

それはめちゃくちゃ感じます。邪魔されないだけでもありがたいのに、むしろ応援してくれるなんて、幸せなことですよね。この恵まれた環境にはすごく感謝しています。

繊維廃材を素材に作られた下駄「QUON」は、Konelでのブレスト“妄想大喜利”の中で出たアイデアを形にした作品。Konelと個人のもの作りがブリッジした事例だ。

理由も大義もない。作りたいから作るだけ。


ーもの作りの先に、こんな未来を作りたいというビジョンはあるの?

作りたい未来は特にないですね。もの作りは死ぬまでの暇つぶしだと思ってるんで。

ーはっきりしてていいね(笑)

いや、実はずっと悩んでたんですよ。なんで僕は作ってるんだろう?って。物心着いた頃からやってるからそこに理由なんてなかったんですが、世の中の人には皆何かしらの大義があるから、自分もそういうのがないといけないのかなと悶々としてました。
でもやっぱり、人間は作るから人間なのであって、そこに必ずしも大義は必要ないとしか思えなくて。それを立証したくて人類史等の本を読んだりもしたんですが、たとえば縄文土器の模様は、定住→余暇の発生→娯楽の誕生という人類史の流れの中で、たまたま暇ができて作りたくなったから作った装飾なのだろうと気づいたんです。もの作りは暇つぶしの要素があると知って、すごく楽になりました。

ー作ることは大義のための手段じゃなくて、作ること自体が目的なんだね。

大義があって当たり前でしょ?という雰囲気が世の中にあるのが居心地悪くて。もの作りの本質は僕にとっては“世界の秘密を紐解くこと”。その過程で自分の無知を知ることが楽しいんです。それに秘密を知るためには新しい技術を取り入れる必要に迫られることもあるから、結果的に横断的なスキルを手に入れてKonel業務にも役立ったりするんですよね。

ー自身の活動をKonelに還元することは意識してるの?

あまり意識してないです。もの作りがKonel業務に直接関係なくても、頑張ってやっていれば結果としてKonelに貢献することに繋がると思っているので。逆に意識しているのは、僕は今これが作れるよと社内に知ってもらうこと。Konelには面白い仕事がたくさんあるけど、プロダクト制作の仕事は待っていてもなかなかやってこないので、僕が作ってるものが次の仕事の呼び水になれば良いなと思ってます。

次にやりたいのは、多くの人に力を届けるコンテンツ

ー最後に、これから作りたいものを教えてください。

3つの立場から作りたいものがあるんですが、まずKonelとしては、時代の最先端でまだ誰も見たことのないものを作りたい。最新技術を使える環境にあるからこそ、それらを駆使して常に最前線に立つことを目指したいですね。

次にプロダクトデザイナーとしては、椅子や照明等のベーシックなプロダクトを作りたいです。Konelはオルタナティブなもの作りをやるケースが多いけど、クラシックなものも作っているよって言えるようになりたい。邪道と王道の二刀流で攻められたらカッコ良いなと。

そして個人としては、小説や音楽を作りたいですね。直感的に良いと思われるクリエイティブパンチをしたいというか。人々の日常に入り込んでいって、「あぁすごく良いな、明日もこれで頑張れる」みたいな生きる糧になる感動を世の中に届けたいです。

ーものを通してアプローチするよりもインパクトが大きそうだね。

そうそう。コンテンツの方がプロダクトを作るよりも拡散力が高くて、多くの人に手に取られて伝わっていきやすいですよね。今後はコンテンツにもフィールドを広げつつ、より一層もの作りに没頭したいと思います。

【TOKYO MIDTOWN AWARD 2023 受賞作品展示】
開催日:2023年10月5日(木)~11月12日(日)
展示会場:プラザB1 メトロアベニュー
※展示会場で、お気に入りの作品に投票ができる、「東京ミッドタウン・オーディエンス賞」を開催します。(オンライン投票はこちら)一番多く投票を獲得した作品が東京ミッドタウン・オーディエンス賞に輝きます。結果は2023年11月下旬に発表予定です。

聞き手:丑田美奈子/撮影:Adit



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